アメリカ放浪記!!(byしげ)

第6章
〓 PHOENIX〔Arizona〕 〓


これがフェニックスのイメ−ジ?
”JUST HOT”

旅の軌跡に行く
フェニックス(アリゾナ州)  
 

 "JUST HOT",バスディーポに着いたばかりのぼくには、まだそんなイメージは伝わってこなかった。朝の8時。日差しが気持ちいい。確かにロスに比べると暑い気もするが、ただいい天気なだけだ。外に出て、コーヒーを飲みながらタバコを吸う。周りを見渡すと何もない。ただ近くに飛行場が見えるだけで、街らしい街は見えてこない。ガイドブックによるとアメリカで7番目に大きい都市らしい。しかし、ぼくのいるこの場所からはそのかけらさえ見えてこない。
 
 今日泊まろうとしているユースまではバスで15分。しかし今日は日曜日でバスが走っていない。少し迷ったが、いつものことを考えると余裕だなと思って、フェニックスのダウンタウンに向かって歩き出した。
 
 ・・・死にそう。喉が渇いてしかたがない。いつも携帯している水も途中で飲み干し、何も飲み物を持っていない。しかも売っている所さえない。いつも背負っているバックパックも今日はかなり重く感じる。"JUST HOT"この意味が少し分かったような気がした。
 
 歩いて1時間くらいたつと、街らしいビルが並んでいる。しかし人は一人もいない。やっぱり暑さのせいなのか?車からも不思議そうにぼくの事をみている。なんなんだろうこの街は?フェニックスの第一印象だ。まるで住人全員が疎開してしまったかのような静けさ。まさにゴーストタウンだ。背の高いビルばかりがやけに目立つ。砂漠に囲まれたオアシス?(要塞)そんな雰囲気だ。お目当てのユースも人がいるのか?やってるのか?と心配になる。
 
 汗だくで、ヘトヘトになってユースに着くと、しっかりユースはやっていた。とりあえずひと安心して、中に入っていくと、陽気な歌声が聞こえる。どうやらここの管理人らしい。彼女(スー)に宿代を払い、部屋に案内されると、そこは鍵もついてない部屋が1部屋あるだけだった。今までのユースとはあまりにも掛け離れている。今までどのユースにもいた日本人は、ここにはいないだろうなーと思っていたが、驚いたことに、ここにもしっかりいた。しかも今日泊まるのはぼくとその日本人(雅浩くん)を入れて3人だけだ。
 
 早速、起きたばかりの雅浩くんに話しかけてみると、彼は3ヶ月間、このフェニックスにいるそうだ。その目的はただ野球を観るだけ。観光も何もせずに、ただ野球が観たいがために会社を辞めて、ここまで来てしまったのだ。ぼくには信じられないが、本当に昼間は本を読んだり、ユースを手伝って掃除をしたりして過ごしている。夜になると野球を観に野球場まで歩いていく。それを今、1ヶ月間繰り返しているそうだ。
 
 ダイヤモンド・バックス:野球を全然知らないぼくには、聞いたこともないチームだ。最近出来たばかりで、ぼくでも知っているあの"ランディ・ジョンソン"が最近移籍してきたらしい。そんな彼に興味が湧いてきた。「ドジャースやヤンキースではなく、何でダイヤモンド・バックスなのか?」等、疑問に思った事を次々に質問を浴びせた。
 
 「本当に野球を観るのが好きで、日本の野球も大好きだけど、どうせなら本場のメジャーの試合を生で観たい。そのために日本から3ヶ月間、席を予約してここまで来た。別に旅行をしているわけでもないし、野球のほかにこれといって観たいものがある訳じゃない。ここはユースから球場が近いからここにしただけ、対戦相手がいるから他のチームも観れるし。」と彼は質問に淡々と答えた。
 
 とにかくぼくには理解出来ない。試合の無い日は一日中ユースに居ることが多い。グランド・キャニオンもすぐそこにあるのに、別に行きたいとも思わないと言う。"せっかくアメリカに3ヶ月もいるのに"とぼくは思ってしまうけど・・・。しかしそんな人もいるんだなーと思って無理矢理、彼を理解しようとした。
 
 彼と話しているうちに、今日の昼間、試合があるというので、ぼくも観に行くことにした。早速球場に行って、チケットを買った。なんと1ドル。たった1ドルでメジャーが観れてしまうのだ。一番上の方の隅っこだけど、ここからでも十分試合が観れるし、全体が見渡せる。雅浩くんはいつも内野席で観ているため、この席に座った時に少し驚いていた。上から全体を見渡して、「こっちの方が全体を見渡せていいかもしれん」とも言っていた。確かに眺めは壮大だ。中学生の時以来野球を生で観たことがないので、比較は出来ないが、確かに広い。そして観客席がやけに急で立つと落ちそうな気がする。しかしそのためか、選手を近くに感じる事が出来る。球場は開閉式のドームで、外から見ると球場だとは分からない。ただのでっかいビルのような感じだ。
 
 今日は日曜日だから、こてこての格好をしたアメリカンが家族と一緒に試合を観に来る。このフェニックスのどこからこんな人が集まってきたのかと思うほど、すごい人だ。それでも席は十分空いている。さすがメジャー。とにかく全てが高い。ジュースも3ドル。ビールも6ドル。中にはマクドナルドも入っていて、アメリカンファミリーが両手一杯に食べ物やら、飲み物を持って、今日の試合のために備えてる。<ちなみにマクドナルドも高い>子供も自分では持てないくらい大きいジュースを抱えてる。子供の頃からそんなバカでかいコーラ飲んでればそりゃ太るわ、と思わず思ってしまう。もうみんなお祭り騒ぎだ。
 
