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夢幻林を歩く一行。 相変わらず紫音は一番前だ。続いて透。その後をプシケ。最後尾を行くのは、プシケの腰の動きに視線を貼り付けている飛焔。 少し不機嫌な声でプシケは言った。彼の視線に気づいていたらしい。 「飛焔。あなたは夢幻林を良く知っているみたいだけど、わかっていたの? 私の身に何が起こるかを?」 「あぁ? やっぱり見たんか?」 一言で結論は出た。 彼女の事前調査では、夢幻林が不穏な土地であることはわかっていたが、何が起こるかは皆目明らかにはならなかった。まさか、あんなリアルな夢を見させられる羽目に陥ろうとは。 「どうして教えてくれなかったの? 話してくれていれば、それなりの対抗策があったと思うのに」 「無駄や、無駄や。心の中に願望がある限り、ここはそれを夢にして見せる。しゃーけど別に悪意があるわけやないんや。なぁ、坊」 彼は何故か透に声をかけた。 「ぼ、ぼん……?」 「何や、気に入らんか? おまえ、どう見てもええトコのぼんぼんやさかいな。侍の子っちゅーよりも、商人の子ぉやな。しゃーから若やのぅて坊ちゃんや。坊ちゃんゆ〜とったら忙しないさかい、坊、や」 「子供扱いしないでくれよ。僕は透。早坂透って名前があるんだ」 飛焔は瞳で笑いながら言う。 「そら、わかっとる。坊らしい名前や。名字あるっちゅーことは侍の子ぉかも知れんけど、やっぱり坊の方がおまえに似おとるで」 ガックリと項垂れる。彼はどうやら猪突猛進な性格と見た。思い込んだら一直線ということだ。自分の考えに酔いしれているうちは、透が何を言っても無駄だろう。抗議するだけ馬鹿をみる。溜息を吐き、顔を上げると、紫音の肩が笑っていた。ガックリ感が倍増だ。 「紫音まで! ひどいよ」 「悪ぃ……」 と言いながら、今度は大声でげらげらと笑った。 透は眉を顰める。やっぱり、この二人は何処か思考回路が似ているのではないか。 それにしても―― それにしても、と透は思う。飛焔が夢幻林について、思いの外、的を射ていることに驚いた。 夢幻林は意思を持つ。それはそこいらの《場》のようなものではなく、個別に確立された無二の意思。だからこそ、《場》として透に味方するのではなく、友として彼に語りかけてきた。 夢幻林は夢を見せる。過去の失われた幸福。そして言った――「見果てぬ夢ではあるが、せめてひと時だけでも取り戻すがよい」―― 透は拒む――「見果てぬ夢なら僕には必要じゃないんだ。それはもう夢じゃなく、幻だから」―― 夢幻林は戸惑う。自分に立ち入る全ての者に対して慈悲の心を持つために。人の心の奥底にある、恋焦がれて止まないその夢を具現化することで、人の心を慰められると信じている。時によっては、死よりも辛い苦しみを、見せることになるとも知らずに。 だから透は言う――「人が大事に心の奥に抱えているからといって、それが全て幸福ではないんだよ。悲しみや苦しみだって心の中に隠すんだ。それは改めて見せられるべきものじゃなくて、自分でこっそり振り返るものなんだ。だから人は前を向いて歩いていける。過去の夢に縛られてちゃ前に進めなくなるもんなんだよ、人ってね」―― 暫しの沈黙。夢幻林は淡々と言う――「だが、人は夢を見たがる。私は夢を見せる。人が私に望んだ事だ。だから私は生まれてきた。人の望む夢を見せるために」―― 透はそれに答える――「そうだね。夢を見たい人もいるんだ。だから、そうしたいならそうすればいいんだよ。それが宿命なら。でも、少なくとも僕には必要じゃない。あなたのその気持ちだけ、ありがたく受け取るよ」―― そうして夢幻林は沈黙した。