クラシックカー、オールド・ヴィンテージ車両の並行輸入代行、 通関から予備検査登録、 特殊なモノほどお任せ下さい!
輸入業務の流れ
在庫情報・車種例
お問い合わせ
関連コンテンツ
クラシックカー・スーパーカー総合研究所 バックナンバー
NEW ARRIVALS
CARS ON SPECIAL
95号 ボンドカー・ロータスエスプリ
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
◆クラシックカー、スーパーカー総合研究所◆ 第95号
発行日:2004年9月24日
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
このメールマガジンではバリバリ売れ筋のカローラ、環境に優しい
ワゴンR、などの現行一般受け自動車には目もくれずに、
輸入車、さらに一歩突っ込んでクラシックカー、スーパーカーを皆さんと一緒
に紹介、再考していこうという物です。
紹介するのは
=========================================================
'70年代までをメインとしたマニアックなクラシック、ヴィンテージ車、
'70年代半ばからブームになったスーパーカー達、
さらに'90年代から現在に至るまでのハイパフォーマンススーパースポーツ、
=========================================================
・・・などなど、
一部日本の旧車も交え、総じて言うと『コレクターズカー』と呼ばれる古くな
っても価値を見出されて、解体にならない名車を取り上げていきます。
<<過去の紹介車種>>
●トライアンフTR3からランボルギーニムルシエラゴまで、
様々な本編車輛とバックナンバーの画像はこちら
→
http://www5b.biglobe.ne.jp/~atc/backnumber.htm
【ご挨拶】
皆さんこんにちは。
今回の本編ですが、"歩き目です"さんの書き下ろしストックの中からお願いし
て、あの劇中で水中からミサイル発射するサブマリーンを頂きました。
ご自身のサイトはそっちのけで(笑)ご協力下さる歩き目ですさんにはいつも
心より感謝です!
その歩き目ですさんのHPはこちら
→
http://www45.tok2.com/home/hizatuki/supacar/supatop.html
今回は恥ずかしいので私の書いた参照バックナンバーは敢えて示しません・・・
映画は私も勿論観た事ありますが、一体どうやって知り得たのかと不思議に思
うくらいの凄い情報と洞察力に感服します!!
ロータスの経緯やベースのエスプリまで網羅して頂いており、実質2回分以上
です、濃い内容を一気に読んでお楽しみ下さい!
※4部構成になっています。
壱・ロータス立ち上げまでの歴史
弐・その後、ロータスの悲劇
参・エスプリとは
四・007劇中車のエスプリ
■■■■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■□ 第95回
■■□ 【ボンドカー・ロータスエスプリ】
■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
壱・ロータスの立ち上げまでの歴史
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
70年代中盤に起こったスーパーカーブーム。その火付け役は漫画『サーキット
の狼』である、というのが現在の定説となっている。
ブーム最始期の車群に、漫画の主人公が乗った『ロータス・ヨーロッパ』が含
まれているコトが、その何よりの証拠でもある。
が、このロータスという名前、『ロータス・ヨーロッパ』以外では、今回取り上
げる『ロータス・エスプリ』位しかブームの時に耳にするコトが無く(◆注1)、
スーパーカーのメーカーとしては弱小派の感すらあった。
では、その実はどうなのだろうか?
