'95

DUTCH TV '95 23MIN
「NIANDRA…」リリース後、オランダのテレビ局によって作られたドキュメンタリー。
真性ジャンキーとしてのジョンの姿を余りにもリアルに描写するこの映像は、正直見ているのが辛くなるような痛々しさに満ちていて、今の健康なジョンを知っているからこそ冷静に見ることができるというショッキングなものです。
「ジャンキーを見せ物にしている。悪趣味だ。」という声もあります。

それでもこれは、端からどう見えようとジョン自身に迷いは無く、ジャンキーでいることに信念を持ってさえいるかのような当時の様子をありのままに記録した貴重な映像です。

このVIDEOはソロ時代ではほとんど唯一のもので、インタビューで構成されていることもあり、特別に扱いたいという思いがありました。なんとか訳したものを紹介したいと。
今ではすっかりクリーンになり、ドラッグへの興味を完全に失ったと言い切るジョンの、ドラッグを盲信していた当時の言葉を今更蒸し返さなくてもと思わないでもありませんが、「あれは僕にとって清めであり、癒しであり、自分自身でいられるようにしてくれたものだった。」と語るように、このジャンキー時代を経て現在のジョンが在るのは確かな事実です。
そこで、当サイトのお客様でミーハー仲間でもあり個人的にお世話になっているmikkiさんに相談したところtranslationを快諾して下さり、このように全訳を掲載することができました。不明瞭な部分も多いジョンの言葉を聞き取るのは大変な作業だったと思いますが、愚痴ひとつ漏らすことなく、むしろ楽しんで訳して下さったとのこと、感謝に耐えません。

(なかば強引に書いていただいたコメント、「訳者あとがき」とさせていただきました。
thank you sooooo much、mikkiさん!)

 
俺がバンドに入った時、他のメンバーはもっと何か他のものになりたがっていたので信じられなかった。
俺はRHCPは既に大スターだと思ってたんだけど、彼等にとってはまだ有名じゃないし、まだまだ目標を成し遂げてないと思ってたんだよ。彼らはエアロスミスか何かみたいにビッグに成りたがってたんだよ。 俺はショックだったね。でも別にそれはそれでかまわなかった。 俺は俺で楽しくやってたし。 ただこのぐらいの人気で留まっていたかったんだよね。
だから本当のショックはBlood Sugar Sex Magikがリリースされたあとにやってきたんだ。 このアルバムのおかげで俺とフリーは数カ月神経が参ってたんだよ。 だって、実際すっごい群集がレコード屋に行って、レコードを買ってそれをプレーヤーにかけて、俺らの作った音楽を聴いてんだぜ!!
文字通りこんなこと俺に起こったこともなかった。マジで。 こんなこと今の今まで一回も想像したこともなかったし。 大勢の人がこのアルバムを買って聴くなんて。 世界中の人間がだぜ! 俺、初めは「国中」だと思ったんだけど、後で「スッゲ−!世界中だぜ!」って気が付いたんだ。 そんで俺はこのことをフリーに5つぐらいの違った方法で説明したんだけど、 フリーは 「うん、うん。」って言うだけで、 俺はただ 「。。。。。。。」って絶句するだけだった。

 insert 〜Give It Awayのビデオ〜

レコーディングしてた時俺は厳しい状況に置かれてたんだよ。 レコード全編に幽霊の声が聞こえたんだ。

Q:君たちが演奏してた所はスピリチュアルな所だったの?

そう。面白い所だったんだけどね。 レコード全編から幽霊の声が聞こえるんだよ。 レコーディング中は他の人に言いたくなかったんだけどね。 後で、「幽霊の声が聞こえない?ほら、聞いてみろよ!」 ってフリーに言ったら、 「ジョン、皆が聞こえる訳じゃ無いいんだよ。」「 俺達だけなんだよ。」って言うんだ。


たくさん書き物をしてるんだ。ノートにいっぱい書いてるんだ。 2〜3週間に1冊は書いてるよ。 映画の脚本とかいろんなアイデアとか、、、。 頭のてっぺんに浮かんできたことをね。 数学の式とか、あらゆる種類の事をね。

Q:最近書いたものから1曲演奏してくれませんか?

いいよ。
今回のアルバムのためにショウをする時はほとんど俺が14歳から今までに書いたものなんだけどそのなかからで良い?

 〜ジョンのギタープレー〜

Q:とても良かったです。

ありがと。

 insert 〜ボートの上のジョンとアンソニー 「アンジー」を「アンソニー」に変えて歌うジョン〜

もしミュージシャンに成るとしたら、人に共有される人間になるか、つまり自分は特別じゃないって分かってて、皆から理解される「何でも無い良い奴」になるか、それとも「何でも無いダメな奴」つまり「くそったれ」になっちまうしか無いんだ。 もしロックスターに成るとしたらその中間は無いのさ。どっちかしかないんだよ。

Q:では、カート=コバーンが死んだという知らせを聞いたときどう思いましたか?