 試合が始まる前にはアメリカらしい余興があって、みんなを楽しませる。そしてスターティングメンバーの発表。今日はなんと"ランディ・ジョンソン"の登板の日だ。他の観客もランディの時だけは異様に盛り上がる。投げる時も、打つ時もランディの時は頑張って応援するけど、その他の時はだらだらしてる。それも分かる。・・・とにかく暑い。デーゲームの雰囲気を出すためか、わざわざドームを空けてある。ぼくらは不運にも日の当たる方の席で、どうしようもなく暑い。思わず、高くて我慢してたビールを2杯も飲んでしまった。
 
 試合は投手戦で、最後にダイヤモンド・バックスが1点入れて、ピッツバーグ・パイレーツに勝った。
 
 試合自体も面白かったけど、思いがけずメジャーの試合を観れて、かなり満足だった。もともと興味のないぼくは、アメリカに行って、メジャーを観ようという頭がなく、多分自分からは見ようとはしなかったので、大満足だった。
 
 その日の夜は雅浩くんと少し贅沢をしようという事になり、こっちで有名?な"FOOTERS"に行った。ただのハンバーガー屋さんだ。何が有名かというと、アメリカのむちむちお姉ちゃんがタンクトップとホットパンツ姿、そしてローラースケートで注文を取りに来てくれる。いかにもアメリカらしい、ぼくたち日本人が考える一昔前のアメリカがそこにはあるのだ。店内にはそういうお姉ちゃんがウヨウヨいる。器用にローラースケートを操って、妙に明るく、そしてとびきりな愛想で注文を取りに来てくれる。もちろんまじかで見てもむちむちだ。味の方はというと、"うまい"。量が多くて、食べにくいけど、とにかくうまい。ハンバーガーはこっちの主食なので、日本より数倍メニューも多く、量も味も申し分なし。こっちの飯はぼくのお腹に合っている。(もちろん白いご飯にはかなわないけど・・・。)おおざっぱな味と、半端じゃないボリューム。味音痴なぼくは細かいことはどうでもいい。お腹いっぱいになれば満足なのだ。これといって好き嫌いもないし。基本的に肉食だし・・・。
 
 しかしこの頃はかなり、しろいご飯食べたい病になっていた。金額は高いけど、知り合った仲間と日本料理を食べに行くこともよくあった。外人さんは日本料理=スシなのか、他にうどん、かつ丼、鉄火丼というようなもっとおいしそうな日本料理があるのに、みんな揃いも揃ってスシを食っている。しかも日本にはないようなアボガドの入ったスシばかり。不器用に箸(チョップスティック)を使って食べている。うーん、間違ってる。だれが教えたのか、日本のイメージ。
 
 翌日はそれでもフェニックスのダウンタウン観光に出かけた。特に見たいものも無かったけど、市内をブラブラ歩いた。本当に日差しが強く、少し歩くだけで汗びっしょり。絶えず飲み物は持っていた。・・・ダウンタウンは本当に何もなかった。2時間でダウンタウン観光は終った。フェニックスはオフィス街でいるのはビジネスマンばかり。ビルだけで、見ても何にも面白くないから、とにかくバスで行けるところまで行くことにした。
 
 南行きのバスに1時間30分くらい揺られて、やっとそのバスの最終駅に着いた。途中テンペという学生の町を通り、通り沿いにポツポツと店が並ぶだけの道路をひたすら走る。周りは荒涼とした景色が延々と続く。そして最終駅はとてつもない広さの郊外型のショッピングモールになっていた。その中にはデパートが4つ入っていて、とにかくでかい。金も無いし、あんまり買い物には興味がないから、ぐるっと1周りして、外を散歩してみた。すると、そこにはぼくのイメージしてたフェニックスがあった。"サボテン"だ。今日一日、なんかつまらない観光だったので、思わず写真を2、3枚撮ってしまった。サボテンにもいろいろな形があって、かなりでかい。道路の横にあって、街路樹の代わりにサボテンがある。そんな感じだ。何故かかなり興奮してしまった。これだけで、思いつくままにバスに乗ってきてよかったとも思った。帰りはまた同じルートをバスに乗ってダウンタウンまで行く。そしてその日の晩御飯は雅浩くんと二人でカップラーメンをすすった。
 
 夜になっても相変わらずスーは歌っている。他のバックパッカーもしきりにうるさいと言っているが、それでも止めない。一人で踊りながらみんなの前を通り、一言、二言話して、また踊りながら何処かへ行ってしまう。そんなスーもぼくたち二人の日本人にはよく話してくれた。
 
 ユースの夜の時間はみんな思い思いに過ごす。周りの人と夜中まで話している人や、一人で読書をしている人、音楽を聴いている人。しかし不思議と夜はみんな庭に集まってくる。のんびりとした贅沢な時間だ。ぼくもこのユースの庭が気に入っていた。雅浩くんや他の外人さんと話したり、読書をしたりして過ごした。しかしここでイギリス人のJOHNと知り合い、その後の町で大変なことが起こるのだ。(詳細はサンタフェにて)
 
 フェニックスも見るところが無くなったので、また他の場所に移動する事にした。
 
 次はいよいよグランドキャニオンだ。

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