ロータスの創始者『アンソニー・コーリン・ブルース・チャプマン』は、1928
年5月19日にイギリスのサリー州リッチモンドに生まれた。
ひとりっ子だったコトもあり、大切に育てられたチャプマンは、ロンドン大学
ユニバーシティ・カレッジに入学。
そこでエンジニアリングの勉強をする。(◆注2)
自宅からモーターサイクルで通学していたチャプマンは、新入生歓迎のダンス
パーティから帰る時にタクシーと衝突、大怪我を負う。
両親は大破した愛車に代わり、中古車を通学の足にと、X'masのプレゼントに
した。(◆注3)
これがチャプマンと車との運命的な出会いになった。
その後、車の楽しさを知ったチャプマンは、車関係の雑誌をむさぼり読み、ガ
ールフレンド(◆注4)を助手席に乗せてドライブする『青春謳歌』の日々を送
る。
さて、車に金がかかるのは古今変わりが無い様で、チャプマンは友人と中古車
売買のアルバイト(◆注5)を始める。
ここで彼は運転技術は元より、商売のノウハウ、話術までも培っていく。
ところが1947年の10月(◆注6)、中古車は価格が暴落し、やむ無くチャプマ
ンは在庫一掃整理を行う。
が、ほぼ売り尽くしても通常の半額ほどにしかならなかった。
ここで、絵本童話かくやのドラマが始まる。
『ほぼ』としたのには、たった1台、どう安くしても売れなかった『落ちこぼ
れ』(◆注7)がいたからで、廃車にするのも忍びないチャプマンは、その『落
ちこぼれ』を改造して自分専用の車を造ろうと思い立つ。
ガールフレンドの裏庭にあるガレージを半ば勝手に借り、友人達と作業開始。
彼女も塗装に参加させるまでにスペシャルカー製作に燃えていた。
そして完成した『世界でたった1台』の車に、チャプマンは『ロータス』(◆注
8)と命名する。これがロータスの名前を持つ最初の車、『ロータス・マーク1』
(◆注9)の誕生である。
この生まれ変わった『落ちこぼれ』で、チャプマンはローカルレースに出場。
たった3戦だけではあったがその速さは周囲を驚かせ、チャプマンとロータス
は一目置かれる存在になった。
大学卒業後、工学士となったチャプマンは英国空軍に勤務。
休暇にはガレージに通い、『マーク2』製作に没頭していた。
さて、続く『マーク3』の準備をしていた頃、志を同じくするアレン兄弟と出
会う。
そして1949年秋に徴兵勤務の義務年限が終え、1952年の1月1日にチャプマ
ンはアレン兄弟の兄、マイケルと共に『ロータス・エンジニアリング社』を設
立。
ロータスの正式な第1歩を記した。(続く)
◆(注1)
言うまでも無く、認知度を高めた要因に『007』ボンドカーとしての起用があ
る。これに関しては煩雑を避ける為にも、後半コラムに譲るコトとする。
◆(注2)
当時は車文明の開花時期で、それ関係の職種は花形であった。
◆(注3)
車を与えた両親の理由が面白い。『二輪よりは四輪の方が安全だろう。』(笑)
◆(注4)
この女性こそ、未来のチャプマン婦人となる『ヘイゼル・ウィリアムス』であ
る。野暮な蛇足だが、二人は1954年10月に結婚している。
◆(注5)
当時は新車がなかなか生産されなく、需要に追い付いていなかった。
また、ガソリンも配給制だった為、『車を持つ=ガソリンが必要』という単純な
理由で、ガソリンの配給権を手軽に得られる中古車は人気が高かったのである。
◆(注6)
この年、ガソリンの統制が無くなり、新車の生産も増えてきた。
その為、中古車人気は一気に落ちてしまう。
◆(注7)
『オースチン・セブン・サルーン』という1930年式の大古車(分かり易く言う
と、この話の当時で17年前の車というコトになる。)で、登録No.は『PK3493』。
◆(注8)
ロータス(LOTUS)は英語で『蓮』の意味。ギリシア神話では『ΛΩΤΟΣ(ロート
ス)』と言い、その実を食べると浮世の苦しみ全てから解放され、夢が叶うとさ
れている。
◆(注9)
以降、ロータスの車には通し番号として『シリアルNo.』が、会社設立後の企
画として『プロジェクトNo.M~が個別につけられるのが基本的な慣例となる。
設計段階や企画段階で車を記号や番号で呼称するのは、ランボルギーニ等でも
行ってはいるが、完成した後でも完全なNo.が付記されるのがロータスの特徴
である。
(RX-78ガンダムと、MS-O6ザクとかに感銘を受ける世代なら、無条件で納得
するコトと思う。)
