Mars

火星

公転周期:686.98日

軌道長半径:1.524天文単位

赤道半径:3396km

質量:地球の0.1074倍

密度:3.93

自転周期:1.026日

 

ここでは2018年、大接近時の火星を紹介します

2018年は火星の大接近で、最接近は7月31日の予報。以下は5月15日から5月29日までの火星と、そのスケッチ。倍率は150倍。

 

 上段は左から5月15、16、16、20、22日の火星。主に大シルチス(SYRTIS MAJOR)とヘラス盆地(HELAS)が見えています。方角は左が火星の西で、上が火星の南極。

 下段は左から5月25、27、29、29日の火星。主にキンメリア人の海(CIMMERIUM)、シレーンの海(SIRENUM)が見えています。

 以下は6月2日から8日の火星。倍率は前半が150倍、後半は300倍とそれ以上。後半はダストストーム(dust storm)が発生しています。

 

 上段は左から6月の2、2、3、3日の火星。それぞれ1時ごろ、東から昇り始めた高度の低い火星と、3時ごろ、南中するぐらいの夜明けの火星を描いたもの。火星は画面では左方向に自転しているので、2日の1時に左に見えていた太陽湖(SOLIS)が、2日の3時だと見えなくなり、シレーンの海(SIRENUM)のみが見えるようになります。

 下段は左から、6月4、4、5、8、8日の火星を描いたもの。4日は1時と3時のスケッチ、5日は3時のみ、8日は1時と3時のスケッチがあります。いずれも太陽湖(SOLIS)、シレーンの海(SIRENUM)が見えています。注目したいのは5日のスケッチ、左下にある円を三つ重ねたような明るい模様です。雲にしては白くないなあと思っていましたが、後でダストストーム(dust strom)、つまり砂嵐が発生したようだ、というニュースが流れてきました。

 続く6月8日、梅雨前線が列島の南に下がって少し晴れ間が見える中、眺める火星のダストストームはより拡大したようです。太陽湖(SOLIS)の左にオーロラ湾(AURORAE)が見えています。南にはぼんやりと、多分、ガンジス運河(GANGES)が見えていますが、その左にあるべきアキダリアの海(ACIDALIUM)が見当たりません。広がるのは火星の赤い大地よりも少し明るくし、そしてやや黄色を帯びた領域だけ。かなりの部分がダストストームに覆われたようです。

 以下は9日から19日にかけてダストストームが拡大、そして少しずつ薄らいできた様子

 上段左から9日、9日、、14日、19日、そして下段が19日。

 上段左二つ、9日の2:00、2:50のスケッチ。太陽湖の左下にあるダストストームはさほど拡大したようには見えません。上(火星の方位でいうと南にやや伸びたようにも見えますが、これはこの部分が火星の自転で見えるようになっただけかもしれません。

上段左から三つ目は6月14日のスケッチ。時刻は0:00〜0:30。9日以後から梅雨入りしてなかなか観測できず、5日間を挟んで6月14日となりました。ダストストームは拡大し、火星は見えている面、全体がほぼ一様に黄色。極冠が白く見えるのと、極冠の下がやや暗く見えるぐらい。暗いのはエリスラムの海(ERYTHRAEUM)かもしれません。極冠も白い輝きが薄れてくすみ、南極にまでダストストームが流れ込んだことが分かります。

 これは下半球(北半球)のダストストームが上半球(南半球)にまで流れ込んだということですが、ここから火星の気象や風の流れが地球とは随分違うことが見て取れます。地球では北半球の台風が南半球にひょこひょこ出かけたりはしません。

 *2018年6月25日追記:手持ちの資料「火星」宮本正太郎 s53 東海大学出版会、によると、火星の大気は春の間は地球のような循環(東西に空気が流れる)をしますが、夏になるとこれが崩れて、極からゆっくりと赤道へ空気が流れるそうです。火星は大気が薄く、夏の南半球では、赤道よりも南極の方がより多くの熱を受け取ります。極から赤道へ大気の大きな循環が起こるのはこのため。ですから、夏の南極冠周辺で嵐が発生すると、それがずるずると赤道まで動いて、そのまま北半球に流れ込むということが起こります。ところが今年2018年の嵐は秋分を過ぎた北半球で発生して、それが逆に南半球になだれ込んできました。先の資料によると、火星は春の間は地球に似た循環、夏になるとそれが崩れて、極から赤道への大きな循環に変わる。そしてこの切り替わりの途中で大気の流れが淀むとあります。その時期はLsが180度プラス20から40度までの間だそうで、今年の場合、地球時間で言うと5月22日から7月31日。ちょうど今ですね。この理解で今回の嵐を解釈すると、秋分の日が過ぎた北半球で発生した嵐が、大気がよどんでいる中、そのまま南半球にまでなだれ込んだ、ということになるでしょう。

