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< 九州自然歩道・縦 断  >

 後 編 ・・・宮崎・牧水公園から福岡・皿倉山
期 間:平成15年4月22日から5月16日

 関連資料はこちら ・・・・・・ <概念図&タイム> <会計&資料へ> 

久 住 連 山
 
 
1 はじめに
 天候が安定した<梅雨に入る前>のチャンスを生かし期日を設定。今回のような長期間の入山は初体験でもあり極力条件の良い時期を選んだ。
 加齢と共に体力の低下は避けられないとしても、若い時にはない「時間的なゆとり」の利点をフルに活用して無理をせずに体調に応じて行動しよう。
 とは云え「チンタラと遊山気分」では充実感も期待出来ないので、これまで通り「スポーツ登山」の枠から逸脱しない範囲で行動したい。

 前編のトレイルから予測して今回も<舗装道歩き>が主流になるだろうが、九州縦断に主眼を置いて<元自然歩道>であっても出来るだけトレイルを忠実に歩きたい。
 現地迄の交通機関は前回と同じくフエリーを利用する。経費節減と道中ノンビリ出来るので長距離歩きのバック・パッカー向きだ。船上での20数時間は非日常生活にはいるための心の準備と思える。
 そんな思惑をしながら22日夕方、川崎港から宮崎・日向港に向かった。
 
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



  2 行動の記録   概略総距離480Km ― 総行動152時間 (実績値)
 ニ等船室は70畳程の柔道場を思わせるスペースに10数名の乗船客が各自適当に毛布を広げてゴロ寝する。
 学生風の青年が「私も250ccバイクで九州を廻り、屋久島にも行くつもり」と話かけて来た。お互いにテント泊の苦労を語りあう。

 
第1日目 4月23日(天気 曇り):日向港から牧水公園バス停
                        (距離0Km) 
 日向市内では下校の高校生で満員のバスも、集落毎に一人二人と下車して牧水公園バス停ではガラガラになった。今夜は雨の予報で初日から「濡れネズミ」は避けたいので屋根のある所にテントを設営したい。
 幸い二階建ての牧水記念館の一階が駐車場になっている。閉館時間で車もなく駐車場の隅にテント設営。


 
第2日目 4月24日(天気 曇り後雨):牧水公園から田代・塚原発電所
                           (距離20Km)行動9時間30分。
 気になる天気は<午後から雨>の予報だ。雨が降る前にテント地に着きたい。しかし、歩き始めて1時間ほどで本降りとなり「初日から雨か・・」とウンザリ。
 視界のない霧道を珍神山(ウズガミヤマ)へ標高差700mの登り。変哲のない山頂を越えると林道に出た。林道は幾つも尾根を巻きクネクネと続き、途中で右からの古い林道を下降するのだが、これを見逃して2km直進してこの林道は消え慌てて引き返す。

 尾沢、横八と十数軒の集落を通り過ぎて、再び標高差300mの山道の登りになる。ここを過ぎてテント地の大斗の滝へ下るのだが、大斗の滝への下り付近で又道標のない林道につかまり、そのまま下りトレイルから外れ<峰>と云う集落に出た。
 初日で<山カン?>が効かずに何度も間違えた一日だった。ともかく方向は同じだから明日トレイルに出ることにしよう。


 
第3日目 4月25日(天気 曇り):塚原発電所から宇納間・西野々農公園
                        (距離19Km)行動6時間30分。
 耳川沿いに県道を4km進み坂本と云う集落でトレイルと合流。橋を渡り立石集落から造次郎山まで6km・標高差650mの登りになる。
 標高差の割には等高線沿いの林道で歩き易い。造次郎山の山頂はアンテナが数本建ち、展望が良く幾重にも重なった山なみに「九州の山は深なあ」と感じる。

 山頂から小太ケ墓峠と云うイワクありげな峠に出て舗装道路を3kmほど下ると尾根裾に数軒の集落がある。集落の道脇は水仙やツツジの花盛りで周囲の新緑とマッチして印象的だ。更に、県道を40分程北上すると今夜のテント予定地の宇納間(ウナマ)に着いた。

 ここには火切地蔵として有名な宇納間地蔵尊がある。資料によると<本尊は奈良時代の名僧・行基の作>で一刀を彫るたびに三礼する一刀三礼の霊仏で火防、厄除けとして御利益があるそうだ。
 スーパーで食料を購入後テントに戻ると台風並みの大雨になり明け方まで降り続いた。休憩所の屋根下にテントを張ったおかげで濡れずに済み屋根の有難さに感謝する。