けれど、透が望めば幾らでも、夢を見させてくれることだろう。 「どんなに心の奥底の深い部分に隠していたとしても、この林には見透かされてしまうって事ね」 「そうや。とかく人っちゅーもんは一番痛いトコを心の底に隠すからなぁ。見果てぬ夢であればあるほど、深い部分に隠したがるやろ? この林はそれを見せるだけや。せめて夢の中だけでも幸せな気分になって、旅の疲れを癒してくれ〜、とでも言いたいみたいになぁ」 よくもそれだけ夢幻林の気持ちがわかるものだ。透と同じ力を持っているわけでもないだろうに。 「余計なお世話だな」 ぽつりと紫音が言う。 「そらないで、兄ぃ。別に悪気があるわけやないんやから……」 夢幻林を庇う飛焔に、容赦なく言い放つ。 「悪意がないから余計に性質が悪い。しかもあんなリアルな夢を見せやがって。心の中にあるものを勝手に具現化するなど、プライバシーの侵害だ!」 飛焔がにやりと笑った。 「は、は〜ん……兄ぃ、さては痛いトコ突かれたんやな? まだまだ甘いなぁ、そのうち夢を制御できるようになるんやって」 「何だと!」 振り返ろうとする紫音の背中を押しながら、 「はいはいはいはい、口より足を動かそうよ。僕たちには急いでやらなきゃならないコトがあるだろ?」 透は有無を言わせず早足で歩いた。 眼前に聳え立つ石造りの塔。夢幻林のど真ん中に立ち尽くしていた。円柱形のその姿は、チェスで言うルークの駒の形だ。 「ここが真の塔か」 紫音は躊躇いもせず入口に向かう。木で誂えられたその扉は、押し開けると、悲鳴と聞き間違えそうな軋みを上げた。 透は息を呑む。黴臭い冷たい空気が漂ってきた。 紫音が先に足を踏み入れた。透も後に続く。飛焔も二人を追おうとしたが、プシケに止められた。 「私たちはここで待っていましょう」 彼は足を止め、プシケの隣に立つ。 「いよいよね」 彼女は一言だけ洩らし、彼らを見送った。 夜はとっくに明けていた。塔の中には薄明かりがある。目が慣れれば自由に動けるはずだ。彼らは塔の中で、暫く薄明かりに目を慣らせた。 「倫明は真の塔とだけ言った。この堆い塔の、何処で待ってりゃ導師とやらは現れるんだ。……取り敢えず、上ってみるか、透?」 「ゲームなんかの場合だと、大抵一番上の階なんだよな。で、途中の階には魔物がいたりなんかしてさ。まさかね……」 「わからねえぞ。出ないとは聞いてねえからな」 透は紫音を睨んだ。 「またぁ……すぐそうやってからかうんだから。人が悪いな、紫音」 「心配するな。魔物が出たらとっ捕まえて、丸焼きにして食ってやろうぜ。それとも活造りがいいか?」 「どっちもゴメンだよ」 そこは実際には単なる古びた塔。魔物どころかネズミすら、棲む気もないと見える。 彼らは塔の最上階に上り、窓から辺りを見回した。 陽に照らされた夢幻林。背の高い、真っ直ぐな木立が空に向かって枝を伸ばす。歪みも括れもない木々は、素直な直線で立ち並んでいた。 彼らは日がな一日、そうして窓の外を眺めていた。陽が傾き、夢幻林が赤く染まり、やがて闇に包まれても、導師は姿を現さない。 空には糸よりも細い月。それが中空にかかり、頼りない光を投げかける頃、微かな足音を耳にした。 「来たか」 彼らは振り返る。 そこにいたのは金の髪に黒いローブの娘。手にした蝋燭の灯りで額の水晶が煌く。 「何だ……プシケ……」 驚いて声を上げる透に彼女は笑いかけた。 「ごめんなさい。あんまり時間がかかるので心配になってしまって。……それで、まだ?」 「まだ現れねえ。本当にここで待ってりゃ現れるのか、不安になってくるぜ」 「そう」 プシケは溜息を吐いた。 最上階の部屋は、何かを祀るための部屋と思われた。中央に石造りの丸い段があり、その上に、長方形の祭壇と思しき石が置いてある。