アメリカ放浪記!!(byしげ)

第9章
〓 SANTA FE〔New Mexico〕〓


これが噂の・・・
宮地くん、ぼく、JOHN☆。
旅の軌跡に行く
サンタフェ(ニューメキシコ州)  
 

 "宮沢りえ"  ・・・・・・・サンタフェと言えばみんなこの言葉が返ってくる。
 
 初めは行く予定がなかったが、ロスで知り合った人の話しを聞いて、急遽行きたくなった。その人の話によると、町自体は何にもない町。インディアンの居住区が近くにあって、家が全部アドーベという日干しレンガを固めたものになっている。それだけだ。うーん、何故かかなり魅力的に思えてしまう。
 
 バスは朝8時にサンタフェに着く。途中一緒になった日本人と外に出て一服する。静かな町だ。バスディーポはダウンタウンの郊外にあるからか、それとも日曜日だからか、それにしても静かだ。ユースの場所が分からなかったので、二人で少しボーッとしていると、どこから来たのか日本人のおばさんがいきなりぼくらに話し掛けてきた。「あんたらの他に日本人おらんかった?」どうやら彼女も旅をしていて、ここで知り合った誰かを見送りにきたらしい。ぼくらはチャンスとばかりにこのおばさんに「ユースを知ってるか?」と聞くと、そのおばさんもユースに泊まっていたので、3人でユースまでトボトボ歩くことにした。そのおばさんはその子さんと言い、もう一人は宮地くんと言う。
 
 1時間くらい歩くとユースに着いた。ユースもアドーベで造られており、中も開放的でアットホームな雰囲気だ。早速シャワーを浴びて、溜まっていた洗濯をする。その間ユースの中庭でボーッとしていると、一人の日本人に話し掛けられた。本当にどこでも日本人はいるものだと思った。ここはアメリカ人の間でも人気NO.1の観光地だから、たくさんいるんじゃないかなと思ったけど、ぼくを含めて、今日は6人日本人がいるという。そして彼は今まで会った日本人の中でもかなりのツワモノだった。こっちの内陸の方にくるとすごい旅をしてる人が多くなる。彼はもう日本を出てから、2年になる。今、世界一周をほぼ終えて、日本に帰る途中らしい。タイ、インド、ヨーロッパ、アフリカ、どの国の話を聞いてもおもしろい。しかし彼が言うにはやっぱり旅をしてて一番おもしろかったのは、東南アジアだという。金も安いし、とにかく人が面白いと言う。タイやインドには半分棲みついてる日本人がかなりいるらしい。帰る気がないのか、帰れないのか知らないけど、やけにタイ語がうまい日本人がかなりいるらしい。髪や髭は伸び放題で、いかにも旅してますって感じ。それでも彼は毎日しっかり観光する。朝起きて、夕方まで観光して、夜は知り合った人と喋っている。2年もだ。毎日こういう生活をして自分の行きたくなった所にまたフラッと出かける。とてもぼくには考えられない。「日本も好きだけどいろいろとめんどくさいから、まだ今の所は帰りたいとは思わない」と言う。うーん、なんかかっこいい。他にもこういう人達はうじゃうじゃいるらしい。しかしその人達はアメリカまではこないで、インド、ネパール等あそこら辺の国を往復して終ってしまうことが多いという。インドの何がそんなに惹きつける魅力があるのか分からないけど、彼もまたインド、タイに戻ろうかなって、ぼそっと呟いていた。
 
 今日の飯は宮地くんとカレーを作ることにした。買い物に行ったのはいいけど、肝心なカレーのルーが見つからない。アメリカ人はカレーライス食べないんだろうか?それともみんなスパイスを調合して作るのか?確かに今まで、カレー屋さんに出会ったことがなかったような気がする。やっとの事で日本料理が並んである棚からルーを発見する。肉が異様に安いから、具は玉ねぎと肉だけ。しかし、肉はかなりたっぷり。ご飯はユースで自由に使えるからそれを貰って作った。うまい!これならいくらでも食える。久々のご飯(でもパサパサ)、そしてぼくの好きなカレー。かなりのヒットだった。周りの外人さんもうまそうだねーって寄ってくる。作り過ぎたので、みんなに分けてあげて、周りの人みんなカレーを食っていた。飯を食い終わって、宮地くんとラウンジの所で話していると、見たことのある顔が・・・。JOHNだ!思いがけないご対面に思わずうれしくなった。彼とはフェニックスで会って以来、2週間ぶりだった。こんなこともあるのかと思いながら、旅の話しに花が咲いた。彼は今レンタカーを借りているので、明日もしよかったらタオスまで行かないか?と誘ってくれた。タオスは行きたかったけど、車が無いと行けないところなので、ぼくらはもちろんO.Kした。
 