死んだ?
ああ、死んだって事ね。 自分でも分からないけど泣いたね。あいつの音楽とか何も好きじゃ無かったけど、、、。 ひどいはなしだよ、、、まったく、、、。 彼の赤ん坊の事を考えると、、、。 これについては話したくないな、、、、。

 (ジョン立ち上がる。たばこ片手にすぐ戻ってくる。)

あいつはガッツが無かったと思うよ。 俺には彼が何で自分の娘の成長を見たくなかったのかが分からないね。 つまりあいつはそれに対してわくわくすることは無かったんだろうね。 自分の事だけ考え過ぎて、、、、、。 よく言うように、人間はそのうち自分の事ばっか考えるようになっちまうんだよね。 そういう奴らは世の中のビデオや、あれこれ、名声とかを気にし過ぎるんだよ。 そうなると、もしそいつがロックスターであろうと乞食であろうと、自分の事ばっかり考えはじめると何やったってうまく行かないんだよ。 「何でも無い良い奴」にはなれないって訳さ。そうだろ?


赤ん坊って2歳で踊ったり出来るんだよ。 おかしなジョークだって通じるんだ。かわいいよ。 「皆は間抜けなんだよ」って教えることもできるし。 でもそういった事って皆が皆経験できる事じゃ無いんだ。 それはとても凄い事だし、とても美しい事さ。
このレコードで俺が書いた曲は全部クララに捧げてるんだ。 あのコは俺が今まで会ったなかで最も賢い人間だね。マジで。

 insert 〜フリーがぬいぐるみを抱く娘のクララに向かって:

 「アニ−にキスしてごらん。お前の始めてのボーイフレンドだよ。」
 「ジョンが誕生日に買ってくれたんだよな〜。」


Q:でも私がKコバーンの死を知った時私はあなたの事を考えてたんですけど、私達はリバー=フェニックスの死も経験したし、それ以前にはヒレル=スロヴァクの死も経験しました。そういうのってとても自虐的だと思うんですが、こういうビジネスの中に居る人達にはいったい何が起こってるんですか?

皆結局死ぬんだよ。 大した事じゃ無いね。
リバーに関して言えば、あいつは死んじまった事より生まれてきた事自体が不幸だったんだと思うね。 だってあいつはこの人生も この場所も嫌いだった訳だろ。 だから今あいつはもっといい場所に行っちゃったってことさ。
別に大した事じゃないね。 俺は今死んだってかまわないし。 だからって俺が自虐的だとはいえないよ。 俺は人生を凄く愛してるし。 今はただ人生を楽しんでるよ。

Q:分かりました。ではボブ=フォレストについてお話したいと思います。 オランダでの大きなショウが終わったばかりですが、あの時彼はとても高い柵に昇って落ちそうになってましたよね。落ちずにすみましたが。 とてもクレイジーな行動だったんですが、、、、。

あいつ俺の服きてるんだよ。

Q:あなたの服を着てるんですか?

あのツアーでずっとね。

 insert 〜ピンクポップ ’93 セロニアス モンスター〜

ボブ=フォレスト(以下B):俺は死なないよ、、、、、

Q:そうなんですか?

B:そう。

Q:あなたは「死ぬ事を恐れてるやつはいるか?」と問いかけましたけど、あなたは恐くないんですか?

B:恐くなんかないね。

Q:ショウの間、あなたは人々にお金の価値について伝えたいと言ってましたが、それはどう言う事ですか?

B:良くわかんないけど。 結局みんなコンサート観に行ったりレコード買うのに大金使ってる訳だろ。 じゃあ、例えばの話、本当のロックスターになれるとしたら君はポール=マッカートニ−になりたいかい? 俺はポール=マッカートニ−になるぐらいだったら、死んだ方がましだね。 フィル=コリンズなんかでもまっぴら御免だ。 ジム=モリソンになろうってのもメロドラマチックで馬鹿げた話だよ。 いいかい、つまりこうゆうことなんだ。 
 
Q:はい。

B:俺ががきだった頃、俺は「レディース アンド ジェントルマン レニ−=ブルース」を読んでた。13歳の時俺がやりたい事 はヘロインをうつ事だった。それが唯一欲しい物だったからね。何故ならそれが俺にとってのアイドルだったから。 それから俺はキース=リチャーズやグラムパ−ソンズに出会った。 つまりそういうのってアメリカのポップカルチャーの中で20年間知られてきたメロドラマみたいなもんなんだけど。俺はそういう物を肥やしにしてきた。 何故なら、俺には両親も、頼る人も、何かを問う事のできる人もいなかったから。 だから、レニ−=ブルースやグラムパ−ソンズやキース=リチャーズが俺のお手本になったんだよ。 そして、そうやって生きていくうちに、朝起きて「これから酒飲むぞ!薬をうつぞ!」なんて意識的にしなくったって自然な事になってたんだよ。それが普通なんだ。 何故なら、俺はそうやって育ってきたから。そういう考え方で生きてきたから。
おっと!一体俺は何やってんだ?

