自然堂治療室・相談室のPROFILE治療者と各種治療法の紹介
ゲシュタルトセラピー
ユダヤ系ドイツ人の放浪の精神科医フリッツ・パールズが、正統派の精神分析にあきたらず、ゲシュタルト心理学や実存主義思想などに依拠しながら、1940年代ごろに創始したものです。のちには大徳寺で禅の修業もしています。60年代以降は、伝統的な精神分析や行動主義に対抗する「第3勢力(人間性心理学)」の中核として、またカウンターカルチャー運動=ニューエイジ運動の旗手としてもてはやされましたが、同時にその「今・ここ」中心のセラピーが、現代の心理療法に与えた画期的な影響力も忘れてはなりません。それなしには、70年代以降の新しいセラピー潮流は語れないほどです。
ゲシュタルトセラピーでは、過去について・「なぜ」なのかを解釈・洞察することはしません。解釈なんて、セラピストがクライエントに対して向ける投影でしかないのです。むしろ話の内容にかかわらず、「今・ここ」で・「いかに」・話しているか、「なにを」・しているかを体験することを強調し、その体験になりきることで、全身的な気づきをめざします。洞察なら感情の説明にすぎませんが、気づきは感情の表現です。だから言葉のやり取りでなく、身体性を重視します。そのために、シンプルでパワフルな多くの技法を考案しました。
「今・ここ」に気づきがおこれば、たいてい行動の変容がおこります。「今・ここ」を過去の呪縛から解放し、未来に向けて新しい選択肢をもたらしてくれるからです。でも本当に行動を変えるかどうかは、クライエントの決めることです。セラピストが意図したり促したりすることではありません。一瞬一瞬の「今・ここ」に開かれてあること、この自由を取り戻すきっかけとしてだけ、セラピーの役割はあるのです。
「今・ここ」にしっかりありきることで、何が自分の本当の問題なのか(過去)、どうしたらよい解決になるか(未来)は、おのずからみえてくるというこの考え方は、自然堂の自然心理療法の出発点であり、ブリーフセラピーとともに自然心理療法の両輪をなしています。ただ、ゲシュタルト式に「今・ここ」にありきるのは、抵抗を生むことがあります。そういう場合もふまえて、自然堂では、ゲシュタルトセラピーにはフォーカシングやハコミセラピーを組み合わせて、いっそうソフトに洗練した形で使うようになっています。
<もっと知りたい人のブックガイド>
フリッツ・パールズ 『ゲシュタルト療法』ナカニシヤ出版、1990年。
M・M・グールディング、R・L・グールディング 『自己実現への再決断:TA・ゲシュタルト療法入門』星和書店、1980年。
ポーラ・バトム 『LIVE NOW 今に生きる』チーム医療、1992年。
リッキー・リヴィングストン 『聖なる愚か者』星雲社、1989年。