彼女はそこまで歩み寄ると、祭壇の上に灯りを乗せ、自分は丸い段の上に腰を下ろした。 「あの男は?」 「下で待っているわ」 「そうか」 会話がなくなった。 円柱形の部屋には窓が四つある。東西南北に据えられている。透は窓の縁に腰をかけ、東の空を眺めていた。紫音は西の窓に佇み、月が雲と戯れるのを見ていた。プシケは真ん中の段に腰を下ろしたまま、暫く俯いていたが、徐に言葉を洩らす。 「ここまで来るのにいろんな事があったでしょうね?」 何気ない問い掛け。 「そうだな。妙なものに遭遇した」 「妙なもの?」 紫音は透を見つめた。透に説明しろと態度で言っている。透だけが、妙なものの正体を、見極めたからに他ならない。 透は徐に動き、プシケの隣に腰をかけた。 そして説明する。紫音が補足を加えながら、婪嬌村での、艶乱の沼での出来事を、長々と語り尽くした。 「本当に妙なものね」 「ヤツの正体が何かはわからない。だが、透は怖いと言った。純粋過ぎて恐い、とな」 透は俯いた。今でも頭から離れない白い少女。無垢で透明な魂。透明すぎて、生きている淀みの欠片も感じられない。純粋であるがゆえの恐ろしさ。 「あなたの意識には、その少女が焼きついているのね? どんな少女だったの?」 透は俯いたまま答える。 「白かった……」 「他には?」 「綺麗な金の巻毛で、とても愛らしい女の子なんだ。吸い込まれそうな青い瞳で……でも、……とても怖かった……」 プシケは透の肩に手をかけた。励ますように、その手に力を篭める。 「透。その少女を私に見せて」 当惑した顔で彼女を見つめた。 「僕には……幻とかの本質の姿を、意識を通じて見せることはできても、自分の意識の中にあるものを、目に見える形にすることはできないよ。どう伝えればいいのかわからないんだ」 「心配しないで、できるわよ。あなたの将来の夢は何だった? カメラマンでしょ? カメラはレンズに映された映像をそのままフィルムに焼きつけるわ。あなたも同じよ。その瞳で、その心眼で見つめた映像を、空間に焼きつけることができるのよ。念じるのよ。その少女の姿を頭の中で念じて」 彼女は段の上に立ち上がり、蝋燭の火を消した。 闇だ。突然の闇が辺りを支配した。しかし全くの闇ではない。朧げな薄明かり。糸の月の明かりが窓から差し込んでくる。 「透、強く念じて」 闇の中で声がした。念じる。あの忘れられない少女の姿を念じた。 「そう、そして闇を見つめて」 見つめた。闇の空間。薄明かりに浮かぶ祭壇の辺り。プシケの気配はそこにはない。すぐ耳元で声がした。 「闇に念じて。そこに少女がいるように」 もう一度、強く少女の姿を念じた。 祭壇の前に何かが浮かび上がる。朧にゆらゆらと揺らめいていたかと思うと、唐突に形を取り始めた。白くぼんやりとした形。人の形に近づいていく。徐々に少女の形に変わり、見つめているうちに、鮮明な少女の姿がそこに現れた。 金色の巻毛の美しい少女。柔らかな笑みを湛えている。吸い込まれそうな青い瞳。きらきらと輝いていた。 少女は佇む、祭壇の前に。そして少し困った顔で言うのだ。こんなはずじゃなかった、と。 「嘘……こんなはずではなかったのに……」 そう言ったのは紛れもなくプシケだ。 「プシケ?」 「何てこと……。でも受け入れなくてはならないわ。透が心眼で見たものなのだから」 「プシケ、いったい?」 不意に炎が揺らめいた。彼女の手の中で蝋燭が燃え出したのだ。空間に焼きつけられた少女はまだそこにいる。祭壇の前に佇んでいる。 「どうしたんだよ、いったい……。もしかして、あの子のコトを知っているの?」 一瞬、躊躇の素振りを見せ、それでも彼女は語ってくれた。 