Cetus

くじら座

2014年12月22日 18:31  南中しつつあるくじら座

画面中央がほぼ南、左が東、右が西

変光星ミラはこの時、光度が9等あまり、ほぼ極小で写っていません

くじら座は大きな星座で、α(アルファ)星メンカルとβ(ベータ)星デネブカイトスの間だけを見ても、角度にして42度もあります。これは腕を伸ばして指を広げた幅二つ分ほど、オリオン座が二つすっぽり入ってしまうほどの広さです。一方で暗い星が多く、都市部の明るい夜空では星座の形がほとんど分かりません。目立つのは光度2.5等のα(アルファ)星メンカルと2等のβ(ベータ)星デネブカイトスぐらい。

メンカルは星座の東にあり、くじらの頭部を作る星です。星座が大きいだけにβ(べータ)星デネブカイトスよりも、むしろおうし座のアルデバランに近い場所にあります。夜空が暗く澄んでいればくじらの頭部である五角形に並ぶ、暗い星も見ることができますが、都市部では普通そこまで見えません。γ(ガンマ)星と、さらに暗いδ(デルタ)星がなんとか見えるくらいです。メンカルとγ星とδ星はひらがの”へ”を水平反転させたように並んでいて、見た目は少しだけおひつじ座に似ています。おひつじ座よりも南の空に、おひつじ座のパチもんのような星の並びがあったらそれはくじら座の頭です。

一方、星座の西にあって、くじらの尻尾を作るβ(ベータ)星デネブカイトスは、むしろみなみのうお座のフォーマルハウトに近い場所にあります。空が暗く澄んでいればそのやや東にある四つの星、ζ(ゼータ)、τ(タウ)、θ(シータ)、η(イータ)が、ひしゃげた台形を作るのがなんとか見えるでしょう。そこからくじら座の頭部までは何も見えない暗くて広い空間があります。つまるところ都市部においては、くじら座は尻尾と頭だけしか見えません。くじら座の首に位置する変光星ミラが極大を迎えて輝けば状況は変りますが、ミラが肉眼で見える時期はごく限られています。

なお、以上で述べたくじらの下半身を作る四つの星のうち、南東の角を作るτ(タウ)星は、わずか12光年先にある太陽系に近い恒星です。また、2012年になって惑星があるのではないかと報告されました。可能性ではありますが、少なくともそのうちの一つは、地球型生物の生存を許す条件が整っているようです。

文字を抜いた画像は以下

 

 以下は2019年10月5日。ミラが増光した状態のくじら座

 台風18号が朝鮮半島に上陸してそのまま日本海を東へ進んだ4日の深夜と、日付変わって5日の未明。台風に吹き込む南風で雲があわただしく横切る一方で、透明度は良好。市街地であるにも関わらず、みずがめ座を運行中のアフリカーノ彗星を観察。そして星座を見るとくじら座のミラが見事に輝いていたので撮影したもの。ミラはγ(ガンマ)星3・47等とほぼ同じか、やや明るい状態だったので、多分、3・3等ぐらい。

 以下はキャプションがない状態の画像。

 

Cetus ケトゥス

くじら座

所有格の場合はケチ(Ceti)

Cetusとはラテン語でクジラ、あるいは海の怪物を示す。ラテン語ではcはカ行の発音で読むので、Cetusのの読みはケトゥスとなります。一方、英語ではcをサ行で読むことがあるので、Cetusの読みはセトス。所有格のCetiは英語読みではセチとなります。τ(タウ)星のことをタウ・ケチと読んだり、あるいはタウ・セチと読んだりするのはこれが原因。

主な星は以下の通り

Menkar メンカル α(アルファ)星 2.53等 アラビア語で鼻を意味する言葉から由来するという。メンカブ(Menkab)、あるいはメカブ(Mekab)とも呼ばれる

Deneb Kaitos デネブカイトス β(ベータ)星 2.04等 アラビア語で”クジラの尾”を意味する。ディフダ(Difda)とも呼ばれる。

γ Ceti ガンマ・ケチ γ(ガンマ)星 3.47等 固有名はない α星メンカルの西にある

δ Ceti デルタ・ケチ δ(デルタ)星 4.07等 固有名はない

Baten Kaitos バンテンカイトス ζ(ゼータ)星 3.9等 アラビア語bath al-quytus ”クジラの腹”に由来する。

Dheneb デネブ η(イータ)星  3.6等

θ Ceti シータ・ケチ θ(シータ)星 3.60等 固有名はない

Deneb Kaitos Shemali デネブカイトスケマリ ι(イオタ)星 3.56等 β星と同様、デネブカイトスとも呼ばれる。

Mira ミラ ο(オミクロン)星 変光星で光度は3.5~9.3等 周期はおよそ330日。名前はラテン語のミルス(mirus)に由来し、不思議な、驚きの、を意味する。赤色超巨星で、推定される直径は太陽の400倍あまり、太陽系に据え置けば地球の軌道をも呑み込む巨大な星である。

τ Ceti タウ・ケチ くじら座タウ星 固有名はない 3.5等 距離は11.9光年 肉眼で見える星としては第7番目に近い。太陽よりもやや小さいが、太陽に似た恒星。そのため、地球外の文明が出す電波を探そうという試み、オズマ計画で観測されたことがある。結果自体は否定的で、タウ・ケチの恒星系に地球のような電波を出す文明は存在していない。2012年、この星をめぐる惑星があるらしいことが報告された**。推定される惑星の数は四つ。地球の2倍から6.6倍の質量を持つとされており、いずれもいわゆるスーパーアースということになる。また、計算上、少なくとも一つの惑星は液体の水を保てる距離をめぐっているらしい。

**Tuomiet al 2013. Signals embedded in the radial velocity nise Periodic variations in the τ Ceti velocities. Astronomy & Astrophysics 551 pp79

*くじら座の星の光度に関しては[Guidebook to the Constellations]を参考

 

 その他の天体

M77 くじら座の銀河 

 

 

参考:

「星の事典」鈴木駿太郎 恒星社

[Guidebook to the Constellations ] Patrick Moore's Practical Astronomy Series 2012

 

 

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