*6月26日さらに追記:大きな循環がなくなる時の風のシミュレーションを見ると、今回のストームの拡大の様子と整合するようにも思えました。特に低い場所の風を考えると腑に落ちるように思えますがどうなのか。なお今年の夏型の循環は地球時間の7月末以降に始まるようです。

 

 上段右は19日の1:30。火星は相変わらず黄色一色ですが、極冠は前よりも白く、模様が見える部分もあります。砂嵐が薄まった地域があるらしい。見えている模様は日時の経過からすると、多分、サバ人の湾(SABAEUS)とその周辺、下にある特に黒く見える点は、イスメヌスの湖(ISMENIUS)...かと最初思っていましたが、考え直せば北緯40度にあるイスメヌスの湖がこの位置に見えてくるとは思えない。位置が北緯20度ぐらい、さらに非常に暗いことから考えると大シルチスの一番下(方位で言うと北端)のようです。そこが見えているからには、大シルチスの北端ではダストストームが薄くなっているらしい。一方、サバ人の湾の左側や、向かって右下にあるアキダリアの海(ACHDALIUM)は見えません。この近辺はダストストームが濃いようです。

 下段左は19日の3:00〜3:30。模様はほとんど見えません。この面はほぼ全面、濃いダストストームに覆われているようです。1:30に見えていた大シルチスの下端(北端)は夕方に発生するような雲に隠されたのかもしれません。かすかに模様が見えますがさっぱりわからない。当日の火星はその縁が奇妙に明るくて、極冠よりも白く見えました。*なお、極冠自体は14日よりもはっきり見えてはいます。極冠ではストームが薄まったのかもしれません。あと、火星の色が黄色というよりもピンク色になっています。

 *最初、イスメヌスの湖かな? と思っていた暗点が、どうも違うと思ったので、火星の概略図をスケッチ右下に二つ描きこんで、20日に再アップしています。下段左二つの左は、5月16日 3:00の火星の概略図。当日は大シルチスが見えていて、火星図から北緯20度、赤道、南緯20度のだいたいの位置がわかります。下段右はそれに合わせて19日の概略図を描きなおしたもので、イスメヌスの湖かな? と思った暗点が北緯20度ぐらいにあることが分かります。これは大シルチスの下端(北端)にあたる緯度なので、この暗点は大シルチスの一部が見えていると考えるべきなんでしょう。イスメヌスの湖は、もし見えるのなら火星の下の縁近くにくるはずです。

 6月22日 1:30と3:00の火星。1:30、昇り始めの火星は地平線に近いせいか妙に赤く見えましたが、昇り終えて南中するとピンク色に輝き始めました。黄色というよりはピンク。極冠は先日、19日よりくすんでみえます。砂嵐の濃い部分がいったり来たりしているのかもしれません。

 画面下に見えている濃い模様は多分、大シルチスの北端。南極冠の近くに、南北にうっすらした影が見えますが、ここはヘラス盆地(HELLAS)の縁のあたりらしい。ここではストームが薄まってきたようです。なお、周囲がストームで明るくなったせいでしょうか? ヘラス盆地があってしかるべき場所がいつもの白ではなく、暗い斑点があるように見えます。

 なお、大シルチスの北端やその周辺が見える、ヘラス盆地の縁が見える。火星の高低図を参考にすると、今、ストームが薄まって模様が見えてきている以上の場所は標高が高い地域で、ストームが濃い部分は低い地域であるように思えます。

 

 6月23日 1:00と1:45の火星。梅雨前線が南に下がって晴れてはいるけど、湿度の多く、後半は薄雲がかかった夜です。極冠がよく見えないから、砂嵐がかかっていることがうかがえます。極冠の半分がストームに覆われているという情報もあり、見る時刻や日時によって極冠がはっきり見えたり、見えなかったりするのはそのせいかもしれません。この日も時刻が過ぎるにつれて、極冠がよく見えるようになりました。

 火星はほぼ真っ黄色。それでもかすかに模様が見えています。1:00に見えていたのはティレニウムの海(TYRRHENUM)でしょうか? この辺りのストームも薄まっているらしい。時間が経過すると画面右から大シルチスの下端(北端)が現れました。1:45のスケッチがそれ。ヘラス(HELLAS)の左の縁が見えており、大シルチスからヘラスの縁が、さらに晴れてきたことが分かります。

 

