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< 中国自然歩道・西から東へ  >

 中 編 ・・・島根・浜田から鳥取・米子
期 間:平成15年9月23日から10月7日
         
 ・・・・・・続 き・・・・・・ 

 第7日目 9月30日(天気 曇り):佐津目から立久恵峡YH
                        (距離24Km)行動6時間。
 今日も雨の心配はなく今夜の宿はユースホステルだからテント地を探すこともない。更に距離も短いのでノンビリと歩く。
 ほぼ1km間隔に数軒の集落があり「収穫シーズンで大忙しい」と云った感じだが皆老年齢の夫婦で将来が気になる。そんなことを考えて歩いていたら、立久恵峡への分岐路を過ぎて2km行き過ぎてしまう。分岐路には標示板もなく、近所の人に聞かなければ解らない旧道である。
 立久恵峡YHで昼食のラーメンを作っていたらご主人が「ライスがありますよ」とサービスしてくれた。部屋は和式で普通の旅館並でサービスも良くもう1泊したくなったが、デポ品を整理して明日からの後半戦の準備をした。夕方に山陰の耶馬峡と呼ばれる立久恵峡谷を散策。
 

 第8日目 10月1日(天気 快晴):立久恵峡YHから出雲大社
                         (距離25Km)行動7時間。
 今日のトレイルは、前半は山道で後半は舗装道路を神西湖経由で出雲市までだ。最初の山道は殆ど人が歩いておらずクモの巣とトレイル探しで普通の半分・1,5km/Hrの速度でラチガあかないが何とか3時間かけて6km進み久奈子神社に着く。
 ここからは展望が良く出雲平野が眼下に眺められ、今夜の泊地・出雲大社と明日のトレイル出雲北山の峰が遠く彼方に見える。
 神西湖は出雲市と湖綾町にまたがる周囲5kmの気水湖とかで、日本海側の砂丘からの飛砂が谷を堰きとめて出来た湖とのこと。
 出雲市内は何処を歩いても人家の舗装道歩きだからトレイルに拘らずテント設営予定の道の駅・吉兆館へ行く。ここの<道の駅>は立派な大社祭りの展示記念館だけで食料品や土産店はない。
 休憩所の水道とトイレは自由に使えるので、ゲートボール中のオジイサンに「一晩テントを張らして下さい」と申し出て了解を得た。
 巨大な鳥居から長い参道が続き広い敷地の出雲大社を見学。さすがに並みの神社ではない規模でこの国の長い歴史と暮らしの重みを感じた。
    

 第9日目 10月2日(天気 雨後晴):出雲大社から十六島湾・本郷
                          (距離25Km)行動8時間。
 出雲大社への参拝路は現在<天平古道>と呼ばれて整備されている。このモデルコースは大社・遥堪から峠越えの山道になり鰐淵寺を経て旅伏山から平田市・国富までの11km。
自然歩道としては先日の石見街道と同様に模範的なトレイルで「来たかいがあった!」と満足感が湧いて来る。
 国富町でモデルコースが終わると再度275号線の舗装道歩きに戻る。前半は温泉に恵まれたが後半には温泉マークはないので時間が来たら適当な場所を探そう。
 日本海の六十島(うっぷるい)湾と普通は読めない難しい湾沿いにトレイルを進むが海岸に直ぐ山が迫り平地らしい場所は民家になって私有地しかない。
 この様子では水も調達出来そうにないので人家から「お水下さい」とわけてもらい、つでに「この付近に公園などありませんか」と聞いて近くの児童公園を教えてもらう。最近は物騒なのでクレームが出るとまずいので一応区長さんを紹介してもらい了解を得た。
 夕涼みに来たオジイサンの話によると六十島の呼び名は、日本語ではなくアイヌか韓国語の発音で当て字とのこと。島根弁で十分聞き取れなかったが、この付近は潮の具合で古くから漂流者が流れついたのこと。
 

