この物語の「強き女たち」の片割れ、ブルグントの王妃プリュンヒルト。
後編からは一切出てこないのだが、当然ながら、夫グンテルはじめ家臣一同が討ち果てた後も、彼女は生き残っていたはずである。一体、どこに行ったのだろうか。
ブルグント族とフン族が戦うハメになった原因の一端はプリュンヒルトにあるにもかかわらず、何もしていないというのは、いささか怠惰が過ぎないだろうか女王様。そもそも貴女が結婚に際して無理難題をふっかけなきゃあ、グンテルとジーフリトの間によからぬ男のヒミツは生まれなかったんだし、そのヒミツを知ってしまったクルエムヒルトとの間に諍いを起こすこともなかったでしょうに。
戦いの悲劇も災いも、全てはプリュンヒルトの高すぎるプライドがゆえのもの。責任果たせよ?! プリュンヒルト!
もしかしたら彼女は、グンテルがクリエムヒルトの招致に応じてフン族の国へ出かける時も、薄々、結果を知っていたのかもしれない。(だから使者にも会わなかった)
セリフも一切無し。直接姿を見せることも無し。
知っていて、止めもせずに後宮の奥に閉じこもってしまっていたのではないのか…?
怪しい。
結婚したとはいえ、プリュンヒルトはもともと男も凌ぐ女戦士だったはずなのだから、戦場で先頭切って戦っても良かったくらいである。クリエムヒルトがナマイキな口をきいた瞬間にプチ切れて大聖堂壊してても不思議はないくらいのお方です。なのになぜ小娘との口喧嘩に負けて泣き寝入りなのか。
古代北欧の伝説では彼女は戦乙女だったのだから、結婚すれば力が無くなるというのはうなづける。が、この「ニーベルンゲンの歌」では、イースラントの女王なのである。戦乙女ではない。よって、結婚したからと言って力が無くなるのは、基本的にはおかしいのである。
さらに、百歩ゆずって、結婚と同時に超人的な力が無くなる不思議体質だったとしても、気まで弱くなるというのは先ず在りえない。
泣き寝入ったあとはフテくされて夫に告げ口? そこまで性格変わるもんか?
分からんねえ…女心は…。(←何者だよ)
ただ、史実を見るに至り、フン族に滅ぼされたはずのブルグント族は復活して逆襲をすることになっているので、もしかしたら、彼女はまだ生きていて、夫亡きあとの国をガッチリ握っていたのかもしれない。国もとに残されていたジンドルトやフーノルト、息子ジーフリトを鍛えて鍛えて鍛えまくって(笑)、いつか来るその日のために。
「シドレクス・サガ」では、ハゲネの息子がアッティラ(エッツェルのこと)を打ち倒し、復讐を遂げて戻ってくるのを待って王位を譲り渡すという話になっているので、この説はありそうだ。
誰にも書かれなかった幻の続編。名づけて「続・ニーベルンゲンの歌 女帝プリュンヒルトの逆襲」。
愛のために生きる力も戦う力も失うくらいなら、そのような愛など死んでしまえ。(サガ調に) 打ち合わされる剣の音、ひづめに激しく踏み荒らされる地鳴りを耳にすれば、体中の血は沸き、汝を戦場へと駆り立てるであろう。
いざ行かん、霧の彼方へ…。