ロータスのマニアには、わざわざこのNo.で呼ぶコトの快感を楽しむ人達も少
なくないとか・・・。
ちなみに、ここで『基本的な慣例』としたのは、ダブったり、間が空いたりし
ているモノも幾つか見られる為で、多少ファジー&アバウトな面があるのは英
国気質の愛敬?(笑)
**************************
弐・その後、ロータスの悲劇
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(続きより)
イギリスはロンドンのホーンジー、トテナム通りに念願の『ロータス・エンジ
ニアリング社』をスタートさせたチャプマンではあったが、その実はホテルの
隅にある馬小屋(■注1)の半分を借りていた粗末なモノで、車が2台入ると人
の居場所が無くなる程の狭さだった。
しかし、チャプマンの腕を見込んでパーツやマシンの製作注文は多く、ロータ
スはほどなく経営としては軌道に乗る。
チャプマンの伴侶ヘイゼルは取締役となり(■注2)、同好者を募り結成したレ
ーシング・クラブ『チーム・ロータス』も意欲的な活動をしている。
マーク6の成功で財政に余裕の出たロータスは、1959年にハートフォードシャ
ーのチェスハントに工場を建て、本拠地とした。(■注3)
さらに1967年にノーフォーク州、ヘセル・ノーウィッチにあった軍の飛行場
跡に本拠を移す。(■注4)
その翌年の9月『ロータス・エラン』の大ヒットを受け株式公開に踏み切り、
ロータスは名実共に大企業へと発展していく。
が、エスプリを発表した3年後の1978年、ロータスに取っても、スーパーカ
ー史においても『最悪の事件』が幕を開ける。
ひとりの男が、エスプリを見て『こんな車を作りたい!』と依頼してきたので
ある。
その人物の名はGMの副社長だった『ジョン・ザッカリー・デロリアン』(■注
5)。
悪いコトにこの頃のロータスは販売不振に悩んでおり、これで自社の技術力を
見せつければ持ち直せる、と判断したチャプマンは依頼を受けてしまう。
これこそ彼が死神のカードを引いた瞬間だったのかも知れない・・・。
デザイナーに再びジウジアーロを迎え作業を開始したが、スタッフは出鼻をく
じかれる。
と言うのも、デロリアンが持ってきた設計青写真は、背反・矛盾点等の問題が
多く、結局白紙の状態からやり直すコトとなったのだ。
期間はゆうに2年越しとなり、その間の自社開発は事実上ストップしてしまい、
販売不振に拍車をかけた。
その上、財務省に『使途不明金及び脱税の疑い(■注6)』として調査に入られ、
トドメにデロリアン自身が『麻薬所持及び取引の容疑』で逮捕されてしまう大
スキャンダルを巻き起こす。
これによりロータスの株はガタ落ちとなり、一番のお得意だった北米市場で
1981年~1982年の売り上げがゼロに陥ってしまう。(■注7)
そしてその年、1982年の12月16日、パリのFISA会合から自家用機で帰宅
したチャプマンは急性心不全で倒れてしまい、そのまま54才という若さで還
らぬ人となる。
深刻な経営不振の最中、悲しみに暮れる暇も無く、未亡人となった取締役のヘ
イゼルは自分の保有する株の全てを事業家(■注8)に売り渡すコトにした。
しかし、すぐにその株は転売同然にGMに売られてしまい、1986年1月22日、
ロータスはGM傘下に入るコトとなり現在に至るのである。(■注9)
■(注1)
このホテル、実はチャプマンの父親が経営していたモノで、この馬小屋も車文
明の開花により馬の使用率が下がってきた為、期せずして空いたスペースだっ
た。
■(注2)
この少し前、マーク6のプロトがクラッシュを起こし、マイケル・アレンは財
政的にパンク。ロータスを去ってしまう。
その後を彼女が引き継いだのである。
■(注3)
ここでロータスは、市販車担当の『ロータス・カーズ』、レースマシン担当の『ロ
ータス・コンポーネンツ』、そして総合本営『ロータス・エンジニアリング』と
分業体制を確立させた。
■(注4)
この地は今でもロータスの本拠である。
■(注5)
この名は車ファン・映画ファンには説明不要かも知れない。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場した『デロリアンDMC-12』に付
けられた名前と同一である。
いや、むしろこの話こそ『デロリアン』の誕生に関わるモノなのである。