 第10日目 10月3日(天気 快晴):十六島湾・本郷から一畑薬師手前2Km
                          (距離21Km)行動5時間30分。
 トレイルはリアス式海岸沿いの県道23号線を歩く。海岸線に下りと小さな漁村の集落があり小型の漁船が入り江に係留されているが人影はない。
 食料店もない集落が続くので「生活品は何処で入手するのだろう?」と疑問になる。出発して4時間ほど進むとモデルコースの赤浦海岸コースに着くがシングルトレイルは夏草で被われ道は消えていた。資料では「夏は海水浴で賑わう」となっているがトレイルとは別の車道なあるようだ。
 今日は洗濯日和だから早目にテントを設営しよう。明日朝のトレイルがはっきりしている峠にこじんまりした老母石公園があり湧き水も近くにある。雨の心配もないので昨日に続き今夜も野外に設営する。


 第11日目 10月4日(天気 快晴):一畑薬師手前2Kmから太平山手前2Km
                          (距離24Km)行動8時間20分。
 出発して15分で一畑薬師に着いた。早朝で人の気配はないが由緒あるお寺であることは長くて古い石段を下ると肌に感じる。
 本尊の薬師如来は9世紀に漁師が赤浦海岸で発見して祭ったのが始まりで、眼病に霊験あらたかな「目の薬師様」として参拝者が多いそうだ。
 トレイルは再び日本海方面へ向かう。魚瀬(おのせ)、秋鹿(あいか)と難しい呼び名の集落では、道を聞くのに集落名を正しく云えず苦労した。
 以外に近く南方に穴道湖を望まれる。今回のゴール地米子駅が近いことを感じつつモデルコースの朝日寺へのシングルトレイルに入る。
 寺境内の湧き水は喉を心地良く潤してくれる。坂を下ると遠浅で有名な海水浴・古浦に着く。奇しくも「天皇・皇后両陛下がもう直ぐ通られる」とかで県道は大勢の巡査が警備中である。
巡査が角毎に「何処から来たの?」「何処へ行くの?」と聞かれて歩ける状況ではない。時間が勿体無いが30分ほど見送りの地元の人達に混じって車通過を待つ。2車線の田舎道で身近に見送れるなんて・・こんなチャンスはめったにない。
 それにしても警備は大変だ、10分前から秒読みをして3分前から黒塗りの厳しい警備車がフェンダーに3・2・1とマークして3台通過後、陛下の車が20km/hrでユックルと通過。TVで見るより「ずっと上品で気高さ」にビックリ。
 その後報道車や警備車が延々と続いており陛下の御幸も大変なことと痛感。昨日からヘリコプターが終日飛んでいた理由も納得。
 予定より時間を費やしたので<今夜は太平山の山中で設営になるだろう>と途中から水を補給して1時間ほど登り山頂手前2km地点に平地を見つけてテントを設営。
 明日1泊すると終着地の米子駅だ、今回は初日から2日のみ雨天でその後は連日雨に遭わず本当に天気には恵まれた。残り2日もこの調子であって欲しいものだ。
 

 第12日目 10月5日(天気 曇後晴):太平山手前2Kmから七類先1Km
                            (距離23Km)行動6時間40分。
 島根半島歩きは白砂青松のリアス式海岸が続き絵になる風景が続く。上講武から太平山・枕木山を経て千酌集落までモデルコースになっているのでトレイルも整備されていて安心して歩けた。
 途中の華厳寺は老木が生い茂る古刹の禅寺で千年の歴史を今に伝えて風格を感じる寺だ。湧き水で喉の渇きを癒し一気に千酌へ下る。
 半島も狭くなり天然の良港の町・七類の先でトンネル入口の休憩所にテント設営。水はトンネル先の沢水を使うが身体を洗うほどの水量はない。