 6月25日の火星で、左から1:00、2:30、4:00のスケッチ。三つの時間の姿を描いたので、解説線画の描き方が変則的です。気流は悪く、火星はほぼ黄色い固まりで、極冠もよく見えません。最初はほとんど目につかず、少し目につくようになったら極冠が左右に分かれているように感じたり、極冠の位置が右(方位で言うと火星の西側)に偏っているように見えたりしました。火星の南極冠は現在、半分がストームに覆われているそうなので、そのせいなのでしょう。極冠の位置がずれているように見えたり、極冠の脇に明るい領域(ストームの濃い部分?)があったり、比較的明るいヘラス(HELLAS)がこちらを向いたりするので、火星の見た目はなんとも奇妙。明暗のまだらがある赤い姿は、テントウムシの背中を覗いているような趣があります。

 気流は悪いですが、そこそこ天気に恵まれ、4:00まで観測したところ、先日は見えなかったヘラス(HELLAS)の右側、ヘレスポントス(HELLESPONTUS)が確認できました。大シルチスとヘラス盆地周辺は全般的に晴れて来たことが確認できます。一方、左隣に続くティレニウムの海(TYRRHENUM)、そしてそこより東はさっぱりわからないので、ここら辺はまだまだストームが濃い様子。

 6月26日4:00の火星。流れる雲が明け方に消え始め、4:00から4:30、青くなっていく空で見た火星です。気流はかなり良い方です。大シルチス(SYRTIS)、ヘラス(HELLAS)周辺の模様が見えており、この近辺はおおむね晴れた感じ。とはいえ、砂がまっているせいか、模様は明瞭には見えません。また、南極冠の左半分がストームに覆われているためでしょう、あいかわらず極冠がずれているように見えます。

 周辺がストームで輝いているせいか、ヘラスは通常時の明るい姿には見えません。上半分(南半分)こそやや明るいですが、下半分(北半分)は暗い模様や斑点が広がっているように見えます。中央にあるのはゼア湖(ZEA)かもしれませんが、はっきりしません。ヘラスの右を縁取るヘレスポントス海峡(HELLESPONTUS)は上(南)がかなりはっきり黒く見えており、極冠を縁取るようです。ヘラスの左を囲むアドリア海(HADRIACUM)も、真ん中が薄い以外は、おおむね見えています。とはいえ、一見するとほぼ真っ黄色な火星です。ただし、夜が開けて空が青くなるとスケッチのようなオレンジに、さらに赤鉄鉱な赤へと見た目が変わっていきました。

 

 6月29日2:00と、3:30。梅雨前線が日本海側にかかって、雲の切れ間からのぞいた火星です。南極冠はほとんど見えません。大シルチスが見える面では極冠の右側が見えて、左がストームに隠されていました。今はそのストームに極冠が隠された面をのぞいていることになっているようです。

 29日、2:00の火星は日時からすると、大シルチスから向かって90度左に進んだところを見ていると思われます。スケッチではぼんやりした斜めの影が見えています。これは、すでに同定できた大シルチスなどど比較すると、どうも南緯40度から20度にかけて伸びているらしい。おそらくキンメリア人の海(CIMMERIUM)でしょう。

 29日、3:30の火星はスケッチ中央になにか菱形の模様が見えます。菱形の向かって左の角がやや目立ちますが、これは位置からすると、どうもパムボチス湖(PAMBOTIS)のように思われます。他の部分はヘパエストス(HEPHAESTUS)、キクロプス(CYCLOPS)、そしてレテ?(LETHES)ではないでしょうか。これらの模様が見えているとすると、この地域はかなりストームが薄まったようです。

 

 7月1日、前線が日本海側へ押し上がり、雲間から見た火星です。左が1:00、右が4:00。1:00の時は極冠がかなりよく見えましたが、1:30〜2:00以降はよく見えなくなりました。空が薄雲でかすんでいたせいかもしれませんし、あるいは気流が悪くなったせいかもしれません。

 火星は相変わらず黄色。それでも模様は分かります。ただし、日時で見えるはずのものとうまく対応しません。1:00のスケッチの向かって右、南緯30度ほどのあたりに見える模様は、キンメリア人の海(CIMMERIUM)の向かって右端のように思えます。先日、29日はキンメリア人の海はかすかだけど見えていました。それを踏まえると、29日のあと、画面左の方から濃い嵐がやってきて、それでキンメリア人の海の大半が覆い隠されてしまったと解釈できます。あるいは、右から晴れ間が広がっているので、右が濃く見えて、そのせいで残りの部分が以前より見えなくなったと感じただけなのかもしれません。火星の半径は3396キロ。嵐が1日、2日でキンメリア人の海を覆ってしまうほど移動するとは思えないので、右が晴れただけ、そう考えたほうが無難なのでしょう。説明線画では暫定的にストームの濃い部分を描いていますが、これはあくまでもひとつの解釈です。なお、以上の説明線画ではここはパムボチス湖(PANBOTIS)じゃないか? と印をつけていますが、この同定は怪しいかもしれません。

 

