バリ島クタビーチに面するマハラニホテルを出発する。市内観光に参加したのは、同じホテルに宿泊していた例の若い女性2人と俺との3人だけだった。
現地ガイドは、サイババを信仰する27歳の独身男性。一ヶ月の給料が15万ルピアというから、7000円弱である。物価の差とはいえ、円高放漫旅行の後ろめたさを感じてしまう。タクシーや屋台で少々ボラれようが、土産店からガイドへ紹介料がこそっと渡されていようが、エラそうに言いにくい経済の皮肉である。また彼は、ヴァイシャ階級だという。インドネシアはイスラム教の国だが、バリ島はヒンドゥー教の島。カースト制度はこうして生きている。
クタビーチには世界中から観光客やサーファーが集まるが、物売りの子ども達には辟易してしまう。しかし、ガイドさんによれば、失業率33%だということだった。観光ガイドブックには、クタの物売りは、日本人観光客が生み出している、とあった。どういうことか?彼らは元々は地元で平和に暮らす住民だった。しかし、リゾート開発がすすんで、悪どい商売人が侵入し、彼らから家も仕事も奪ってしまった。悪どい商売人を増長させているのは、誰か?それは、ドラッグと売春と法外な価格の商品にすぐ手を出す日本からの観光客だ、というのだ。
kurochanもクタで、「いい子いるよ!」「ドラッグ!」「夜ヤル?」などと声をかけられた。堅物の俺はそんなのキライだが、ひょいひょい手を出す日本人はままいるだろう。以前韓国の料理店内で、どうやってホステスをホテルへ連れ込むかを大声で喋っている日本人青年二人組を見かけて、頭に血が上ったことがあったが、バカな日本人の日本語会話を、現地の人々はちゃんと理解しているのだ。
さて、市内観光だが、バトゥムラン村でバロンダンスを見物。小泉文夫の集めた世界の民族音楽集で聞いて以来、ガムラン音楽が好きだったので、まさに本場のガムラン生演奏にkurochan感激! ガイドさんの言うままに芝居中にステージに上がり記念写真まで撮ってしまった。続いて、銀製装飾品の製造直売。来た来た、パターンだ。でも、ブローチなどを買ってしまう。残念ながら、母上へ。
次は、絵の店に連れて行かれる。高校時代にエゴン=シーレの絵を友達に教えてもらってから、絵をみるのは好きな俺だが、熱帯らしい濃い色彩の植物や動物の油絵をじっくり観察していたら、「買わないか」と言われ、「買わない」と言うとさっさと追い出された。「1000円、1000円」と叫ぶ物売りが多い。Tシャツ1枚で1000円というわけだが、7枚売ればガイドさんの月給に匹敵する。やはりボロ儲けだ。
中華料理店で昼食。ここで、世界の狭さに、一回目のびっくり仰天が待っていた。(2001-2-16筆)