■『悩む力』(姜尚中著、集英社新書、2008/5/16)■ (09/12/16) | |
読書が大の苦手だった私も、中学三年の秋、加藤諦三の人生論シリーズにはまり、それ以後、生きることについて考える本を読みあさるようになりました。中村雅俊や武田鉄矢が活躍する学園ドラマの感化もあって、友達と語らい、陸上競技や趣味の音楽にも没頭するようになります。 高校進学も、のびのびとクラブ活動をして、学校を盛り上げるためでした。生徒会活動や自主企画の学校行事にのめり込み、暴走のあげく、教員や親戚と激しくぶつかります。様々な立場からの説教や説得をたくさん浴びせられても、口達者でいくらでも反論する快活豪快な存在でした。しかし、内心では、自分の言葉が所詮は他人(著者や主人公)の受け売りであり、純粋に僕自身の考えだとは言えない事を知っていたのです。 友達が信頼してくれているのに、僕の考えは本当は僕の考えでないなんて、第一自分自身納得がいかない。自由になるためには他人から無批判に受け入れたものを排除しなければ。そんななかで、本やドラマをはじめ、親のしつけや世の中のさまざまな秩序を無批判に受け入れてきたことに気づき、価値の相対性に悩むことになりました。高一の冬です。そして、自分の意識をえぐり出し、ついには自分の意識を呪縛しているものとして、本能と言語に挑戦しようとしたのです。そうしたことからも自由になりたかったのです。こうして、相当苦しかった葛藤の日々が始まりました。しかし、その過程で悩み抜いたこと、友人や教師・親族が自分に関わろうとしてくれたことは、その後の僕の生きる姿勢やものの見方に大きな影響を与えます。 不器用でいい。青臭くていい。真面目に悩むことは、決してダサいことではない。そんなメッセージをこの本から読み取ってほしいと思います。(勤務校「図書館だより 2009年12月22日号」掲載) |