この物語では、多くの戦いがあり、多くの戦死者が出る。
その数は半端ではない。特にクライマックス近くでは、軍と軍とが大激突するわけだから、そこらじゅう血の海である。
その死体… 一体、どうやって処理したのだろうか?
これが、謎のひとつである。
参考までに、戦死者の数を計算してみた。(すんなよ)
ブルグント勢 勇士60名 騎士1000名 軍兵9000名 (第26歌章1646)→最終的に全滅
ブレーデリーンの配下 500名 (第32歌章1931)、報復に出た武士たち2000名(1934)
イーリンクとその配下 1000名(第35歌章2031)
エッツェル配下の国王軍 1200名(第36歌章2133)
リュエデゲールの軍 勇士12名 軍兵500名(第37歌章2169)
ディエトリーヒの配下 ぜんぶ。(第38歌章)
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計15,272人+アメルンゲン人
むうう。わりとイイ加減に挙げたというのに、とてつもない数ではないか…。
他にも、名も知れぬ人々や巻き添えくらった人々などもいて、最終的な戦死者数は2万くらいにはなっていたのではないだろうか。
…なんか…よく考えるとムチャクチャ死んでますな…。(汗)
これだけぶんの死体が、城の中に折り重なっているさまというのは、とても想像出来やしない。そりゃあ足の踏み場もなくなるだろう。赤い血が流れて川のようにもなるだろう。叙事詩的表現による大げさな言い回しではなく、実際にかなり激しい状況だったと思われる。
しかも、ブルグント勢の軍兵9000名は最初のブレーデリーンとの戦いで全員死亡しているので、そのあとの戦いはすべて、残る騎士1000名と勇士(フォルケールやハゲネなど主要人物も入れて)60名で勝利したことになる。。
そりゃ強いよ。一騎当千だよ。1人あたま、何人斬り殺してるんだ君たちは^^;
その異様な強さも謎のひとつ?
ゲームの中の戦争ではザコ兵が何人死んだかなんて全然出てこないから忘れているが、やはり戦争というのは沢山の人間が死ぬものである。やらないに越したことは無い。
これだけの数を火葬あるいは埋葬したとなると、事後処理は簡単では無かったはずである。自分とこの親戚や知り合いの遺体を捜すだけでも、一苦労だったと思われる。(事実、戦場で親族の遺体を探し回る話は、多くの叙事詩で見られる)
また、切り裂かれた盾や折れた剣を回収するだけで、おそらく、膨大な量の鉄の塊になったはずである。
処理するのにも、ひとかたならぬ努力が必要だったと思うのだが、果たして?
【解決編】
計算で出た2万にも及ぶ死体だが、これは、史実に基づくものでもある。
紀元後436年(または437年)、ブルグント族はフン族に大敗し、首都ウォルムス付近で2万人が戦死。ちなみに、この戦死者の中に、実在したブルグントの王グンナル(グンテル)の名前も入っている。これが、物語に取り込まれて「ニーベルンゲンの歌」クライマックスシーンへと変化したらしい。
それでは、肝心の死体の処理方法を。
ざっくばらんに言うと、つみあげて火葬である。
かさばらないし、何より燃やしちゃえば炭も人間も似たようなものなので埋めるより簡単。「エッダ」にも出てくるように、ゲルマン民族は、王侯除き基本的に火葬である。カトリックでは土葬だが、それは正式な埋葬法なので、遺族が遺体を引き取りに来なければ纏めて燃やす。(そのためにも、遺族は身内の遺体を捜し出すことが必要だったのである。)
しかし、どのみち2万人も積み上げて燃やすっていうのは、大変そうである。日本でいうと空襲の事後処理みたいなものだろうか。今から1500年以上も前の話ではあるが、当時の人たちは、さぞ心に傷を残したことであろう。
ちなみに、戦死者の持ち物は生き残った人のものとされる。
戦うのは戦士の仕事だが、戦えない農民は、隠れてジッと見守っていて、戦いが終わったあと素早く出ていって倒れてる戦士の鎧や剣剥いで売りさばく。もちろんこれは、名誉だの何だの気にしない平民だから出来ることなのだが…
…
羅生門状態。
貴金属や、少しでも金目のものは全部剥いじゃって、残った死体はゴミ扱いで燃やしてしまう。まさしくこの世は弱肉強食。戦争で畑やら家やらめちゃくちゃにされたぶん、モトは取る、と。
そして戦いに倒れし者たちは土へと還るのか…。(遠い目)
史実的にはそのような状況なのだが、「ニーベルンゲンの歌」でもこの方法がとられていたとすると、エッツェルの宮廷で死んだ人々も、集めて身ぐるみ剥いで燃やされたことになってしまう。
やって来たブルグント族の兵士は全員戦死しているので、死体の引き取り手がいない。ということは、最悪の場合、主要な登場人物も身包み剥がれて適当に燃やされちゃった、ということになる。
別のところで殺されたグンテルとハゲネあたりは遺体の回収も可能だろうが、フォルケールやギーゼルヘルやダンクワルトあたりは、城と一緒に中でぐちゃぐちゃになっていた可能性も無きにしもあらず…。
嫌だそんなん。(声を大)
オレは絶対に認めないぞ。
と、いうわけで、ここはひとつ、生き残ったものに任せることにしよう。
ディエトリーヒ、キミがすべての希望だ。
彼らが墓くらい作ってくれたものと無理やり信じよう。全部まとめて燃やしたりするもんか。そうだよね? ね? ヨシ。(←え)
以上、死体埋葬にまつわる解決編でした。