第２０章
〓 ＮＥＷ ＯＲＬＥＡＮＳ〔Ｌｏｕｉｓｉａｎａ〕：ａｇａｉｎ 〓
ジャグラーと知り合った人達。
旅の軌跡に行く
再び、ニューオリンズ（ルイジアナ州）
再び舞い戻ってきた、ニューオリンズ。しかしまた、ここに来る途中のバスの中で大変な事が起こるのだ。
フォートワースからいつものグレイハウンドで、ここ"ニューオリンズ"に来たのだが、フォートワースからダラス、ヒューストンを通った後、いきなりバスは何にも無い所で止るのだ。バス停があって誰か乗ってくるんだろうと思ったのだが、なんと乗ってきたのは"ポリス"だ。また何かはじめに言って、みんなの身分証明書を調べ始める。この前の時と同じだ。今回のポリスは淡々と身分証明書をチェックしていく。当然ぼくはＯ．Ｋだ。しかし、ぼくの後ろのメキシコ人ぽい人が身分証明書を見せると、ポリスが何かを言ってる。そして指を出して、指紋を採られている。しばらく話をしていたのだが・・・。
そいつの手がぼくのイスの上にのせられて、いきなり、"ガチャ"だ！なんとそいつは手錠をかけられてしまったのだ。驚いた。しかもぼくの後ろだ。何をやったのかがすごい気になる。しかし、そのポリスはそいつをそこに残したまま、後ろの乗客を調べに行ってしまったのだ。・・・怖い。そいつの手がぼくの頭のすぐ上にあるのだ。思いっきり、前かがみの体勢になる。こいつは凶悪犯人なのだろうか？もしこいつが暴れ出したら、ぼくはどうなるんだろう？すごく不安で怖い。手錠は掛けられているが、半分野放しなのだ。動こうと思えば、いつでも動ける。後ろの状況が気になるが、怖くて後ろを見ることも出来ない。とにかく早く、こいつを連れ出して欲しいのだ。まだポリスは調べているらしい。なかなか戻ってこない。後ろの奴はやけにおとなしい。もう観念してるのか、もの音一つしない。本当に怖い。そのうちにポリスが戻ってきて、そいつをやっと連れ出してくれる。フー、一安心。よかった、よかった。
どうやらあいつは密入国者のようだった。
そして２度目のニューオリンズにやって来た。バスの中にいた日本人とストリート・カーに乗って、ユースを目指す。一緒になった人は健くんといって、どう見てもヤクザにしか見えない風貌だ。つるつるの頭に髭を生やしてる。・・・反則だ。喋るのも怖かったけど、喋るといい人だった。
本にストリーカーだと１０分と書いてあるが、１０分過ぎても降りる駅の名前が見えない。３０分も乗っただろうか、あまりにもおかしいので運転手に聞くと、とっくに過ぎたという。仕方がないので、また金を払って、来た道を戻った。
やっとのことでユースに着く。・・・疲れた。ここもやっぱり暑いのだ。この前来た時は夜だったので、そう感じなかったのだが、蒸し暑い。バスの乗り継ぎでシャワーも浴びてなかったので、とりあえず、シャワーを浴びることに。そして昼のニューオリンズ観光。昼のバーボンストリートも、やっぱり人がたくさんいる。そしてみんなビールを持っている。いい街だ。ほとんどのアメリカの州では、路上で酒を飲む事は禁止されているのだ。しかし、ここは違う。みんな酒を片手にストリートミュージシャンの演奏を聴いている。本当にストリートミュージシャンや大道芸人の数が多い。所々、建物のベランダにアイアンレース細工が施してあり、どことなくヨーロッパぽい。ジャクソン広場では毎週土曜日にジャズコンサートも行われていて、広場の周りは凄い人の数になる。演奏の合間にバケツを持って、チップをおねだりにくるのだが、本当に素晴らしい演奏なので、ついつい出してしまう。他の場所とは比較にならないほど、ストリートミュージシャン数がたくさんいて、演奏もうまかった。
ここのユースにはおもしろい日本人がたくさんいた。大道芸人：このニューオリンズで大道芸をするのが、人生の最大の目標だったいう。翌日、彼の芸を見に行くが、昔の紙で出来た日本傘を振り回し、ひたすら演歌チックな歌を歌っていた。・・・当然、客は集まっていなかった。ぼくも恥ずかしくなってきたが、終った後の彼の顔は達成感で満ち溢れていた。岡部さん：アメリカ一周、そして南米をも一周しようとする無茶な女の子。彼女はこの後、マイアミで荷物を盗まれたそうだ。誠くん：初めての海外旅行。しかし、アメリカに来て自分の英語が全然通じない事がわかったので、英語を使うのをやめて、全て日本語でここまで旅をしてきたのだ。だからといって弱気ではなく、いつも強気で、すぐに人に話し掛ける。ホームレスにお金をあげて、横に座って説教をしたりもしていた。←全て日本語で
外人さんのジャグラー（ジャグリングをする人：ぼくが勝手にそう呼んでた。）とも知り合った。昼はいつもユースで寝ていた。夜になると街へ出て行き、自分の芸を披露して、そこで貯めたお金で旅を続けているという。気さくで面白い人だ。
ここで知り合った人達と彼の芸を見に行くことに。この日は昼からやるというので、みんなでぞろぞろと彼について行き、みんなで彼の芸を盛り上げて、客寄せをしていた。もう一人の日本の大道芸人とは違い、観客を楽しませる要素がたくさんあって面白かった。彼の芸が終った後、みんなでジャグリングに挑戦するが、当然出来るはずもない。しかし、その光景を見て、黒人さんの子供がたくさん集まって来た。彼らはジャグラーの商売道具を片っ端から手に取って、ひたすら練習し始めた。はじめはニコニコと教えていたジャグラーも１時間以上もそれをやられると、さすがに困ったみたいで、商売道具を無理矢理取り上げていた。こっちの子供はさすがに貪欲だ。この街で生まれた性分なのだろうか？何か一つでも芸を身に付けようと、遊びではなく必死にやっている。はじめは全然出来なかったのが、１時間もすると出来るようになっている子もいた。
夜は、知り合った人達とバーボンストリートに行って、飲んで、騒いでいた記憶しかない。昼のニューオリンズもいいが、やっぱりここは夜の街だ。また
Ｐｒｅｓｅｒｖａｔｉｏｎ Ｈａｌｌにも行き、昼も夜もジャズの演奏に浸っていた。知り合った人みんなが言うように、ここはいい街だった。
ここまで来ると、もうぼくの旅も残り１ヶ月を切っていた。この後何処に行こうかとかなり迷うが、北を目指す事にして、ニューオリンズを出発した。
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