「あの少女はピリア。私が探している、もう一人の人物よ」 思わず祭壇の少女を凝視する。 プシケが探していた少女。彼らが探さなくてはと思っていた少女。 透たちと出会った時、彼女は人を探していると言っていた。その時は透と良く似た髪の人物を探しているということだったが、もう一人、探すべき人物がいたとは。それがこの少女なのか。 「彼女は言ってた。アグスティに戻らなくては、って……」 「アグスティ? 確かにそう言ったのね?」 「ああ、そうだよ」 プシケは考え込んだ。だがその表情が物語っている。アグスティには何かある。アグスティをこのままにしておくわけにはいかない。 「最終的には、アグスティに行かなくてはならないでしょうね。でも、何の情報もないうちは下手に近寄れないわ。そこでは女狩りが浸透しているの。私は姿を晒すわけにはいかないのよ」 「おまえはアグスティを知っているのか?」 紫音の問いに彼女はさらりと答えた。 「そこが私の出発点。私はアグスティから来たのよ」 「なるほど。俺たちは東の果てで、おまえは西の果てか」 紫音はそう言うと、もう一度、祭壇の少女を見た。心なしか少女の姿が揺らいでいる。 「映像を維持するコトはできないんだね。もうすぐ消えちゃうな」 「いつかは固定できるようになるわ。初めて力を使った割には上出来の方よ」 「力?」 怪訝な透に、事もなく彼女は言う。 「そうよ。あなたの別の力。《場》もあなたの力だし、《心眼》もあなたの力。今のは《写形》。目に見えない意識下の中にあるものを、目に見える形に写し取る力。あなたは随分あっさりと、その力を開花させたわね」 「君が手伝ってくれてたわけじゃなくて、僕の中にある力だったの?」 「そうよ。確かに手伝ったけど、開花させたのはあなた自身。私はそれを導いただけ」 導く? その言葉に引っかかりを覚え、透は紫音の顔を見た。紫音は彼女を見つめている。 どちらが先に言い出すか。透が躊躇っていると、案の定、紫音から切り出した。 「俺たちはここで、導師が来るのを待っていたはずだ。それなのに相手はなかなか来やがらねえ。おかしいと思わねえか、透?」 「思うよ」 すかさず答える。 「で、来たのがおまえだ」 と、彼女を見た。続けて、 「真の塔に用があるのは、俺たちと導師だけのはずじゃなかったのか?」 と、腕を組んで仁王立つ。 「その通りよ。だからここに来たのよ」 やっぱり! 透も紫音も心の中で叫んでいた。 「ようやく気づいてくれたのね。心現界は私をあなた方の導師に選んだのよ。まぁ当然と言えば当然ね。私が一番、あなたたちを理解できるはずだから」 薄笑うその顔は、少し人が悪く思えた。 「おまえが一番、人が悪いな。いつでも肝心のところを暈してくる」 「そう言わないで。これも一つの試練だと思って」 イタズラっぽく言い、柔らかく笑った。天使のような笑顔がそこにある。 透もつられて笑う。何だか肩の荷が少し下りた気がした。導師という厳めしい存在に対するイメージが、一気に払拭されたのだ。彼女が導師で彼らを導いてくれるなら、ほとんど元の形に戻ったのと同じことだ。彼らは初めて彼女と出逢った時から、彼女に導かれていたのだから。 「がっかり半分、喜び倍増ってトコかな。導師っていうから、どんな厳めしいお爺さんが来るのかと思ってた。いろんなイメージが頭の中で膨れ上がって興味津々だったからさ、まさか、君みたいな若い女の子とは思ってなかったんだ。でも正直に、君が導師で良かった。君になら手放しでついて行けるだろうから」 「あら、そんなことを言って。もし私が無理難題をあなたたちに押しつけたらどうするのよ?」 「君はそんなコトしないよ。