 
第4日目 4月26日(天気 晴):西野々農公園から山口原
                       (距離28Km)行動8時間10分。 
 今日も清水峠まで標高差800mの登りがある。天気が良いので助かるが3日連続の長い登りで足腰に軋みを感じる。行程前半の難所だから「ガマン・ガマン」と言い聞かせトレイルから外れぬよう地図と磁石で確認しながら進む。
 余裕のない体力で歩いているので「道を間違えて引き返し」が心身共に大きなダメージになる。標識の無い枝道は「要注意」だ。
 清水峠も現在はレジャーランド<ETOランド>になり大きな風車をメーンに遊戯施設に変わり自然歩道の面影はない。
 施設・駐車場の管理人に聞いても「峠はこの下になるが、道路が出来てはっきりしない・・」とのこと。車道を東方へ下り、数軒の廃家が侘しい高畑集落を過ぎて昼過ぎに山口原手前で林道脇の農道にテント設営。



 
第5日目 4月27日(天気 晴):山口原から屋形原
                       (距離22Km)行動8時間10分。 
 五瀬川沿いにJR高千穂線・細見駅まで9km程平坦な舗装道を下る。川の対岸を高千穂線が思い出したように1両の電車が通る。ガタゴトと電車の音が周囲の新緑に吸い込まれそうな雰囲気だ。
細見駅から北へ細見川に沿って上流へ向かうと、早朝散歩のオジサンに声をかけられる「健康には歩きが一番」と長生き談義をしながら10分ほど会話を楽しむ。
 九州自然歩道についても地元では殆ど関心がないようだが、それも当然で<周囲に自然いっぱい>だから遠くへ行く事もないようだ。

 黒仁田の集落では、立ち話の二人のオバアサンに挨拶をしたら「魚取りデスカ?」と聞かれた。ストックをザックに縛っていたので竿と間違えたらしい。仕事以外で山中を歩く事など思いもよらないようで怪訝な顔していた。
 唐立、尾形原と数軒の集落を通り時間も適当に過ぎたので、林道脇の杉林の平地を今夜のテント地とする。雨の心配がない時は、沢水も豊富だしテント地探しに苦労することはない。


 
第6日目 4月28日(天気 晴):屋形原から丹助キャンプ場
                       (距離29Km)行動7時間50分。 
 また今日も700mの登りになるが、それ以上に気になるのは地図に掲載されていないトレイルだ。これまでも点線のシングル・トラックが舗装道になっていたり、廃道になっていて道探しでウロウロしたので、土地感のない山路で道の迷うことは大きなダメージになる。
 晴れているのが何よりだが不十分ながら設置された<九州自然歩道>の標識を見落とさないようにしよう。確認ポイントとなる集落・大中尾、上中尾を経てこの先の八幡森まで7km程は山感?に頼って道標のない分岐路の選択を繰り返す。

 八幡森の集落から生活路が南下して高千穂線沿いの県道に合流している。ここから丹助山への登山道として山道も整備されていたので、迷うことなく丹助キャンプ場に着いた。
 連休を利用して数名の登山者がキャンプ場にいたが泊まる者はいないようで夕方にはいなくなった。多分6km下った日之影温泉に泊まるのだろう。


 
第7日目 4月29日(天気 晴):丹助キャンプ場から高千穂町YH
                       (距離19Km)行動7時間20分。 
 入山して1週間が過ぎた。今夜はテントから開放されてフトンで寝れると思うと元気が湧く。明日の墓参のために今夜と明日夜は高千穂町のユースホステルに予約をいれておいたので楽しみだ。又食料を5kg弱デポで宿へ送っていたので荷物が軽く済んだのは助かった。明日は天気も下り坂らしいので休養日としては最適だ。

 キャンプ場を下り切ると谷間の高千穂線・日之影駅に着く。温泉が駅内に設置されており湯量も豊富らしいので入浴したい気持ちも湧いたが、先が長いので諦めてザック担ぎ上野峠を目指す。
 上野峠を越えると神話の里「高千穂・天の岩戸」の町並みが一望出来る。岩戸川と五箇川が高千穂町で合流して五瀬川となり宮崎平野を潤している。合流付近は深い渓谷で阿蘇山の噴火による火口岩の侵食で出来たと云う。
 多くの伝説を生んだ渓谷は東西7kmも続き断崖の平均高さは80m(最高100m)とか、渓谷にかかる橋からの景観は素晴らしい。この地に限らずトレイル全般に伺えることは、縄文・弥生・古墳時代と続く遠大な人類の歴史を感じる。

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