実は、許行という中国は諸子百家の時代の思想家の文章がないか探していたんですが、書物という形では残っていないのかもしれませんね。仕方がないので、秦末の反乱である「陳勝・呉広の乱」で有名な陳勝の言葉を加えました。あとの3つは日本の思想家の言葉です。
すべて、階級社会への批判の言葉ですね。
安藤昌益[あんどうしょうえき]は、江戸時代の医者ですが、狩野亭吉[かのうこうきち]著「忘れられた思想家」によって明治時代に広く知られるようになった人物で、
18世紀半ばに著わされた「自然真営道」の一節が、■あ■の文章です。
■あ■の現代語訳
人の上に立って、田畑を耕すことがないのに食べ物を貪[むさぼ]り、自然の法則[天の道理]に反することは、盗みの根源である。この根から枝葉のように、どろぼうが下の者たちに生まれるのだ。盗みはすべての悪事の根源だ。それだからこそ、世の中のすべての悪事や乱れは、上に立つ者が田畑を耕さずに食べ物を貪っていることから始まっているのだ。 |
長い文章なので、がんばって訳をつけてみます。
(古文の現代語訳なんて、何年ぶりだろう。。。)
彼は、東北地方の医者ですが、農作業に従事しているはずの農民が餓死し、殿様をはじめとする武士などが豊かな暮らしをしていることについて、素朴で本質的な異議を唱えたというわけですね。古代中国の諸子百家に、孔子らの儒家や老子らの道家などと並んで農家があり、許行が安藤昌益と同じようなことを説いています。古代中国がいかに進んでいたかがよくわかります。
小学校の図工の時間にエッチングという銅版画を体験した人も多いと思いますが、桃山時代に日本に伝わったものの途絶えていたエッチングを再び始めたのが
司馬江漢[しばこうかん]で、彼は日本銅版画の創製者ともいわれます。18世紀後半から19世紀初めに活躍した彼は、平賀源内とも交流して洋風画も描いていますが、前野良沢[まえのりょうたく]に蘭学を学び地動説を紹介したり、封建制を批判する文章を書いてもいるんですね。江戸時代後半の進歩的文化人です。■い■の文章は彼のものです。
現代語訳は必要ないかとと思いますが、注意すべきことがあります。かつての教科書には必ずといっていいほど書かれていたので未だに信じている人がいますが、「士農工商」という階級制度は実態にはそぐわず、現在の歴史学では「武士・町人・農民」と大きく分けて考えるべきだとされています。また「百姓」とは農民だけを指す言葉ではなく、今でいうところの第一次産業従事者全般をいいますし、「公家」を「武士」に含めるかどうか議論がありますし、「雑賤民」の役割や立場の歴史的・地域的な移り変わりや多様さについても続々と研究がなされているところです。「非人」についても特に関東においては弾左右衛門[だんざえもん]支配について読み解く必要がありますし、「乞食[こつじき]」については、中世以来の「聖と賤」の社会史の説明が不可欠です。本当はこのあたりを「人権」コーナーの「部落差別」あたりで平易に概観する文章を書きたいんですが、まだまだ勉強中のkurochanでありました。
豪商升屋本家の番頭でありながら仙台藩の財政再建を任されたりした、大坂の町人学者
山片蟠桃[やまがたばんとう]。大坂の町人たちが出資して設立された学塾の懐徳堂[かいとくどう]で朱子学や陽明学を学び、西洋天文学者の麻田剛立[あさだごうりゅう]の門下生でもあるんでね。1820年に完成した全12巻の「夢の代[ゆめのしろ]」は、きわめて合理的な思想に基づくもので、地動説を主張したり、物価や貨幣について論じて自由経済を説いたり、儒仏国学を批判したりもしています。彼は無神論者・唯物論者でした。その著書で階級制度を批判した部分が、■う■なんですね。これも現代語訳は省略します。
あの有名な「秦の始皇帝」は、法家の思想で戦国時代の中国を統一した秦の第31代の王。中国古来の「皇」と「帝」を兼ねる「皇帝」と位を新たに作り、最初の皇帝だというわけで「始皇帝」と名乗ったわけです。信賞必罰でたたきあげてきた秦のやり方を中国全土に押しつけたんですね。このあたりは逸話が多いので、別のクイズに仕立てるとして【すでに童謡
「待ちぼうけ」は出題済み】、そうした無謀なやり方に反発したのが
陳勝[ちんしょう]・呉広の農民反乱です。過酷な労役に徴用された屯長の陳勝と呉広。約900人の農民たちを北辺労役へ引率するんですが、大雨で立ち往生する羽目に陥ります。「遅刻は斬罪(打ち首)」という決まりがあり、どうせ死ぬくらいならと反乱を起こすんです。その時、陳勝が言った言葉が■え■なんですね。「王だ諸侯だ武将だ宰相だというが、どこにそんな種類の人間がいるんだ。みんな同じ人間じゃないか」という叫びですね。数万人の大反乱に膨らみますが、逆に統率がとれなくなって、陳勝も呉広も仲間に殺されてしまい、秦の軍隊に鎮圧されてしまいます。そして、次に登場するのが項羽[こうう]と劉邦[りゅうほう]ですね。
というわけで、正解は、あ→A・い→C・う→D・え→B、です。