 7月2日の火星。太平洋の高気圧がゆっくりと張り出して前線が日本海へ遠ざかった夜。ひさしぶりに朝まで快晴。しかし火星は真っ黄色。大シルチスの面はかなり晴れてきていましたが、こちらの面はまだ砂嵐が激しいらしい。300倍でじーっと眺めていると、時々、気流の良い時に何か見えるが、それもよく分からない。左が0:30で、右が2:00。時間が経過すると極冠がよく見えなくなりました。

 説明線画の緯度・経度は大シルチスの見え方や日時から適当に割り当てたもので、厳密なものではありません。計算方法もあるけど省略。とはいえ、最低限度の目安にはなるでしょう。左0:30の火星は、中央の経度が160度ぐらい。見えている中央三つ並びの斑点のうち、左の二つはシレーンの海(SIRENUM)かもしれません。

 右2:00の火星は中央の経度が180度ぐらい。三つ並びの反転がありますが、右のものはキンメリア人の海(CIMMERIUM)の右端のように思えます。仮にこの同定が正しい場合、この地域ではまだ砂嵐が非常に濃いこと、しかし嵐が途切れ途切れになっているらしいことが見てとれます。

 

 7月3日、太平洋から張り出した高気圧に覆われ、前線は北海道に押し上がり、台風が九州を通過しながら高気圧の縁を日本海目指してめぐるように動き、雲がそこへ流れ込む夜でした。天気はおおむね晴れ。

 左は0:00の火星、中央の経度は推測するに150度ぐらい。見える模様はなんともあやふやで、一見すると薄まって大きくなった太陽湖のよう。しかし日時からするとシレーンの海(SIRENUM)とその近辺を見ているはず。多分、中央の薄い模様と右の薄い斑点が断片的に見えるシレーンの海のように思われます。

 右は3:45の火星で中央の経度は多分、200度ぐらい。三つの暗い斑点が並びますが、一番左はどうもシレーンの海の右端ではないかと思われます。つまり、0:00の火星に見えていた三つの斑点のうち、一番右側のものに対応します。火星の自転にしたがって右から左へ移動した、ということです。そして3:45の火星に見える三つの斑点のうち、中央と右はどうやらキンメリア人の海(CIMMERIUM)の海らしい。以上の同定が正しい場合、この面では断片的に晴れ間が広がって、シレーンの海やキンメリア人の海が飛び飛びに見え始めたということでしょう。

 さて、そうだとするとこれはかなり奇妙な話です。まず、晴れ間が経度にしてだいたい30度置きに出現している。さらに晴れ間は下から上(北から南)へ広がっているらしい。つまり東西に対して規則正しく、南北の気流の動きが現れる。これは地球における東西に動く気流の蛇行を思わせます。しかし、今の火星、南半球にそんな蛇行を生むような東西の流れがあるようには見えません。これは一体なんでしょうか? 本当に蛇行しているのか、それともたまたまそう見えているだけなのか、あるいはそもそも誤同定による私の勘違いでしかないのか。追って確認したいところ。

 

 台風が過ぎたあと、南から湿った空気が流れ込んで梅雨前線が急激に活発化。延々と豪雨が降り続いて西日本を中心に大きな被害を出し、ようやく晴れた8日深夜から9日朝にかけての火星。気流が悪いのもさることながら、風が強く、300倍だと視野がかなりゆれて観察しにくい夜でした。

 左が9日1:00のスケッチ。中央の経度は日時から推定すると100度ぐらい。そこにある暗い斑点は、南緯40から30度近辺にあって、どうも太陽湖(SOLIS)ではないかと思えます。中心なのか縁辺部なのか...ともあれ、太陽湖だとするとこのあたりは相当砂嵐が激しいのでしょう。周囲の模様がほとんど見えません。また、火星の向かって右上が周囲より明るく、黄色味が強いままです。ここは嵐が特に濃い状態のように思えます。

 右は3:00の火星。中央の経度は日時からすると130度ぐらい。上半球(南半球)の中央に横に伸びている帯のようなものは多分、シレーンの海(SIRENUM)。ただし、画面中央や右、経度にすると130度、160度のあたりが濃く見えるので、シレーンの海は波打った嵐に隠されているように思えます。シレーンの海の上が明るい黄色であることも踏まえて考えると、7月3日と同様、南極冠周辺には波打った砂嵐がある感じ。

 

 7月10日 3:00の火星。昼間の高熱で夕方から積乱雲と雨、そうして深夜に少しだけ晴れ間があってそこで見えたもの。雨で温度差が流されでもしたのか気流は非常に良い状態。しかし晴れ間からのスケッチなので時間がなく、細かいところまではスケッチしきれていません。中央の経度は多分、120度ぐらい。左側の暗斑は太陽湖(SOLIS)かその縁辺部。右の斑点はおそらくシレーンの海(SIRENUM)の左端(東端)。間の火星中央に見えるのはよくわかりません。南極冠周辺は黄色く、明るく、濃いストームがあることがうかがえます。

