◆白光
連城三紀彦 朝日新聞社
2組の夫婦がいる。妻同志は姉妹で、妹の夫は姉の夫の母親の教師時代の教え子にあたる(ややこしい)。そして、妹夫婦の4歳になる娘が姉の家で殺されるという事件が起こる。
その日、妹はカルチャーセンターへ行くために、娘を姉に預けて出かけた。午後になって、姉は自分の娘を歯医者へ連れていくので、妹の子を家に残して出かけた。姉の家には夫の父親が同居しているので、その姑に世話を頼んで出かけたのだ。しかし、家に戻ってみると、子供の姿は消えていた。70歳を超えて、ややボケ気味の姑は「女の子は若い男が庭の棕櫚の木の下に埋めていった」と言うだけだったが・・・
深く読むと非常に恐ろしい小説なので、あくまで推理ものとして読みました。内容のほとんどが登場人物の独白で構成されていて、関係者の誰もが現場に行っていないと言いながら、自分こそ犯人だと主張する。この作品も『人間動物園』のように、「誰がうそをついているか?」という謎解きですね。
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◆人間動物園 連城三紀彦 双葉社
大雪に閉ざされた首都圏の郊外で誘拐事件が発生した。いなくなったのは4歳の少女。そして少女の祖父は汚職事件の渦中にある元閣僚。
被害者宅には、犯人によって複数の盗聴機が仕掛けられている為、警察に通報することも出来ない。母親は窓から隣家に手紙を投げ込み、やっと助けを求めることができた。警察は隣家の居間に前線本部を置き捜査を開始する。盗聴機の電波の届く範囲内に犯人が潜んでいると考えた警察は付近の住宅を捜査するが、そこには重大な盲点があった。警察の打つ手打つ手が犯人に読まれている。そして事件はさらに複雑になっていく。
ほとんどのシーンが被害社宅の隣家の居間で展開するので、舞台劇のような緊張感があります。登場する人物の全員が何かを隠しているようなので、「誰がうそをついているか」という謎解きにもなっています。謎の積み重ねと二転三転する真相は、最後まで一気に読ませる迫力があります。
難点と言えば、動機の面がちょっと取ってつけたような感じになっていることですね。
◆パンドラの娘 藤本ひとみ 講談社
「IN★POCKET」に連載されていた、ヨーロッパ史関係のエッセイをまとめたもの。
トイレの話では、あのヴェルサイユ宮殿のトイレの真実について語られていたり、ギロチンと公開処刑の話など、気軽に面白く読めます。
ギロチンが残酷な道具ではなくて、むしろ苦痛を少なくして、能率よく処刑できるように考えられた道具であるという話は、前にも読んだことありますが、死刑の能率を追及するという発想がすごい。フランスの公開処刑が1939年まで行われていたっていうのも驚き。
また著者は、マリー・アントワネットよりデュ・バリー夫人の方が好きと書いていますが、まったく同意見。デュ・バリー夫人は、気のいいおばさんてイメージなんですよね。出身は超美形の家系なんだけど。
一番驚いたのはファッションに人生をかける人たちのエピソード。情報収集、流行分析、お店を回っての品定め。これを毎年毎シーズンやるというのだから、すさまじいエネルギーですよね。
この中に「パリでは日常的に化粧をしているのは娼婦」という文章が出てくるんですが、こういう話ってよく聞きませんか?
私は「外国では髪を染めるのは娼婦だけ」と言われたことあるし、また「外国では夜8時を過ぎて1人出歩く女性は娼婦」とも言われました。あと、ハイヒールはいてると、ピアスつけてると、ズボンはいてると、自分の名刺を持ってるのも外国では娼婦だけだそうだ。本当かよ〜〜??
なんか気に入らない女性がいると、「あんたは娼婦の真似してる」って言いたいだけなんじゃないのかな?(笑)
◆防風林 永井するみ 講談社
芝園周治は17年ぶりに故郷札幌に戻って防風林を見たことから、幼い頃の断片的な記憶を甦らせた。その記憶を辿っていくうちに母親の隠された過去と事件が明らかになっていく。
結末はだいたい予想がつくのですが、もう1つ捻ってあるところがミソかもしれません。
面白い小説だとは思うんですが、はっきり言ってしまうとメロドラマなので、どうも私には合わなかったです。キャストにもよるけど、ドラマで見た方が絶対面白いと思う内容。北海道の風景と絡ませたら、きっと素晴らしい2時間ドラマが出来るでしょう。
ネタバレ→【 アオイの動機が納得できない。周治が忘れてるんだから、忘れたままのがいいでしょうに。要するに周治と絡みたかっただけなのよね。 】
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