具体的にはこれでいいんじゃない?。

 

ミラ:でっ、さっきの話の続きで具体的な説明してくれるのよね?。

わらし:はいはい、じゃあまずはアロサウルスを取り上げるだな。まずワニとくらべた場合、カラスとアロサウルスにはワニには見られない共通点があるのは分かるだろう?

ミラ:ああ、かかとの骨とかね。それが共有派生形質になるわけか。

わらし:うんだな、するとこうなるだよな。

___________ワニ

   |_______アロサウルス

     |_____カラス

ミラ:なるわね。

わらし:これ、仮説だよな?

ミラ:はあ、まあ仮説だわね。

わらし:これがどの程度、堅い仮説かテストするだよ。

ミラ:どうやって?

わらし:例えば新しいデーターを放り込めばいいわけさね。アロサウルスは1877年に報告されているからさっきの作った分岐図は1870年代までに集めたデーターで出てくる仮説だな。ここにもっと新しく発見されたデーターを加えるわけよ。

ミラ:この時代、ヘニング(Henning)はまだ分岐学を提案していないけど・・・・、仮の話をしているのね?。

わらし:そうそう。ここにティラノサウルスを放り込むとしよう。ティラノサウルスの距骨の高さはアロサウルスよりも高くてカラスとのより強い共通点になる。

ミラ:ようするにワニも持たず、アロサウルスも持っていない共有派生形質を持つことになるわけか。じゃあ、こうなるわけだ。

___________ワニ

   |_______アロサウルス

     |_____ティラノサウルス

       |___カラス

 

わらし:ティラノが報告されたのは1905年のことなのだよな。だとするとこの分岐図は1905年には作ることができるわけさね。

ミラ:まあ、実際には作っていないけども。そうねえ、こういう風にはなりますか。

わらし:でだな。この分岐図、さっきの分岐図とくらべて形は壊れているかね?

ミラ:変わってないわね、、、、ワニとアロサウルス、カラスの相対的な位置は変化なしね。

わらし:今度はヴェロキラプトルを加えるだよ。くらべて見ると、この動物は他の動物より、カラスとより多くの共通点を持っている。これが報告されたのは1924年。だとすると1924年のデーターではこういう分岐図が作れるはずだわさ。

_____________ワニ

   |_________アロサウルス

     |_______ティラノサウルス

       |_____ヴェロキラプトル

         |___カラス

ミラ:作れるわね。

わらし:最初の分岐図の形は壊れたかね? 例えばアロサウルスがワニの仲間になったり、カラスがワニの方に移動したりしたかな? 

 ミラ:してないね。

わらし:21世紀の現代だとこういう分岐図が描けるわけよ。

_________________________ワニ

   |_____________________コエロフィシス

      |       |__________ケラトサウルス

      |

      |__________________トルボサウルス

         |    |__________スピノサウルス

         |

         |_______________アロサウルス

           |  |__________アクロカントサウルス

           |

           |_____________コンプソグナツス

              |__________ティラノサウルス

              |__________オルニトミムス

                 |_______オヴィラプトル

                   |_____ヴェロキラプトル

                     |___始祖鳥

                     |___カラス

  参考:

 Sereno.99. The Evolution of Dinosaurus. Science Vol.284 1999 pp2137~2147

 Pisani et al. 2002 A genus-level supertree of Dinosauria. Proc.R.Soc.Lond.B pp

わらし:どうだね? 1870年代に作ることができたであろう分岐図は壊れたかね? 

ミラ:壊れていないわねえ。

わらし:少なくともこのケースの場合、新しいデーターを入れても基本的な形は変わらないわけだわさ。こういう場合、この仮説を疑ってもいいけども、採用しないなんて言う必要はないのではないかね。

ミラ:少なくとも疑いを裏付ける証拠はないわけね。

らし:新しいデーターを加えていっても壊れない仮説がある。もちろん堅い仮説だから正しいというわけではないけど、逆にいえば間違っているに違いないって考える根拠はないわけさね。

ミラ:それでも疑いたくなった人はどうするの?。

わらし:グダグダいわんと、この分岐図に十分対抗できるだけの論文を書けばいいわけよ。それが科学ってやつでしょうが。

ミラ:やれやれ、それをするには既存の仮説に十分対抗できる証拠と、確からしいアルゴリズムをもってこなくちゃいけないわけでしょ? 難儀よねえ。

わらし:めんどくさがりやが文句いっちゃいけないわよ。根性見せろ、根性ーーー!! 

ミラ:わらしちゃん、世の中、愚痴をこぼしたい人たちでいっぱいだってこと、知ってる?

わらし:知ってるけど、どうでもいいじゃん、そんなこと。

 

 次ぎのコンテンツへ進む→  

 系統学と進化のあれこれへ戻る→ 

  参考文献として:

 「系統分類学入門ー分岐分類の基礎と応用ー」 E・O・ワイリー他 宮正樹訳 1992 文一総合出版 

 「系統分類学」 E・O・ワイリー 宮正樹・西田周平・沖山宗雄共訳 1991 文一総合出版

 「生物系統学」 三中信宏 1997 東京大学出版会

 「種の起源」(上下) ダーウィン 原著1859 岩波文庫 

  

 系統トップへ→   

 ホームページトップへ→  

 分岐学の入門書「恐竜と遊ぼう」/参考文献はこちら→