■(注6)
デロリアンは車製作の資金を、英国政府から融資という形で調達しており、ロ
ータスはこの資金を節税対策にとジュネーブの『グランプリ・プロダクト・デ
ィベロップメント』通称『GPDサービス社』を通して受け取るコトにした。
これ自身には何も問題が無いのだが、不幸な偶然が待っていた。
同じジュネーブに、チャプマンの友人が経営するロータスの販売店『グランプ
リ・ドライバーズ』があり、この店の通称も『GPD』(グランプリはGrand Prix
である)だった為に混乱が生じ、国からの融資を横流ししたと思われてしまった
のである。
■(注7)
丁度この頃は、トヨタと正式に提携を結び始めた時期で、ロータスとしては実
に気まずかったであろう。
■(注8)
この事業家は『ディビッド・ウィッケンズ』といい、ロータスファンにはどう
にも評判が良くない。
というのも、ロータスのエンブレムは、周りは黄色だったのだが、チャプマン
の死後、喪意を含めて黒に塗られるようになっていた。
ところが、それ等をウィッケンズは廃止し、新しいエンブレムをデザイン・採
用したのである。
※エンブレム3種の画像
→ http://www5b.biglobe.ne.jp/~atc/lotus_emblem.htm
当然ファンからはクレームの嵐で、たまらずに間も無く元に戻したという経緯
がある。
そしてその後、GMに株を売り渡したのだから、理由はどうあれファンの怒り
を買って当然である。
ちなみに、エンブレムにある『A.C.B.C』のアルファベットは、『アンソニー・
コーリン・ブルース・チャプマン』のイニシャルである。
■(注9)
この後、トヨタは持ち株21%を手放すコトになる。
しかし結果的には、ロータスはほぼ底無しの資金源を、GMは類まれな技術力
を手に入れたワケで、悪くは無い収まり方ではあった。
ちなみにチーム・ロータスだけはチャプマンが個人経営のスタイルを通し続け
ていた為、買収をまのがれ、GMとは別会社として、ヘイゼル未亡人が経営を
続けている。実に素晴らしい奥さんではないか・・・。(泣)
**************************
参・エスプリとは
~~~~~~~~~~~~~~~~
ロータス・エスプリは1975年10月のパリ・サロンでテビュー。
シリアルNo.は79、社内プロジェクトNo.はM70である。
ロータス・ヨーロッパに代わるスポーツカーとしては勿論、俗に言うスーパー
カーとしても、ランボルギーニやフェラーリ等を横目で睨むコトの出来るフラ
ッグシップ級の存在である。
ボディは極端なウェッジシェイプで、スチール製フレームにFRP製の外装を施
される。(◆注10)
エンジンはリア搭載方で、先に生産された『ロータス・エリート』の物と同一。
操作系はトランスミッションにシトロエンSMのマニュアルを、ギアもSM用
を改良したモノが使われた。(◆注11)
開発当初からアメリカ輸出を考えた作りになっており、安全面に関しては十二
分な程に気が回されている。
助手席側にもスカットルの下に補強フレームが入り、ジュラルミン製の装甲が
被せられ、エンジンとシートの間には厚さ19mmの船舶用防音パネル(◆注12)
が用いられるといった徹底ぶり。
1978年に『エスプリS2』としてマイナーチェンジを受け(◆注13)、
後に『ターボ』『S2.2』『S3』と進化。
時を経て1987年以降も『HC』『HCPI』『ターボSE』と続き、
1993年には『S4』がデビュー。
真のロータス・フラッグシップの貫禄を見せている。
全長×全幅×全高:4191mm×1860mm×1111mm
ホイールベース:2438mm 車重:897kg
トレッド:(F)1511mm (R)1511mm
エンジン:水冷直列4気筒 DOHC16バルブ 1973cc(◆注14)
圧縮比:9.5 最大出力:160PS/6200rpm(◆注14)
ホイール+タイヤ:(F)6JK×15+195/60HR14
(R)7JK×15+205/70HR14
ブレーキ:(F)(R)ディスク・サーボ
最高速度:222km/h 0→400m:15.0秒
◆(注10)
デザイナーは、マセラティで『ボーラ』『メラク』を手掛けたジウジアーロ。
彼は1972年に『マセラティ・ブーメラン』を発表。
ボーラやメラクとはうって変わって、直線・平面構成に大型ガラスを多用する、