 

 7月11日の火星。日差しが強く、夕方には積乱雲が発達する日々で、夜になるとかなり低い高度に雲がたちこめる。そんな合間をぬってスケッチしたもので、左は2:00の火星。日時からすると中央の経度はおよそ100度。火星の真ん中やや上に見えるのは太陽湖(SOLIS)のはずなんですが、よくわからない。説明線画では左の斑点を太陽湖(SOLIS)としています。ただ、左の斑点と中央の斑点の間にストームの濃い部分が入り込んで、太陽湖の中央が分断されているだけかもしれません。

 さて、太陽湖が分断されていることや、その近辺の明るい黄色味の強い部分がうねっていることを踏まえると、ここらへんのストームは下の部分(方位で言うと北)がうねっているようです。蛇行なのかたまたまなのか。ただ、たまたまにしてはかなり規則的です。一方、画面左、経度にして70度を越えたところで、黄色い部分が下にがくっと折れているように見えます。模様の加減でそう見えているだけなのか、それとも砂嵐が本当にここで折れているのか。確認したいところ。

 そして右は3:30の火星。中央の経度は多分120度。スケッチの時刻は3:30。シレーンの海(SIRENUM)らしきものと極冠周辺の暗い模様がつながっているように見えました。場所は経度150度ぐらい。前日10日のスケッチも正面の経度120度ですが、このつながりは確認できていません。これを踏まえると、だんだんこのあたりが晴れてきたようです。それと、2:00にはくすんでいるとは言えはっきり見えていた極冠が、3:30になると小さく、明るく輝くように見えました。どうも極冠の向かって右側が砂嵐に覆われておらず、それが輝いてくすんだ左の極冠を見えにくくしているらしい。右側が顕著に明るいのは3日の時点では経度200度近辺でした。それが120度にまでやってきたのですから、南極もだんだん晴れ間が拡大していると解釈できます(あるいは砂嵐が移動している)。

 

 前線が東西に千切れて北上して、北海道に冷害をもたらしつつある7月13日23:30から、日付変わって14日までの火星。左は日付が変わる前、13日深夜23:30の火星で、なにやら太陽湖(SOLIS)らしきものが南極周辺に平行四辺形に見えます。おおー嵐が晴れてきた、それにしても太陽湖が縮んだ? と思っていたら、実はこれ、太陽湖の左上半分でした。日時から考えて中央の経度は50度。太陽湖は上半分の右側、そして下半分が砂嵐に完全に隠されています。太陽湖の実際の中心部は平行四辺形の右下の角のところ。

 右は日付変わって14日1:00の火星。中央の経度は70度ぐらい。太陽湖の左上半分がこちらを向いています。火星の中央に暗く東西に伸びる模様がありますが、ここはアガトダエモン運河(AGATHODAEMON)やその周辺のように思えます。一方、その上の部分が明るい黄色の帯に見えている。アガトダエモン運河やその周辺は火星の大峡谷、マリネリス峡谷。今、マリネリス峡谷は砂嵐が流れ込んで真っ黄色になっているそうなので、実はこの明るい部分こそアガトダエモン運河なのかもしれません。

 

 以上に引き続き2018年7月14日の火星。この日はカラースケッチが2枚で火星が4つ。左が14日3:00の火星。中央の経度は95度で、ちょうど太陽湖(SOLIS)の中央がこちらを向いているところ。しかし下半分と上右半分が隠されて、太陽湖の姿はさっぱりわかりません。中央やや右にある暗い斑点は太陽湖を縁取るフォエニキスの湖(PHOENICIS)のように思われます。奇妙なのは模様の隠され具合からすると、嵐が濃い領域、薄い領域が南北東西に互い違いに現れていることです。これ一体、どんな気象現象でしょうか。

 右は14日4:00の火星。中央の経度は110度ぐらい。そしてちょうど中央にフォエニキスの湖(PHOENICIS)が来たところ。フォエニキスの上(方位で言うと南)は赤みがあって晴れているように見えますが、実際には模様があるはず。つまりまだかなり嵐が濃いらしい。前の3:00の時点ではこの領域に東西に伸びる黄色い帯が見えたので、ここが特に濃い部分かもしれません。なお、この時刻になると南極冠の右の縁が明るく輝き始めました。

 

