アメリカ放浪記!!(byしげ)
第7章
〓 GRAND CANYON〔Arizona〕〓


ビルの後ろから突き出しているのは尺八?
ずっと一緒に行動していたビルと。

旅の軌跡に行く
グランド・キャニオン(アリゾナ州)  

 最近少し慣れてきたバスで、グランドキャニオンのゲートシティ"フラッグスタッフ"に着く。うー寒い。何だこの寒さは。それまでフェニックスにいたぼくには信じられないくらい寒い。後から聞いた話では、2、3日前にはグランドキャニオンは”雪”が降っていたそうだ。
 
 この温度差にはいつも参る。徐々に気温が変わっていけばいいものを、いきなりこれだ!バスの中も相変わらず寒いし・・・。とにかくぼくの体が丈夫でよかった。
 
 午後2時、バスディーポに着いた。さすがグランドキャニオンって感じで、バスディーポにいる人はみんなグランドキャニオンの情報を集めている。いつものようにユースへ向かう。しかしこのフラッグスタッフの情報はほとんど持っていなかったので、バスディーポの人に聞いて、やっとユースに向けて歩き出す。
 
 曇っていて、やけに風が冷たく感じる。グランドキャニオンは明日行く予定なので、ユースに荷物を置いて、フラッグスタッフのダウンタウン観光に出掛ける。何にもない町だ。町の中央にアムトラックの線路が走っていて、本当に何もない。ビルもないし、ポツポツとお土産屋があるだけ。遠くには雪を被った山が見え、アムトラックの駅も何故か絵になる。アメリカのオールドタウンといった感じ。しかし歩いていると何故か楽しい。早速、観光案内所で手に入れた情報を元にナバホビツアー社に行く。明日のグランドキャニオンのためだ。出来ればグランドキャニオンに一泊して夕陽を見たいのだが・・・。行きのチケットだけを買って、その日はユースに戻ることにした。
 
 ユースに戻ると、同じ部屋にグランドキャニオンから帰ってきたばかりの日本人が二人いた。彼らはキャンプ用品一式持参して、アメリカの国立公園だけをキャンプしながら回っている。二人とも学生。かなり旅行好きで、いろんな所へ行っている。そして医者の卵だ。彼らと酒を飲みながら、旅行話に花が咲き、明日のグランドキャニオンへの期待を膨らまして、その日は寝た。
 
 朝7時に起きて、ナバホビツアー社にてグランドキャニオン行きのバスを待っている。ほとんどが老夫婦だ。しかしその中で一人だけ、見るからにバックパッカーな男(ビル)が、周りの人にしきりに話し掛けている。「セドナには行ったか?」「あそこはとてもいい。」「amazing」、そこにいる人、全てに。彼はぼくの方まで来て、同じ事を言う。しかしぼくは気に入られたのか、その後のバスの中でもずっと一緒で、セドナの凄さを延々聞かされていた。
 
 グランドキャニオンに着いて早速今日の宿が空いているか、確認する。しかし全滅だ。100ドルくらい出せば泊まれる所もあるけど、それは出来ない。・・・悲しい。しょうがなく今日の夕方、フラッグスタッフに帰ることにした。気を取り直してグランドキャニオンのビューポイントに行く。しかしビルはまだ一緒にいる。何故か一緒に行動することになってしまったのである。
 
 初めてグランドキャニオンを目にした瞬間・・・言葉が出なかった。もの凄い光景だ。言葉で説明することが出来ない。とにかく圧倒された。しばらくそこでボーッと座っていて、動こうという気にならなかった。テレビで見るのとは違い、実際に目で見ると圧倒的に迫力がある。しかしぼくがこうやって感動してる間、横にいるビルはパンツ一枚になって着替えてた。・・・おいおいビル。
 
 でも本当に暑いのだ。2、3日前に雪が降ったのが信じられないほど暑い。
 
 こうしていくつかのビューポイントをビルと一緒に周った。ビルは面白い人だけど、少しデリカシーに欠ける。平気で立ちションをしたり、ここでも出会った人みんなにセドナ話をする。ビルが言うにはグランドキャニオンも素晴らしい。しかしもっとセドナは素晴らしいと言う。そこまで言われるとぼくも行きたくなってしまう。このグランドキャニオンを見てるだけに、自分の目で比較したくなる。しかし今日はグランドキャニオンだ。時間があまり無いから急いで他のポイントも見に行く。そして少しだけグランドキャニオンの岩壁を歩いて下ってみた。1日半くらい歩けば、グランドキャニオンの底に着くらしい。歩いて行きたくない人には馬の貸し出しもしていて、狭い岩壁の通路をテクテクと馬に揺られて降りていく。うーん、優雅だ、そして自然にやさしい。西部劇のワンシーンを見ている感じだった。底には滝があって、そこから見上げる景色も最高だとか・・・。
 
  バスの出発時刻ギリギリになってしまったので、急いでバスの発着所まで戻る。・・・今まさにバスが出発する所だった。ぼくはビルのバックパックを持って、バスを追いかける。運転手が気付いてくれて、バスを止めてくれる。「Get on,Get on」バスの運転手が陽気に言ってくれた。ビルは疲れていて、遠くの方に見える。バスの運転手さんに待ってもらって、やっとバスに乗ることが出来た。少し恥ずかしかったけど、バスに乗ると日本人の女の子3人組が「よかったね」と声を掛けてくれる。彼女達は3日間グランドキャニオンに滞在し、朝陽も夕陽もしっかり見たらしい。いいなー、としきりに言っていると、ビルがまた話に加わってきて、セドナの話を彼女達に聞かせている。・・・またか。ぼくは半分呆れて話しを聞いていた。
 
 ビルとはバスを降りた後も一緒にいた。本当に気に入られたんだろうか。一緒に飯を食いに行こうという。ビルお勧めの"TACOBELL"に行って、話しをしてた。よくよく話しをすると、彼は仏教徒のようだ。のちのち思ったことだが、外人さんは宗教の話しが好きらしい。ビルは首に数珠みたいのをぶらさげ、いつも尺八を持っている。よく分からないが漢字の本も持ち歩いていた。多分、お坊さんが持っているお経の本だと思う。それを見て、これはどういう意味か聞かれたが、読めるわけがない!そうすると”お前は本当に日本人か?”なんて聞いてくる。そのうちに持っていた尺八を聞かせてもらった。全然曲にはなってなく、フー、フーという音だけ聞こえる。ぼくにもやってみろという。しかしそんなものはできるはずがなく、出来ない!と言うと、また”お前は本当に日本人か?”なんて聞いてくる。どうも日本人に対する外国人のイメージが間違ってる。アメリカ人ならみんなギターが弾けるのか!そんな屁理屈も言いたくなってきてしまう。
 
  そしてやっとビルから開放され、ユースに戻った。明日はビルを信じてセドナに行こうと決めていた。

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