Mira ミラ 

ο Ceti くじら座オミクロン星 

 ミラは最初に発見された変光星で、1596年に新星として報告されました。新星とは、それまで何も見えなかった夜空の場所に、急に現れる星のことです。今だと新星(ノヴァ NOVA)という単語は白色矮星に膠着したガスが着火して増光する現象のことを意味します。ミラはその意味での新星ではなく、光度が変化する変光星です。ミラが周期的に変光を繰り返す星であることが分かったのは1638年以後のことです。ミラという固有名がつけられたのは1660年代。ミラという名前はラテン語のミルス(mirus)に由来し、不思議な、驚きの、を意味します。奇跡を意味する英語のミラクル(miracle)と語源は同じ。

 ミラの光度は平均して3.5〜9.3等まで変化します。周期は330日。しかし、変光の度合いも変光の周期にもやや不規則性があり、2等級にまで明るくなる時もあるし、明るくなっても4等級にとどまることがあります。反対に暗い場合には9.6等にまで下がる場合があり、資料によっては10.1等としているものもあります。周期は長いケースでは355日、短い場合で304日、平均すれば330日あまり。

 ミラは赤色巨星で星自体の大きさが変ることで変光が起こります。膨張して星が大きくなると光を放つ表面積自体は増えますが、温度が下がるので結果的に暗くなります。つまり膨張すると暗くなります。ただし、これだけではミラが示す6等級もの光度の変化が説明できません。以上に加えて、温度の低下によって出来た化合物の雲に星が覆われることで,より暗くなると考えられています。

 温度が低下すると星は収縮に転じますが、すると今度は温度が上がって明るくなり光度を増す。そうして再び膨張する。これを繰り返します。温度は2500度から1900度まで変わります。最低時の温度は恒星としては最も冷たい範疇に入り、推定される直径は太陽の400倍あまり。しかし、膨張した場合には500倍に達するという巨大な星で、太陽系に据え置けば地球の軌道をも呑み込むものです。

 

かなり明るく2.8等まで増光したミラ=>

 

以下は2017年12月20日、増光途中で光度4.1等のミラ

2017年12月20日 20:00のミラ 

 

連なった円は25倍の視野を示し、一番下の明るい星はδ(デルタ)星。視野はそのまま続いて中央左でうお座のα(アルファ)星アルリシャーに至ります

ミラは中央右にあって、その光度はδ星と同じ。つまり4.1等。

 

以下は2017年1月のミラ

この時も増光中で光度は5.4等

2017年1月21日 21:00 増光中のミラ

光度は多分、5.4等ぐらい 

画面上が西で、円は25倍の視野を示します

ミラはここしばらく太陽がある季節に増光していたのでスケッチのアップは前のものから3年ぶり

 

 2017年、1月21日のミラ。この季節、夜になるとくじら座は西空に傾き、尻尾から沈み始めた状態で見ています。画面上が西。ミラはくじら座69番星(69 CETI)より明らかに明るく、69番星が5.6等であることを考えると、ミラの光度は5.4等ぐらいでしょうか、あるいはもう少し明るいのかもしれません。ミラの周辺には暗い星が多く、増光した場合、光度を比較できる星を探すため広く見る必要が出てきます。

 

 

以下は2014年12月26日 光度9.6等

ほぼ極小状態です

2014年12月26日 くじら座γ (ガンマ)星からミラまでの道筋を示す

以上のスケッチは2枚を合わせたもので、連なった円は25倍の視野を示します。画面右にある星がくじら座のγ星。ミラの光度は9.2等。暗すぎて25倍では見えていません(観察したのは光害がひどい神奈川の中央部でした)。

画面は望遠鏡で見たままなので、逆さまになった状態です。画面左が西で、右が東、下が北(天頂方向)で上が南。γ(ガンマ)星からδ(デルタ)星へ、そこから75番星、そして71番星までいけば、ミラまであと少しです。

以下は50倍にして71番星から辿ったスケッチです。

ミラのすぐ隣に小さな星がありますが、これは手持ちの資料[Burnham's Celestial Handbook] vol.1によると光度が9.2等です。当日21:45のミラはこれとほぼ同じだったので光度は9.2等。ただ、じっと見ていると少しミラの方が暗いようにも思えたので、9.4等とか、そのぐらいかもしれません。参考文献に従えば、これはミラの平均的な極小とほぼ同じ明るさです。

 

 

参考:

「星の事典」鈴木駿太郎 恒星社

[Burnham's Celestial Handbooks] vol.1

 

 

 

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