Q:告白ですよね?


オーケー、俺に精神的な事とかドラッグの事聞きたいんだろ? ああ、俺はジャンキーだし薬をうつのが大好きだし、 つまり俺は自虐的なやつだよ。 これで満足かい? (ジョン微笑む)

Q:いえ、どうでしょう、、。あなたは今のが正式な表明だと思うんですか?

そうだね。  

 〜ジョンのプレー〜UNTITLED #11

Q:それはデヴィット=ボウイの“ブラック パック”ですか? 読んでるんですか?

いや、ただ写真を見てるだけで読んじゃいないんだ。 俺はいつもボウイの写真を眺めてるだけ。
17になる迄はこんな物要らなかったんだけど、 その頃から俺は毎日ストリートでコカインが買いたくなってね。 薬に飢えてたんだけど、お金が無くて、でもどうしても目眩とかが止められなくなって、 どうしてもコカインがやりたいもんだから、そういう時にはボウイのバイオグラフィーの目次の中から“コカイン”って書いてある総てのセクションを見つけて、そこを読んでは、コカインをやってる気になってたんだよ。
う〜ん、ただ写真を見てるだけだよ。 ほら、これはボウイとイギー=ポップだよ。 何か二人でおもしろがってるみたいだね。

Q:何故あなたはそんなにコカインが欲しかったんですか?

それは素晴らしいからだよ。 凄く気持ち良くしてくれるからね。 それにクールになりたいから。 ボウイもコカインやってる時が一番クールな作品を作ってるからね。 そのフィーリングとそのイメージが好きなんだ。 そもそも俺がロックにハマったのはそこだからね。 バイセクシャルとドラッグさ。 人生の中にこの二つの物が有るから俺はロックに身を置いてるんだよ。
俺が9歳か10歳のころパンクロックにハマったんだけど、それは俺にとって自分自身を感じられる総ての世界だった。学校とかでは感じられなかった事が其処にはあった。 学校では自分の存在する理由が感じられなかったんだ。 その時ロックは俺の毎日の生活の総てだったね。 俺に生きる意味を与えてくれたんだ。 他の人達が人生に対する感じ方と同じフィーリングを感じる事が出来たんだ。
俺は17になる迄ドラッグはやった事が無かったんだけど、 ハリウッドに移ってきてギターを一日に10〜15時間練習する事にして、まあこれは俺が5年間毎日やってる事なんだけど、そのかわりに、俺はただ生きて行かなきゃいけなかった。 コカインをやって、化粧をして、いまは毎日化粧しないけど、 完璧に化粧して、ピンクのズボン履いて、メキシコ人の所へ買いに行ってたんだけど、 でそのメキシコ人がいつも俺のこと「お兄ちゃんキマッテルね!」って言うんだけど、 俺は「奴は分かっちゃいないぜ!」って議論したりしてね。 そんな感じにね。

Q:いま迄あなたはそれらのドラッグについて考えたことは無いんですか? あなたや他の多くの人達は何故、体に何かを加えなければいけないんですか? 何か体に変化を及ぼしますよね?

毎秒ごとに人は変化するし、見たもの総てが人を変えるし、食べるもの総てが人を変えるんだよ。

Q:でもドラッグは非常に影響を及ぼしますよね。

そうは思わないね。 それより両親が子供にガミガミ言う方が凄い影響すると思うけどね。 誰か自分が凄く好きだった人が死んじゃったり、、、 男らしさの模範として尊敬されてしまうことの方が影響を及ぼすと思うね。

Q:それはあなたの両親に向けて言ってることですか?