 次の日はJOHNの車に乗って、早速ドライブ。はじめに目的としたのは、よく分からない橋。何かの小説の舞台になった橋で、JOHNが行きたいって言うから、一緒に行った。その後にタオスに拠り、ぼくたちが行きたかった、インディアンの居住区に行った。しかしこの日は満月でインディアン達がセレモニーを行うという事で入る事ができなかった。しょうがないので、ドライブがてら、名もない湖を目指す。・・・そこから見た夕陽は絶品だった。
 
 夜はJOHNがハンバーガーを奢ってくれて、宮地くんと3人で酒を飲みながら過ごした。しかし、話しが変な方向に行ってしまって、よくわからない。JOHNは宇宙の事や地球の奇妙は現象に興味があるらしく、ただでさえ英語が分からないぼくらにそんな難しい話しをされてもチンプンカンプンだった。"今、地球はマルチ・ナショナル・カンパニーによって支配されている。"そんなような事をJOHNは延々と話していた。
 
 次の日はぼくはサンタフェのダウンタウンに行く予定だったが、朝起きると、またJOHNが何処かへ連れて行ってくれると言う。ぼくは何となく一人で行動したい気分だったので断ったが、宮地くんが行こうというので、仕方なくついていった。JOHNは相変わらず親切で、この日も飯をおごってくれて、インディアンのプロブエに連れて行ってくれた。・・・やけに親切過ぎる。この2日間ぼくらは1銭もお金を払っていない。JOHNはただの親切なおっさんなんだろうか?相変わらす訳のわからない話しをしてるけど、疲れたので今日はひとまずユースに戻ることにした。
 
 ユースに戻ると今日もたくさんの日本人がいた。ぼくはその中に混じっていろんな話しをしていた。カナダでワーキングホリデイをしていて、最後だからアメリカ旅行をしようというカップル。彼らはカナダで知り合って、意気投合したらしい。やけにハイテンションなカメラマン。アメリカの歴史やインディアンの事にくわしい眼鏡くん。ほとんどハイテンションなカメラマンが一人で喋っていた。そのうちにその子さんも戻ってきて、ぼくに「あの男(JOHN)はホモっぽいから気をつけな!」と言ってきた。その子さんは英語がペラペラなので、喋り方とかで何となく分かるみたいだ。日本で言うオカマ言葉を使っているらしい。もちろんぼくらはそんな事は分からない。聞いた時はそんな事うそだと思っていたし、気にもしていなかったけど、みんなと話しを終えて部屋に戻る途中、JOHNの車に灯りがついているのが見えた。よく見ると中にJOHNと宮地くんがいる。その時、その子さんに言われた言葉を思い出した。まさか!と思ったけど、そのまさかだった。これはやばいと思い、JOHNの車をノックすると、JOHNの反応がおかしい。話していてもいつもと目つきが違っていて、正直ぼくも怖かった。「何故車に居るの?」と聞いても、適当な返事しか返って来ない。「もう遅いから寝よう」と言っても、彼と話しがあるからと言う。だんだんJOHNの口調が強くなってきて、だんだん怖くなったきたので、宮地くんを無理矢理連れ出してしまった。しかしぼくと宮地くんとJOHNの3人は同じ部屋だ。他の人がいるから何も無いとは思ったけど、JOHNがどういう行動にでるのかが怖くてしょうがなかった。1時間くらいしてJOHNは部屋に帰ってきた。何をしてるか耳を澄まして聞いていたが、どうやら帰り支度をしているようだ・・・。
 