そんなの、わかりきってるじゃないか」 全面的信頼の意思表示を改めて聞くと、さすがの彼女も少々照れ臭くなったらしい。少しはにかみながら言う。 「けれど本当に、無理難題をお願いしなきゃならない時もあるかも知れないわ。それでも、あなたたちは私について来てくれる?」 透も紫音も声を揃えて言った。 「当たり前だ」 三人は同時に吹き出した。 ひとしきり笑いが収まると、プシケが小声で言う。塔の中はいやに静かなので、小声でもそれなりに響いた。 「あなたに言い忘れたわ、透。クリスも私たちの側にいるのよ。私の指輪に宿っていたのだけど、それは今、飛焔の指に嵌っているわ。でもクリスにはそのままでいてもらってるの。彼はまだ私たちにとって敵か味方かわからないでしょ? クリスにこのままでいてもらった方が探りを入れるのに好都合なのよ。だからあなたにも、やたら話しかけないように言ってあるから」 透はぽん、と手を叩く。 「ああ。どうりで。気配は感じるのに声がしないなと思ってたんだ。姿も現さないし」 「あの小うるさい石の精にはいい修行になるんじゃねえか。これで少しは黙るということを覚えられるだろうさ」 「そんなコト、クリスの前で言ったら攻撃されるよ。幾ら紫音でもクリスに反撃はできないだろ?」 紫音は額に手を当てた。確かに精神攻撃を受けたからといって、仲間相手ではそれを返すわけにはいかない。 「けっ、最近言うようになったじゃねえか、小賢しい。おまえも少しは口を閉じろ。ついでに指輪の持ち主の口も、閉じてくれるとありがたいんだがな」 プシケが密かに吹き出す。むにゃむにゃと口の中で独り言を言ったのだが、この塔の中では、透にも紫音にも何を言ったのか耳に届いた。 「それだけは、きっと誰にもできないわよ」 彼らはくすくす笑いながら下への階段を下りた。 「兄ぃ、坊、やっと用事終わったんかいな。ああ、お嬢ちゃん! あんた急に姿消すさかい、びっくりするやないかぁ。ホンマもう、ワイはあんたの用心棒なんやさかい、勝手に行動して心配かけてもーたら困るで。どっか行く時は、何処行くかちゃんとゆ〜て行きなはれ。それにしても遅かったなぁ。ホンマ、ワイもう腹ぺこで死ぬか思ぅたでぇ」 弾丸の如く喋り捲る飛焔を前にして、彼らは笑いを懸命に堪えた。その努力は大して報われなかったが。 苦しげに笑う三人を前にして、 「な、何や、あんたら。ワイ、なんか可笑しい事ゆ〜たんかいな? どーでもええけど笑いすぎや。理由も説明せんと、げんくそ悪いやっちゃな」 と不機嫌にそっぽを向いた。 「ごっ……ごめんなさい飛焔。長々と待たせて悪かったわ。謝るからこっちを向いて」 優しくそう言われて振り向かないはずがない。急に機嫌が良くなって向きを変える。 「ワイはあんたにメロメロやさかいな。そない言われたら振り向かんわけにはいかんやろ。ほんで? これからどないするねんな?」 彼女は笑うのを止めた。そして言う。 「これから人を探して旅をするの。この世界についての知識は、私たちよりあなたの方が遥かに持っていると思うわ。だから教えて。何処に行けば一番効率がいいかしらね?」 飛焔は少し考えた。すぐに思い当たったらしい。 「そら一番効率ええのんは、オアシスのバザールやな。こっから何ぼも離れとらんし。何ちゅーたかて、各地方の商人が一斉に集まる場所やさかいな。情報集めんのには最適の場所やないかぁ」 「では、そこに案内してくれるわね?」 「任しとき!」 彼は糸の月が傾く西の空を見上げる。 「急げば夕方までには着けるやろ。ほなオアシスへ行くとしょうかぁ」 言い終わると、空腹を抱え先に立って歩き出した。 【妖仙山脈へ】へ続く
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