といった大胆なデザインだった。
これは生産されるコト無く終わり、そのデザインラインはエスプリに受け継が
れ、後に『クリス・プルック(折り紙細工)』の愛称でも呼ばれた。
チャプマンもそれが気に入り、即座にGOサインを出したが、試行錯誤を繰り
返した為に開発は遅れ、1975年の9月というデビューの僅かひと月前になって、
ようやくプロトが完成した。
◆(注11)
この頃のロータスは、シトロエンや日本のトヨタ等と提携を組んでおり、各社
パーツの流用で手間とコストを落としていた。
このギアは多少値は張ったが、『ロータス・ヨーロッパ』で不評だったシフト感
を改善する為に敢えて採用。
ミッドシップとしては異例の好シフト感をもたらした。
ちなみにS2のテールランプにはトヨタの『セリカXX』初期のパーツが流用さ
れている。
◆(注12)
実はロータスというメーカーには『シンクタンク』としての隠れた一面があり、
それはエンジニアリング、シャーシセッティング、デザイン、FRP等の素材開
発までに及び、現在でも高いレベルに位置するモノがある。
さらに、そのノウハウは車に留まらず、軍用タンク、船舶関係にまで拡がりを
みせており、この防音パネルもそのフィードバックのひとつである。
◆(注13)
『S2』が出たコトで、それまでのエスプリはここより便宜的に『S1』のコード
で呼ばれる様になる。生産台数は994台だった。
◆(注14)
輸出用に『エミッション・ユニット』を設置したver.もあり、140PS/6500rpm
のパワーであった。
**************************
四・007劇中車のエスプリ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エスプリは1978年に公開された映画『007 私を愛したスパイ』にボンドカー
として採用されている。
この作品は007の10作目、製作15周年となる記念的なモノとして、過去最高
の規模(■注10)で製作され、歴代のパロディを織り込んだり、魅力的な敵役『ジ
ョーズ』を登場させたりと、徹底した一大娯楽作品に仕上げている。
この劇中でエスプリは、歴代ボンドカーの中でも最も手間の掛かったモデルと
して活躍する。
ボンドカーの基本(?)とも言えるリアのナンバープレートが転回して噴出す
る煙幕やセメント、ヘリの追尾をもキリキリ舞いさせる高機動性ドライブテク
ニックでのブレーキターン等はもとより、この車には通常の能力の他に、作品
の目玉として『水陸両用の潜水機能』が与えられた。
水中では車内外共に変型しサブマリン形態となり、レーダーソナー、ペリスコ
ープ(潜望鏡)、フロントの4連装爆裂水中銃、車体底部から接地型機雷の射出、
煙幕、車体後部からの対空小型ミサイル(■注11)と装備満載。
敵をなぎ倒し、海水浴客で賑わうビーチに、平然とワイパーを動かしながら『タ
イヤで』上陸してくるシーンは、劇中1,2を争う名シーンだ。
蛇足だが、この白いエスプリは次々回作の『ユア・アイズ・オンリー』に再登
場し、敵のスパイに強奪され自爆する。(哀)
そしてボンドは代わりにメタリックシャインレッドのターボ・エスプリに乗る
コトになる。
ところが、『私を愛したスパイ』のラストを見ると解る様に、そこには『ユア・
アイズ・オンリー』の予告がある。
しかし実際に次回作となったのは『ムーン・レイカー』であり、製作問題で順
番が入れ替わってしまう珍事件が起きている。
もし、順番通りに製作されていたら、エスプリはシリーズ初の同一車によるボ
ンドカー連投となった・・・かも?
さて、劇中のモデルであるが、本物のノーマルエスプリ2台を含め、改造した
モノや複製タイプ、ミニチュア等を含めると計7台が使用されているコトが判
明しており、それぞれがカットにより巧みに使い分けられている。
何故、今回エスプリが選ばれたのか?詳細は不明だが、エスプリ本体を見るに
次の様な理由が考えられる。
●ボディがFRP製であり、改造、修復等が容易である。
また、複製を取る際も、FRPは映画スタッフの得意とする素材であり、オリジ
ナルの風相まで再現出来る。
●直線・平面構成のスタイルも改造、修復には有利である。
ボディを板金の叩き出しで作っている車だと、一台一台のラインが微妙に異な
るので改造にも手間が掛かるのである。
●シャーシの出来が良い車なので、色々なギミック装置の後付けが容易である。
