第２３章
〓 ＤＥＮＶＥＲ〔Ｃｏｌｏｒａｄｏ〕 〓
メインストリートの１６番ストリートモール
旅の軌跡に行く
デンバー（コロラド州）
シカゴからデンバーまでは、今までで最長のバスの旅。約２５時間バスに乗ってやっと着いた。途中のオハマや他の停留所での待ち時間を入れると、移動だけで約３０時間。さすがに辛かった。普通、グレイハウンドでは朝、昼、晩と夜中にミールストップがあるので、飯の食いっぱぐれがないのは安心だが、今日の車内はぎゅうぎゅう詰めで、よりによってぼくの隣は太った黒人さんだったのである。ごめんなさいって感じで小さくなってて、自分でも寝てるのか寝てないのかよく分からない状態で、ひたすら座ってた。その黒人さんはいい人でおかしをくれるのだが、バスの中でずっと動いてなくて、しかもその黒人さんはずっとおかしをボリボリやってるので、見てるぼくのお腹がいっぱいになってくる。ミールストップで止っても、ほとんど食いたくないので、ジュースとパン一つとかを買うと、その黒人さんが「もっと食べないとだめだ。」なんて事を言ってきて、いろいろくれたりする。うれしいのだが、悪いと思って食うと、吐きそうになる。こんな事を繰り返してやっとオハマに着くと、その黒人さんが降りたので、その後イス２つを使って快適に寝た。
これだけ長い時間同じバスの中にいると、どこかに連帯感みたいのが生まれてきて、バスの中は遠足の雰囲気になる。周りの人と暇潰しにトランプとかをやって盛り上がっていた。シカゴからデンバーまでは、鉄道のアムトラックも走っているのだが、何故かバスの旅が気に入ってしまったのだ。このバスの雰囲気が好きなのだ。アムトラックはどことなく上品で、旅行者がほとんどだ。それに比べてグレイハウンドは様々な人が乗ってくる。雰囲気はいいとは言えないが、本当のアメリカっぽくて、面白いのだ。アムトラックの方が数倍快適なのに・・・。
デンバーは一日中雨だった。ここもそれほど見たいものがある訳じゃなくて、ソルトレイク・シティに行くついでに寄ったようなものだった。郊外に行けば、"ロッキー山脈"や"ボウルダー"といった、かなりな見所があるのだが・・・。時間とお金と交通機関の問題で断念。
気を取り直して、デンバーのダウンタウンを観光する。とりあえずは１６番ストリートモールに行く。デンバー１のショッピング街だ。雨なのでお気に入りのスターバックスのカフェラテを飲みながら、毎日書いている日記を書く。とりあえずどこへ行こうかと、ガイドブックを開いて、"デンバーの主な見所"の一番上と２番目に乗っている、州議事堂、造幣局に決める。
どっちに行くにしても歩いてすぐの距離だ。州議事堂はてっぺんが金色に輝いていて、どこからでも見える。雨宿りついでに１６番ストリートモールの店を見ながら州議事堂へ。中には自由に入れるので、とりあえず中に入って歴代州知事の肖像画を見ながら、展望台に行くらせん階段を上っていく。もちろん展望台に行っても素晴らしい景色が見えないのは知ってたが、今日の見所は少ないので、展望台にてデンバーの町並みを拝見する。うーん、狭い町だ。コロラド大学デンバー校の広さが異様なほど目立つ。どうしてこっちの大学はあんなに広くて、自然いっぱい、芝生いっぱいなのだろうと思ってしまう。ぼくの行った大学なんて、工場いっぱい、汚染いっぱい、オマケにグランド、体育館は近くの高校と共同だったのだ。夢の大学生活、芝生でのんびりお弁当計画が・・・。
まー、そんなことはどうでもいいが、本当にこの雨には参ってしまう。動きたくても動けない。観光しても楽しくない。だからコーヒーショップに行って、休憩ばかりしていた。コーヒーの飲みすぎで、トイレによくお世話になった。
雨が小ぶりになったので、"デンバーでの主な見所"の２番目に載っていた造幣局に行く。アメリカではデンバーの他にフィラデルフィアとワシントンＤ．Ｃ．に造幣局があるそうだ。コインの表（人の顔が書いてある面）に小さく"Ｄ"とか"Ｐ"と刻まれている。それによって、Ｄｅｎｖｅｒで造られた物かＰｈｉｌａｄｅｌｐｈｉａで造られた物か分かるのだ。それと記念コインなのか、何なのか分からないが、旅行中、見慣れた２５¢（裏が鷲の絵）コインに違った種類があるのに気が付いたのだ。州ごとに裏のデザインが違っているコインをよく見かけた。全部で何枚あるか分からないが、今ぼくの手元には４種類の記念２５¢コイン、そして２つの１ドルコインがある。１ドルコインも金色の奴と、少し形が欠けているものがある。何故か気になって集めていたのだ。この他に２ドル札もお釣りで貰ったことがあったが、知らない間に使っていたみたいだった。・・・造幣局は閉まっていた。あれっ・・・。
デンバーではこのくらいしか観光しなかった。しかし、食費はかなり使っている。いつもの倍くらいだ。雨はいろんな意味で最悪だという事が、このデンバーで初めて分かった。アメリカに来てから、一日中雨が降っていたのはこの時が初めてだった。本当に今まで運がよかったのだ。
次はユタ州、ソルトレイクシティ。ケント・デリカットの言うようにいい町なのだろうか？
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