自然堂治療室・相談室のPROFILE治療者と各種治療法の紹介

ハコミセラピー

 

1970年代にアメリカのセラピスト、ロン・クルツが、ゲシュタルトセラピー以降の新しいセラピー潮流を、システム理論と東洋のタオイズムにもとづいて統合して創出したもので、トランスパーソナル心理学の1つとして分類されることが多いようです。「ハコミ」とは、ホピインディアンの言葉で、「あなたは誰ですか」を意味するとのこと。

ゲシュタルトセラピーがもっていた効果の大きさ・速さを引き継ぎながら、しかもゲシュタルトセラピーが引き起こしやすいクライエントの抵抗をセラピストが肩代わりする(テイク・オーバー)形でうまく処理し、パワフルでかつ繊細な心理療法となっています。自然堂でも、身体療法であれ心理療法であれ、さまざまの葛藤や抵抗がおこってくるとき、この技法がよく用いられています。

たとえば、「話したい」気持ちと「話してはいけない」という気持ちが葛藤するときっていうのはよくあるものです。「話してはいけない」という気持ちは、そういう声が内部に聞こえるときもあれば、喉が締めつけられたり・咳き込んだり・前屈みになったり・手を口にやったりというふうに、身体の動きとして現れるときもあります。そんな時たとえば、外からセラピストが喉を同じぐらいの強さで締めつけてあげてみると、クライエントは「話してはいけない」気持ちを肩代わりしてもらったおかげで、「話したい」気持ちに専念でき、いともやすやすと話すことができるものです。抵抗はここでは奨励され、セラピストによって代行されています。起こってくることは、すべてありのままに、受け容れられます。

この「テイク・オーバー法」は、ブリーフセラピーでよく使われる「パラドックス技法」や「症状処方」とも共通するところがあります。それは抵抗であれ問題行動であれ、クライエントがもちこむものをすべて受け容れ、奨励している点です。あとはその抵抗や問題行動を、セラピストが代行するか利用するかのちがいがあるだけです。そして「フェルデンクライス法」に由来するこの技法はまた、オステオパシーの「カウンターストレイン」テクニックが、筋肉の過剰緊張を、あえてもっと緊張させることによって、弛緩させてゆくのとも共通しています。どうやら私たちの身心は、筋肉レベルでも言語レベルでも、そっくり同じことがおこっているようです。その相似性がまさに「自然(じねん)」ということなのですが。

 

<もっと知りたい人のブックガイド>

ロン・クルツ ハコミセラピー 星和書店、1996年。

ロン・クルツ、ヘクター・プレステラ からだは語る:ボディ・リーディング入門 壮神社、1993年。

 

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