●897kgと軽いコト。
例え実車をベースに水中モデルを製作したとしても、バラスト面から見て理想
的と思われる。
●内部フレームが頑強で、激しいアクションは勿論、そのまま使用したと仮定
しても十分に水圧に耐えられる。
●英国車である。(笑)
MI6(英国情報機関)のボンドが記念作品として乗るに相応しい。
[シーン・カットからの考察]
劇中、海にダイブするカットではシャーシが確認出来るので、ここで使用され
たのは『ノーマル車』か『防水加工タイプ』と思われる。
ところが、次のカットで海中に沈んでゆくエスプリにはシャーシを確認出来ず、
底面は白のFRPで覆われている。ここで『変型タイプ』にタッチというワケだ。
(■注12)
そして変型シーン。
車内のメーターパネルが転回し、サブマリン操作系になっていく。
車本体はタイヤが格納され、シールドが中から展開して装着。
つづいてフィン(舵)が延出する。
ルーフからはペリスコープが出て、リアには4連装のスクリューがボディ底部
から転回してセットされる。
そして、ウィンドウにブラインドシールド(■注13)が装着され、変型完了・・・
となるのだが、ここで問題がある。
スクリューとブラインドの出所が不明なのだ。
また、フロントのスポイラーもいつの間にか消えており、これにより『(不完全)
変型モデル』(■注14)と変型後の『航行モデル』は別タイプである、と推察で
きる。(さらに車内のパネル転回ギミック『のみ』のタイプもあると考えても差
し支えない。)
次に、敵海底基地に向かうカット。
ここは泡の比率から見て1/8~1/16サイズと思しきミニチュアである。
そして海中での戦闘後、海岸に上陸するシーン。
海から上がってくるのは紛れも無く『防水加工タイプ』。
この後ボンドは窓を開けて魚をつまみ上げて外に出すユーモアを見せるのだが、
ここはカットで繋げている。
つまり、ボンドが窓を開けたのは『ノーマル車』であり『防水加工タイプ』は
機能的に窓が開かない様になっているのでは?と推察できる。(そうで無ければ
ワンカットで見せられるハズだ。)
つまり、突き詰めると
A:ノーマル車1(役者用)
B:ノーマル車2(スタント用)
C:変型タイプ(タイヤ格納・フィン延出まで)
D:水中航行サブマリンタイプ(変型機構無し)
E:防水タイプ(変型機構無し)
F:車内パネル変型タイプ(スクリーンプロセス用・非走行)(■注15)
G:ロング用ミニチュア(もしくはDのスペア?)
Eの防水タイプの動力は水中用モーターと考えるのが妥当。(■注16)
またBのスタント用は多少のチューンなり、軽量化なりを施している可能性も
高い。
以上ザッと書いてきたが、CGなぞ無い時代、こうした手間が実感と迫力に富
んだシーンを生み出している。
これは現代映画への手本となって欲しい一作である。
■(注10)
それまで007シリーズは1年か2年おきに製作、公開されてきたが、この作品
には異例とも言える3年間を掛けている。
また、セットも大規模で、敵潜水艦のミニチュアは全長20m(ミニチュアと呼
ぶのは失礼!?)。
内部セットに至っては既存のスタジオでは高さ、広さが足りず、7ヶ月を掛け
てこの作品の為に大スタジオを建設までしている。
これらの甲斐あって『私を愛したスパイ』はそれまでの最高興業成績を収め、
現在でも歴代シリーズ中6位にランクされている。
■(注11)
車ファンからは『エンジンの上に火器を搭載するのはウソ臭い!』との声もあ
る。
が、設定をラディカルに考えるに、そもそも水中で行動するマシンに内燃機関
を用いるのは疑問で、ここは実際の軽潜水艦と同じくモーター(電気機器)を使
用するハズである。(ましてや英国軍部の開発である!ぬかりは無かろう。)
となれば、ミサイルをリアに搭載しても何の問題も無い。
車『のみ』にこだわった為の落とし穴と言えるかも?
■(注12)
ここのカット、いやにロングショットで撮っており、水の透明度も異様に高い。
NG時のコトも考えるとプール撮影の可能性高し?
■(注13)
防御の為・・・というよりは、ハッキリ言って『車内スタントドライバーの顔
を見えなくする為』のオプションであろう。
本当はボンド『ロジャー・ムーア』が操縦しているハズなのだから。(笑)
■(注14)
カットから憶測するに、もしかしたら1/1では無く、ミニチュア(1/2~1/3?)
