深海生物ファイル

 

 2005年11月24日発売予定

 (株)ネコ・パブリッシング

 1700円(税込み)

 カラー写真 pp71 / 解説・モノクロイラスト pp131

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 概要:

 1998年に発売された「深海生物図鑑」 同文書院 に続く深海生物ものの第2段です。前回にはなかった深海生物の生態写真、標本写真を70数ページにわたって掲載しました。それらの写真は海洋研究開発機構(JAMSTEC)をメインに、水産総合研究センター(JAMARC of FRA )、新江ノ島水族館、鳥羽水族館、鳥取県立博物館、マリンワールド海の中道、さらに研究者の皆様から許可をいただいて使わせてもらったものです。

 非常に繊細なクラゲ、生きているミツマタヤリウオの画像、レアものな深海におけるラブカの生態写真やチョウチンアンコウの標本写真などを見ることができます。

 個人的には子供時代に「発光生物の話」 羽根田弥太 1972 北隆館 で初めて眼にした、生きたチョウチンアンコウ、当時、江ノ島水族館に持ち込まれて撮影された写真を今回の本で掲載できたのはちょっとした喜びでした。当時、撮影された写真はいい写りであるとは少し言いにくいかもしれませんが、発光器の様子が観察できる貴重なものです。

 それにしても1967年に鎌倉の海岸に漂着した個体の生態写真を直に見れたこと。そしてその標本の現在の様子を取材の過程で実際に眼で見れたことはとても嬉しかったですね。

 

 生物の深度分布:

 さて、カラー写真に続くp97~227までは深海のおおまかな深度と動物相の変化に基づいた区分、区分ごとの代表的な動物を北村が描いたモノクロイラストと解説で説明しました。カラー写真にページを割り当てた分、解説ページに制限が生じてしまいましたが、代表的な深海生物は網羅しています。

 若干、棲息している主な深度とは言いがたいページで紹介されている動物もありますが、それらは章ごとのページ数と紹介される生物の数の片寄りをある程度ならすために異動してもらったものです。例えば1000メートルで紹介されているトウジンはむしろ700メートルとかそのあたりの水深に主に分布する魚です。もっとも生物ですから分布には幅があります。海の生物はある水深に主に分布しますが、概して数は少なくなるものの上下に幅広く(その程度は生物によって違いますが)棲んでいます。

 まあトウジンも数は少ないらしいけれども1000メートルにいないというわけではないらしい・・・・。

 またユメナマコのように、カラーページに使われた画像の撮影深度は約1000メートルなのに、解説イラストと説明自体は3000~6000メートルの章でされている。このような場合もあります。ユメナマコは水深数千メートルに主にすむ動物ですが深海の上下にとても幅広く分布する生き物で、特に駿河湾ではかなり浅い水深(といっても1000メートルぐらいですけど)にあらわれます。

 こういった例があるように本としての体裁と、スペックとして掲載された情報との間に多少の”ブレ”がありますが、これは、情報を分かりやすく整理整頓したいという図鑑としての要求と、体系化するにはあいまいな部分がどうしてもでてくる生物というものの性質が衝突した結果である、そう思って御理解いただけたら幸いです。

 

 補足説明:

 今回は系統とか進化の話とか、それこそ科学な意味でいうところの”体系”の話がほとんど出てきません。写真の脇に記した分類体系も系統解析を反映しているものと、そうでないものとが混在しています。今回は進化や系統の話がメインの書籍ではないので、こうした事柄に関してはおよそ便宜的な記述にとどめました。

 逆にいうと”分かりやすい”本になったように思えます。弱ったことに北村は物書きとしてはもっとも重大な

 ”皆が望んでいる分かりやすい文章”

 (注:分かりやすいというのは正確であるのとは意味が違う)

というものがあんまりよく理解できないか/予想できないのですが。とはいえ、今回の本は網羅的なのでかなり読みやすいでしょう。文章の書き方も編集の方針で少し書き換えたので、いつもとはいささかおもむきの違うものになっていますが、逆にすんなり読めるかもしれません。

 ただ、本来の文章をかなり切り詰めた部分があるので説明がやや唐突な箇所があるように思えます。また、例えば178~179ページの部分のように完全に北村の責任で文章が難解になっている箇所もあります。あのページは

 この水深にはソコダラに似た魚が他にもいる。実際に調査船の窓から見ると彼らは良く似ている。いずれも長くて細い尾を持ち、場合によっては鼻先がシャベル状になっている。生活の仕方もある程度同じだ。だが彼らギンザメとトカゲギスはソコダラではない、以下ウンヌン・・・・

 こんな感じにするのが望ましかったのかもしれませんね^^;)。

 

 意見とか今後の展望とか:

 知人の1人は今回の北村のイラストの背景が白抜きであることにしごく御立腹。彼にいわせると

”深海生物の魅力は暗黒のなかにどよんといること”

なのに白抜きでは必要以上にさわやかすぎる、およそこのような意見。

 まあ確かにそうでしょう。逆にいうと前の深海生物図鑑のイラストは反対に怪しさ大爆発だったわけですが、おかげであの本は書店によってはサブカルチャーやらアングラ18禁文化を扱った本棚に置かれたこともありました。北村としてはそういうのは好きですが、今回は残念ながらそういう企画ではありません^^)。まあ次回に期待しましょう。

 また北村自身としても、今回はそれほど詳しい事柄に踏み込んで書くことができませんでした。写真とイラスト、解説ページと3拍子そろって網羅的な話を書くとさすがにそうはいきません。どれかをなにかしら削らなければいけない。逆に言えば、もしそうしていたら今回のような本の体裁にはならなかったでしょう。また、今回は使うことを見合わせた興味深い写真や画像もあります。

 そういうわけで次回の機会があればもう少し踏み込んだ、別のテイストのイラストを用いた本を作りたいですね。ともあれ、今回の本は今回の本でしかできない体裁になっています。

 でもなんだかんだいって今回の深海生物ファイルにおいても系統解析や、その方法論を踏まえたラブカの系統的な位置の現代的な評価。採集、標本化が困難な生物をどう保存、同定、分類するのかという話題も解説ページに盛り込んでいます^^)。

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