 そのうちに寝てしまった。朝起きたらJOHNは何処かへ出かけた後だった。とりあえずは一安心。宮地くんを起こそうとベットまで行くと、ベットの上に何か置き手紙みたいなのがあった。JOHNからだ。宮地くんに対する想いが書いてあった。彼は女性の気持ちだったんだろう。花の絵が書いてある葉書にやさしい言葉で宮地くんへの想いが書いてある。本当にこの2日間でそこまで惚れてしまったのだろうか?宮地くんは朝になっても怖がっていたが、ぼくは何かJOHNに悪いような気さえしてきた。(内心ぼくじゃなくてよかったとも思ったけど・・・。)←こっちが正直な感想
 
 その日、宮地くんは一日中怖がっていた。外人さんを見るとみんなホモに思えてくるらしい。宮地くんは英語が全然話せなかったので、このままではまた同じようになると思って、その子さんが薦めてくれた語学学校に行くことを決めた。とりあえず二人でダウンタウンまで行って、昼飯を食った。そして宮地くんはそのまま語学学校のあるサンディエゴに行ってしまった。<幸運を祈る>ぼくはそのままダウンタウンを観光して、インディアンの美術館等見たい所を見て回った。しかし本当に小さい町なので、すぐに観光は終ってしまう。観光客もすごく多く、町のほとんどはインディアンジュエリーショップだ。種類がたくさんあって、かなり安い。よく探せば日本の半額でも買える。とにかく店がたくさんあって、一日では見切れないくらいだ。いろいろ店を見て回ったぼくは、ここでドリームキャッチャーを買った。いかにも本物っぽい。作った人の部族名と名前が書いてあって、これなら悪い夢を吸い取ってくれそうだ。
 
 次の日も一日サンタフェの観光をした。どうやらかなり気に入った町になったようだ。何をするでもなく、ブラブラ町を歩いて、ジュエリーショップを覗いたり、町の中央の公園で休憩してた。なんか落ち着く町だ。これといって遊ぶ所もない町だけど、ボーッとするにはちょうどいい町だった。ぼくのスタイルに合っているような気がした。結局6日くらい滞在して、やっと次の町に向かう事にした。
 
 次はメキシコとの国境の町エルパソだ。しかし、エルパソ行きのバスを待っている間に日本語が喋れる外人さんと仲良くなって、彼がカツ丼を食わせてくれるというので、半分カツ丼に釣られて、その人の家に泊まる事にしてしまった。"あんな事件があったばっかりなのに"と自分でも思ったが、自分の運を信じて彼(ポール)についていく事にした。
 
 ポールの日本語はなかなかうまい。イタリア系なのでイタリア語も話せる。もちろん英語も。そして日本の歴史もかなり詳しい。日本の文化が本当に好きなのだ。どこで手に入れたのかあのカツ丼を作るでっかいお玉みたいなのも持っている。そしてご飯も日本と同じ米だ。やっぱり日本食はうまい。いくらこっちのハンバーガーがうまくても、本当の日本食にはかなわない。正直そう思った。ポールはかなりの食通らしく、イタリアのスパゲティも作ってくれた。これもまたうまい。飯は今までアメリカで食ったものの中で一番うまい気がした。
 
 ポールには男のルームメイトがいた。あの事件があった後だったので、やっぱりかと思ってかなり警戒していたが、話しをしているうちにポールをだんだん信じれるようになった。だけどはじめはどうしてついてきてしまったんだろうと思って、自分のバカさをずっと後悔をしていた。・・・夜は何もなく平穏に過ぎた。昼間はポールが仕事なので、ポールの家の周りを散歩して過ごした。<何となく落ち着かない>
 
 しかし向こうの人も簡単に人を信じるなーと思って感心した。きのう会ったばかりの日本人を簡単に家に泊めて、しかも自分のいない間も家にいさせたりして・・・。そこまで日本人は信用されているのか?ポールのいない間はなんか悪いことをしている気分になって、早く次の目的地のエルパソに行きたくなった。
 
 ポールが仕事から帰ってきて、早速車でバスディーポまで送っていってもらう。バスディーポにはきのうぼくを見送ってくれたアメリカの歴史に詳しい眼鏡くんが驚いた顔をして見てる。それもそうだろう、きのうエルパソに行くといってユースを出たのに、今日また変な外人さんの車に送られてバスディーポにいるんだから・・・。おもしろい体験だったけど、後からこの事は反省した。
 
 そして久しぶりにバスに乗って、また暑そうな場所に向かった。

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