の可能性も捨て切れない。泡の大きさ比率とタイヤのトレッドパターンがどう
にも気に掛かるのだ。しかし水中の濁りで上手く細部がごまかされており、ハ
ッキリとした断言は出来ない。
■(注15)
(非走行)と推察した理由は3つ。
●カットは役者のアップを狙ったショットも多く、フロントのスペースにカメ
ラとカメラマンを置かなくてはならないであろうコト。
●フレーム内はギミック用の配線で手一杯になり、そのままだとスカットルや
サスペンションに干渉するであろうコト。
●ブラインドはスクリーンプロセスを巧みにごまかす役目もあり、これにより、
スタジオ内で全ての車内シーンが撮影可能であろうコト。
ちなみにスクリーンプロセスとは、役者等を実際の場所に置き、撮影するコト
が困難な場合に用いられる手法で、まず背景等のみを先に撮影してしまう。
次にそれをスタジオ内で映写し、そのスクリーンの前で役者等の演技を行い、
それを再度撮影し完成フィルムとするモノ。
危険や物理的制限を伴わず、アップやロングの構図が自由に選べ、何度でもリ
テイクが効くのがメリットだが、背景は都合二度撮りされる為、被写体に比べ
画質が落ち、フラッター(チラつき)を起こし易いのが欠点。
この作品ではそれを逆手に取り、海中という『濁り』の雰囲気を返って出して
おり、違和感を感じさせない。現在ではCG合成がほとんどとなり、過去の技
術になってしまった。
■(注16)
当時の記事に『30km/h程しかスピードは出ない』とあったのを記憶している。
当時のモーター性能(言わば電気自動車)からすると頷ける根拠になる?
**************************
さて、長くなりましたが、後書きを。
このメルマガが配信された夜から次の日にかけて、各地のレンタルビデオ店で
『私を愛したスパイ』が品薄になる怪現象がみられますように。(笑)
そして、急いで借りに行ったのに、既に借りられてしょげ帰ってきた貴方!
もしかして近所にクラ・スパメルマガ読者の『同士』がいるのかも知れません
よ?(爆)
それではこれからもヨロシクです。m(_ _)m
歩き目です
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◆◆ヤフオクぶらり漫遊記♪
──────────────────
ここでは名品、珍品の巣窟と言われるヤフーオークションの出品物を幾つか取
り上げてみたいと思います。
個人 バイパー メ保証つき!
http://page2.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b56239356
もう随分前にメルマガでも取り上げたあのバイパー!
17号→
http://www5b.biglobe.ne.jp/~atc/back17.htm
最終モデルのようです。
ヨーロッパ車だと各国で明確なイメージカラーもあったりするのですが、アメ
車は正直「?」。イエローはどうなんでしょうかね。
この年式、走行で2オーナー、更に売りだし中というのが、何だか車が可哀想
な気がします・・・
☆ベンツのウニモグ・部品取車☆
http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k7805976
正月明けにメルマガでも取り上げたウニモグですが、珍しいU1200の部品
取り車です。
2万円売り切りスタートですので注目でしょう。
状態ではベースにして起こすか、スペアの部品用か、微妙なところ(?!)で
すが、タイヤだけでも結構値が張るのでバリューかと思います。
SSRマーク1 2本!レーシング!深リム!暴走族!レア!
http://page2.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b54442795
シンプルなデザイン美のホイール、実は私も使用しています。
限られたほんの一部の車に似合うのですが、マッチすれば最高にキマりますよ
ね!
12Jだと更に車が限られてくる上に、もう2本、バランス良いのを探すのも
大変そうです。
ちなみに放熱性は見たマンマ、良くないですが、掃除が大変楽と言うメリット
があります♪
●●━…━…━…━ あなたも書いてみませんか? ━…━…━…━●●
この手の「この1台!」はそれぞれ思い入れの有るオーナーやマニアなど
皆さんが知識、経験など勝っているモノです。
あなたの愛車のバックグラウンドやウンチクを原稿として書いて見ませんか?
もちろん憧れの車や興味のある車種でも結構です。
好き嫌いや故障しがちな弱点、クセなども含めて頂けると面白いですね。
◇現在もれなく寄稿に対してプレゼントあります!◇
なにぶん物が物だけに書籍によって情報が違ってたりという事もよくあります。
双方向でお互いに情報交換や指摘、手助けなどが出来るメールマガジンになれ
ばいいなと考えています。
●●━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━●●
■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■
自動車輸入取り扱い業務に付きましてはHPに詳細を載せております。
本メルマガのご意見・ご感想・リクエストもお待ちしてます。
輸入車、希少車に関するご相談、雑談などもお受けしております。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
■発行・編集 M&Mインターナショナル
■URL
http://www5b.biglobe.ne.jp/~atc/
■Eメール mac525@anet.ne.jp
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
このメールマガジンは、『まぐまぐ』を利用して発行しています。
まぐまぐ http://www.mag2.com/ <ID:0000101452>
解除はこちら http://www.mag2.com/m/0000101452.htm
■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■〓■
その他の
関連コンテンツ
もご覧ください
フェイスブックページ
クラシックカー・スーパーカー総研
トライク・スペシャリティーズ
英語ページ
Return to TOP