そうじゃ無いよ。総ての親に対して言ってるんだよ。 どの親も子供達の性徴や脳の成長の際に、ある種の間違えを起こしたり、無頓着だったりするんだよ。 世の中の親にとって何が賢いかって言うと、物事をただ暗記したり、学校でいい成績をとったりする事だってされてるけど、俺が思うに本当の賢さっていうのはどれだけ頭の中で空想できるかって事だと思うんだ。もっと脳の他の部分を使ってね。 それって無意識の働きだと思うんだけど、いろんな考えを頭の中で整理する事ができるし、 その人の生涯に激しい影響を及ぼすと思うんだ。 ここでも、これからの君のどんな人生においても同時にね。 それが俺にとっての賢さだね。 ただ暗記するだけだったら、猿でもできるからね。 そして、ドラッグがその頭の中で自由に思いを巡らせる事を助けるのさ。
 
人生の中でキッスが俺が初めて音楽にのめり込んだきっかけだったんだ。 彼等は本当に俺をマジカルな所へ導いてくれたね。 それ にドラッグがついてきただけ。 だから俺は、ドラッグがそんな深刻な変化を及ぼすことはないと思うよ。 例えば俺がコカインのラ インを鼻から吸い上げたからと言って 「オーゴッド!こりゃひどい!」「 嗚呼、お前そんな事しなきゃよかったのに!」「 こりゃひどい!おまえだいじょうぶか?!」 「ウン、大丈夫だと思うよ、、、。」
(なんて大袈裟な事にはならないだろ?と言う事をジョンは言いたかったんでしょう。)

Q:分かりました。ではあなたは自分で言ったようにヘロインを常習していますが、 一体それは何故なんでしょう?かなり深刻な問題かと思いますが?

みんなそう言うけど俺にはその意味がわかんないね。 俺はそれが何かよく無い事だとも思わないし。

Q:ではそれ(ドラッグを使用すると言う事)はあなたにとってどう言う意味があるんでしょう?

この世に存在する醜い物に俺の魂を占領させないように、美しい物だけに触れていられるようにするための唯一の方法。

Q:それではドラッグがあなたの体を蝕むとしても構わないんですね?

体を蝕んだりしないさ。 俺は凄く気分が良いし、気持ちよく無かったらとっくに生活の仕方を変えてるね、ジョギングするとか。 俺は調子が良いしエネルギ−に満ちてるよ。 いろんな事を書いたりしてるし、いつも作曲してるし。 脳の働きを発展させたり、、、。 いろんな種類のアートを鑑賞してその評価をかいたり。 そしてもっと良い人間になろうとしてるんだ。
いつももっと良い人間になれるように努力してるよ。

Q:ではドラッグを止めるめるつもりは無いんですね?

そうだね。もし”中毒”ってものが存在しなかったとしても、全く今迄と同じ生き方をしてただろうね。

俺がこのレコードを発売した理由ってのは、 最近全然良い音楽が俺の周りに無かったからなんだ。 友達にも納得させられたんだけど、 最近全く良い音楽が無いから、キッズたちも音楽を聴いてエキサイトしたがってるのに、 ダヴィンチと同じヴァイヴを持っていないような音楽で我慢してると思うんだ 。俺にとって本物の音楽っていうのはジェーンズアディクションとかジミ=ヘンドリックスなんだけど、 そういった才能のある人達っていうのはダヴィンチと同じヴァイヴを持ってるんだよ。 いつの時代のどんなアーティストにも通じる何かをね。 今のバンドはそういった物を持っていないけど、この音楽は持ってるよ。
だから発売したんだ。

 〜ヨガのようなストレッチをした後、床に横たわるジョン。煙草を手にしたまま寝てしまう。

 

このビデオの存在を知った時“こんなものをお金を出して買うべきなのか?”と自問自答したが、やはりジョンの肉声が20分も詰まっていると思うと買わずにはいられ無かった。数々のジャンキーに落ちぶれたミュージシャン達に習い、さぞやつれてボロボロになってひどい有り様なのだろうと思いつつビデオを再生してみると、其処には陶器の様に青白い肌に大きな瞳を更に剥き出しにし、BSSM時代の坊主頭とはうって変わって、艶やかな黒い髪を伸ばしたジョンがいた。その姿を見て、私は不謹慎にも“美しい”と思ってしまった。そしてその姿は痛々しさは有るが、決して無気力な抜け殻のようでは無かった。静かな中にも彼の発する言葉は生き生きとし、信念に満ちていた。彼はこの薬中生活を満喫しながら、毎日より良い人間に成ろうと努めていると言う。このインタビューで彼は、RHCPの脱退の真相、ロックとの出合い、友人の死、両親への提言など、実に多くの事を語っている。学校生活の中で自分の居場所が無くロックに出会って居場所を見つけたと言うくだりは共感せずにはいられ無かった。何故なら、私も中学生の頃ロックに出会って無ければ今頃この世に存在してい無かったかも知れないから、、、。
このインタビューはジョンの心の中を覗く事のできる貴重なものだと思う。何故なら、この中で彼は虚勢をはって自分を飾ったり、自分の心を偽ったりしていないから。その真実だけを語るジョンの姿はまさに”Fragile”と言う表現を思い起こさせるものであった。

最後に、このビデオ紹介のお手伝いさせて頂いた事に感謝します。

------mikki,