 第13日目 10月6日(天気 晴):七類先1KmからJR米子駅・松江駅から翌朝帰京
                         (距離22Km)行動5時間50分。
 最後のモデルコース・美保北浦コース(2,5Km)は荒れていてトレース出来ずバイパス道を歩いた。小さな漁村・法田集落で日本海と別れて狭くなった島根半島を横断して境港市へ向かう。美保関では有名な民謡「関の五本松1本切りゃ四本・・」を口ずさみながら長い境水道大橋を渡ると鳥取県に入る。
 橋から境街道と呼ばれる約16kmの直線道をJR米子駅向けて進む。登校時の交通整理のオマワリさんが「これから山登りですか?」と声をかけてくれるが返答に窮する。
 昨日高速バスの予約を入れたが満席でダメだったので、窓口でキャンセルの可能性を問うがムリとのこと。松江まで戻って別会社の夜行バスに変更してチケットを入手ホッと一息。
 電車でJR松江駅に行き「付近の温泉を教えて下さい」と観光案内所で聞き、市内の<しまね社会保険センター>の展望温泉に行った。

 夜行バスは予定通り松江駅を発車したが、高速道が工事中で迂回したので12時間かかり渋谷に着いた。
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3 あとがき(教訓と所感)
 1)JR浜田駅から始めた島根県の後半部のトレイルは、有福、湯谷、温泉津、湯抱そ
して立久恵峡温泉と5泊温泉に立寄ることが出来た。当初そのつもりではなかったが、好天気で温泉地泊ピッチの行動出来た。何れも由緒ある温泉だがわざわざ行くには不便な所なので、トレイルの趣旨を十分に満喫出来た。

 2)地図上のシングルトレイルは15%程度だが実際には廃道でトレース不能、又は舗装道になっており10%位になっていた。しかし、数少ないトレイルについては古道や登山道で整備されて歩き易かった。自然歩道を歩く人が少ないのでしかたがないが、せめて簡易でも良いので分岐路には目印が欲しかった。


 1)行動について
 1−1)前回の雨天を償うような連日の好天気で順調にトレースして予定より1日早く帰京出来た。

 1−2)新米ドロボーが全国で出没して物騒な世の中になったものだ。そのせいで地元の人も見知らぬ人に警戒気味でテントを設営するにも気を使った。数年前の児童殺傷事件以降は学校も使用が難いので山旅はやり難くなるばかり。そんな中で親切にしてくれると「歩いて良かった」と満ち足りた気持ちになる。

 1−3)初日から足指にテープをして生爪の予防をして効果があった。長帳場で前半にダメージを受けると最後までハンデイを背負うので3日目位までは、予定行動にとらわれず体調を優先し慎重に行動した。今回は珍しく頻繁に温泉に入れたので疲れを翌日に残さずに行動出来た。

 1−4)夜行高速バスが満員で予定地から乗車出来なかった。今後は寝台列車の便も考慮してみたい。自然歩道のトレースは「カネをかけずにヒマをかける」こともポイントの一つだから。

 1−5)今の時期は薄明るくなるのが5時前後で文字が読めるのは5時半以降になる。山道で足元が悪い日の出発は5時半が限界のようだ。夏日より1時間は出発が遅くなるので、設営場所も翌朝道の状態を考慮して決めた。

 1−6)5時出発で7時と10時頃の2回に食料補給の休憩。水は1時間毎程度に随時取って遅くとも「13時以前にテント地着」を基本にした。


 2)食料・装備について
 2−1)中間地に食料品をデポして軽量化に努めた。初日でも総重量18Kg程度に出来たので身体への負荷も許容範囲内であった。

 2−2)コンロは1日1回・午後テント設営後直ぐにラーメンを作り引き続き夕食の米飯を炊いた。合計燃焼時間は40分程度(消費燃料は50CC位)。米は無洗米を150g・2時間以上水に浸す。

 2−3)現地購入食料は大きな店がトレイル上無いので品目は限られたが、豆腐、納豆は比較的入手容易。酒は小さな集落でも入手出来た。いすれも行動時間が早過ぎて開店前でさらに入手が難しい。途中での調達は出来るだけ当てにしないのが賢明のようだ。

 2−4)舗装道が多いので雨天時には傘が有効、ビニール製の軽い物を常備したい。

 2―5)行動食はカンパン(4.1kcal/g)又はビスケット(4.5kcal/g)に砂糖を付けてカロリーを補給。ピーナツ(5.2kcal/g)、スルメ(3.2kcal/g)、コンブは目先が変わって元気が付いた。

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