 曇りの予報の通り、低い高度に雲は現れたけども、幸いほぼ晴れであった15日の火星。左は2:00の火星で、中央の経度は60度ぐらい。黄色い裂け目が火星を斜めに走っているように見えます。嵐が充満しているマリネリス峡谷や、その周辺かもしれません。ただ緯度が微妙に実際と違うように見えるのが気になるところ。スケッチの問題なのか、それとも緯度、経度の見当に問題があるのか。ともあれ、嵐の様子や位置は前日14日と同じで、地球のような東西の気流があるとか、そういう様子はうかがえません。

 右は4:00の火星。夜明け前、すでに西に傾き高度は低いものの最初は気流がまあまあで、かなり細かい模様が確認できた火星。中央の経度は90度。下半球(北半球)には上下斜めに黒い帯が走り、気流が良くなると、ところどころに斑点があるように見えました。どうもタルシス高原の巨大火山、アルシア(ARSIA)、パヴォニス(PAVONIS)、アスクラエウス(ASCRAEUS)のように思えます。

 

 7月16日の火星。空はもやがあるらしく、いつもより赤く鈍く輝く火星です。それでも望遠鏡で見ればあいかわらず真っ黄色。模様はなんとも複雑で、左は1:00の火星。中央の経度は40度ぐらい。7月13日23:30のものとほぼ同じ場所を見ているのですが、見た目がまるで違う。2日程度の間に嵐がかなり晴れてきたことが分かります。一方、妙に黄色い部分がある。スケッチ時はこれは黄色を強調しすぎだろうか? とも思いましたが、見えるはずの模様と照らし合わせると、どうも砂嵐が非常に濃い領域で良いようです。晴れるに従って、嵐の濃い領域が各地に残存するようになってきました。

 右は2:30の火星。中央の経度は60度ぐらい。どうもオーロラ湾(AURORAE)の周辺が正面に来ているらしい。模様の見え方からすると、あちこちに濃い砂嵐が入り込んで、オーロラ湾(AURORAE)やマルガリータ湾(MARGARITIFER)を分断している模様。

 注目したいのは中央やや右下に入っている明るくて狭い黄色い領域です。途中で折れ曲がって東西に走っていますが、このあたりがアガトダエモン運河(AGATHODAEMON)、つまり砂嵐が充満したマリネリス峡谷であるように思えます。

 

7月17日深夜と、日付変わって18日の火星。火星が昇る時刻がだんだんと早まり、スケッチ開始の時刻が早まって、日付をまたぐようになってきました。気象衛星で見ると晴れなのですが、夜になると高度の低い場所に雲がわいて、気流に従ってゆらゆら揺れるやっかいな夜が続きます。

 左は17日23:00の火星。極冠に、経度にして20度のあたりに明るい領域があります。ここは嵐がかなり薄いらしい。スケッチ中央の経度はたぶん350度ぐらい。サバ人の湾(SABAEUS)が見えるはずですが、さっぱり分かりません。火星図と照らし合わせると中央左右にあるシミみたいなものが、どうもそうである様子。この経度の領域はまだまだ砂嵐が濃いようです。一方、画面左の方は大シルチスとヘラス盆地。大シルチス近辺は6月26日の時点でヘレスポントスがかすかに見えるぐらい晴れていました。スケッチの画面左上に見えるシミがヘレスポントスかもしれません。これから確認することですが、多分、大シルチス近辺は晴れのままではないでしょうか。そうだとすると、現在の火星上半球(南半球)には東西に動くような気流がまるでないことがうかがえます。

 ちなみに左のスケッチ下、緯度にして北緯20度あたりに東西に伸びる黄色い帯が見えるように思えました。この辺り、そんな地形があるわけでもないので、これは一体なんでしょう? 下半球(北半球)には東西の気流がある、ということなのか?

 右は18日1:30の火星。中央の経度は多分、20度ぐらい。この面は暗斑と明るい領域がごちゃごちゃしています。ただ嵐が発達しているというよりは、嵐が収まって、まだまだ濃い領域が目立ってきていると考えるべきかもしれません。16日にこことかなり近い領域を見ていますが、それよりは模様がはっきりしてきた感じ。

 ちなみに16日1:00のスケッチは中央の経度が40度。これと比べると模様の同定にやや違いがあります。16日にマルガリータ湾の左端としたものは、サバ人の湾の右端かもしれません。なお、18日左のスケッチ右端に明るくて横に伸びた点がありますが、これはマリネリス峡谷のように思えます。

 

 7月19日の火星。猛暑である反面、夜になると低い高度に薄い雲がかかる毎日。当夜も同様で、さらに気流が悪い。星像のぶれが激しく、火星がしばしば二重に見える状況。左は日付が変わる前、18日23:30の火星。模様は見えるが淡く、それになにかこう複雑な有様で、なおかつ気流のせいでなんともよく分からない。日時からすると経度にして350度あたりを見ているらしい。中央で東西に伸びる、やや濃い帯状の模様はサバ人の海(SABAEUS)かもしれません。砂嵐はかなり薄くなっているようですが、この近辺の模様はまだ分かりかねる状況です

 右は19日2:30の火星。中央の経度は35度ぐらい。前日18日1:30の火星とほぼ同じ場所を見ています。模様の様子や、黄色い箇所(嵐が強い場所)からすると、18日よりさらに晴れが広がったようです。面白いのは極冠の中央の明るい晴れ間と、そのすぐ下(方位でいうと南)にある黄色い斑点。位置からするとアルギュレ盆地(ARGYRE)のように思えます。この盆地は巨大なクレーターですが、盆地の底に砂嵐がたまって、明るい黄色に見えているのではないでしょうか。ちなみにARGYREは色々な読みがあって、アルギューレ、アルギュレ、アルギレと表記されることがあります。盆地抜きのアルギュレで検索するとゲームの架空人型機動兵器が引っかかってくるので困惑。

 

 猛暑の後の夜にかかる雲が一時晴れて見れた7月21日の火星。左は0:30のもので、中央の経度は多分345度ぐらい。サバ人の湾(SABAEUS)が見えるはずだけども、見えない。というか上半球(南半球)全体が暗い模様になっていて、サバ人の湾が判別できない状態。赤道付近に帯状に並んでいる暗い模様や斑点がそれなのだろうけども、明瞭ではありません。ひょっとしたら上(南)へ向かうほど砂嵐が薄く、北(下)へ向かうほど嵐が濃いのかもしれない。また、サバ人の湾の様子から見るに、濃い部分が何箇所かあって、模様がやや分断されているように思えます。

 右は1:30の火星。基本的には左とあまり変わりません。サバ人の海はそれらしきものが帯状に見えますが、それよりむしろ、中央から右上にあがる帯の方が強くて濃い。やはりサバ人の海は嵐がひどくて薄く見える。右側、マルガリータ湾(MARGARITIFER)の近辺は嵐が薄くて濃く見える。こんな感じでしょうか。極冠近くにあるアルギュレ盆地(ARGYRE)はやや薄くなったものの、やはり砂嵐が残っている模様

 後、気になるのが、赤道付近にやや明るい帯が東西に伸びている点。単純に考えると嵐の濃い部分ですが、帯状になるのがよくわからない。すぐ上に濃い模様があるのでそう見えるだけでしょうか? やや蛇行しているようにも見えますが、実は東西の気流で伸びた嵐でしょうか? いずれにせよ下半球(北半球)は低地なせいか砂嵐がずっととどまっていて、模様が見えてきません。

 

 7月22日の火星。左は日付が変わる前、23:30の火星で中央の経度は多分320度ぐらい。極冠が小さく、くすんでおり、さらにひしゃげた感じに見えています。左上に明るい領域がありますが、ここはヘラス盆地(HELLAS)。その周囲は下が大シルチス(SYRTIS MAJOR)、上がヘレスポントス(HELLESPONTUS)です。火星の中央を東西に伸びるかすかな帯はサバ人の湾(SABAEUS)。ようやく見るだけで模様がどこかわかる程度に晴れてきました。

 とはいえ火星全体が砂煙に覆われているのは相変わらずで、極冠もくすんで白くは見えません。スケッチもコントラストを非常に強調しています。一目見ただけでは、火星はまだまだ黄色ののっぺらぼう。一方、大シルチス、サバ人の湾をなぞるように黄色い帯が見えます。これは地形の高低に沿ったものかもしれません。相対的に低い下半球(北半球)が砂煙に覆われているためなのでしょう。ただ厳密に地形に沿っているのか、そもそも暗い模様の近くなので明るく見えるだけなのか、要確認です。

 右は日付が変わって22日、2:30の火星。高度が低く、気流も悪く、詳細がつかめません。ただ中央の経度は350度。おそらく、真ん中に見えた暗い斑点はサバ人の湾の右端、アリンの爪(ARYN)でしょう。その上、サバ人の湾に並行して伸びるかすかな影はパンドラ海峡(PANDORAE)かもしれません。

 そして模様の見え具合や、明るい領域からすると、パンドラ海峡の右に大きな黄雲、その上に東西に伸びた黄雲があるように思えます。とくに東西に伸びたものは右に輝くアルギュレ盆地(ARGYRE)から伸びているようにも見えました。前のスケッチでこれらは見えていなかったのですが、見落としていたのか、それとも新しく発生した黄雲、すなわちダストストーム、砂嵐なのかは要確認。とはいえ、この面を観察するのは日時の都合上、これから厳しく困難です。

 後、北半球の高緯度(スケッチの下端)が非常に白く目立っています。高緯度の寒い地域に雲がかかっているのでしょう。しかしこれまでここまで明るくなかった。火星の砂嵐が沈静化したので、白さが際立ってきたのかもしれません。

 

 前日よりは涼しい、気温26度、湿度75%の夜。80%だと同じ26度でも汗びっしょりになるのに、75%だとまあ問題ない。比較的快適だけど、気流が悪くて、細かい様子は分かりません。左は日付が変わる直前、7月22日、23:30の火星。中央の経度は315度。ヘラス盆地(HELLAS)を取り囲むヘレスポントス(HELLESPONTUS)と大シルチス(SYRTIS MAJOR)が分かります。陰影はかなり強調しており、実際には真っ黄色の火星に陽炎のように模様が薄っすら見える状態です。それでも模様が見えるようになってきました。極冠もかなり白く見えてきたので、ずいぶん砂が薄くなった感じ。一方、ヘラス盆地は顕著に黄色いので、ここは盆地の底部に濃い砂嵐が滞留しているのでしょう。

 右は日付変わって23日、1:30の火星。中央の経度は345度ぐらい。赤道付近に東西にのびるの帯のうち、左側はサバ人の湾(SABAEUS)。中央はサバ人の湾の右端アリンの爪(ARYN)。砂嵐で電源が落ちて音信不通になったオポチュニティはこの辺りにいるはずです。模様が見えているからかなり砂嵐が薄くなったはずですが、現状では復旧の報は入っていません。アリンの爪のやや右上に斜めになった明るい領域が見えました。気流が悪いのでなんとも言えませんが、嵐の濃い部分のように思えます。基本、このあたりの嵐の状況は前日22日2:30のものと大差ないようです。モノクロスケッチしかとっていませんが、22日に見えた、アルギュレ盆地から左へ伸びる黄雲もまだ健在のように思えます。

 

 24日の火星 左は0:30の火星で、中央の経度は320度あまり。晴れがさらに進んで、サバ人の海(SABAEUS)がかなり明瞭に見えて、ここを中心に周辺の模様の詳細も分かってきました。気流が比較的よかったのも幸いしています。一方、サバ人の海に並行して上を走るはずのパンドラ海峡(PANDRAE)の右が隠れています。22日2:30のスケッチ解説で、この周辺に黄雲があるらしいと書きましたが、24日もこの黄雲は健在の模様

 右は2:30の火星。太陽の運行で2時を回ると火星は西の地平へ傾くようになっています。当然、気流は悪くなり、観察が事実上無理になってきました。しかし本日24日、この時間としては気流は良い方で、中の下といったところ。模様も比較的よく見えています。中心の経度は360度。つまり経度0。火星の中央にアリンの爪(ARYN)が見えます。パンドラ海峡(PANDRAE)は右が隠れており、ここが黄色く、明るく見えている。やはりどうもここに黄雲があるらしい。そしてこの黄雲、前より大きくなっているように思えます。黄雲の上はノア大陸(NOACHIS)です。ノア大陸は夏になるとしばしば大きな黄雲、つまりダストストームが発生します。さて、火星の南半球はこれから夏真っ盛りですが、どうなるでしょうか?

 ちなみに22日の2:30にスケッチした、南極冠に沿って伸びていた細い黄雲は見当たりませんでした。こちらは消失したのかもしれません。

 

 7月25日の火星。左は0:30のスケッチで中央の経度は330度ぐらい。サバ人の海(SABAEUS)の上にちょんと見えている黒い斑点は経度が330程度、緯度が南緯20度をやや越える。位置からすると蛇の海(SERPENTIS)のように思えますが、さてどうでしょうか? 

 右は2:00のスケッチで中央の経度は350度ぐらい。中央やや右にあるアリンの爪(ARYN)は厳密には北半球に残る砂塵に隠されている様子。サバ人の海のやや上、火星の中央に明るい箇所があります。右斜め上にのびていて、直交する筋のようなものもあります。これ、ここしばらく見えているもので、黄雲のようにも見えますが、今日はやや赤みを帯びているようにも見えました。単に明るい場所なのか、やはり黄雲なのか、判断に迷うところ。

 火星は全体的にピンク色になって来ました。晴れが進んで地表の色が見えて来たように思えます。また、北極の白い雲や、明け方、夕方の雲の白さが目立ちます。また、以前から南極冠は断片的に晴れて来ていましたが、それがさらに進んだようです。左のスケッチではどうも経度330あたりに晴れ間できたらしい。かなり白く輝いていました。気流のせいでよく分かりませんが、縁には影があるようです。右のスケッチでは経度20度より向こうに晴れ間があります。この晴れ間は以前からあったものです(例えば17日のスケッチに描いてある)。ここしばらく時間経過と共に極冠の明るさが変わることが続いていましたが、いよいよ顕著に晴れ間が広がって来たようです。

 

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