2006年 2月22日(水)
回転式のボリュームはもう、いや!
当サイトで製作、紹介している「バットディテクター」や
「指向性マイク」など音声出力機器を製作すると必ず、抵抗式のメカニカルボリュームが必要になります。
このメカニカルボリュームを何とか、削減できないか、ということで。ボリューム専用ICなども検討してみましたが、小型のものがなかったり、
最適なものは入手が困難だったりと思うようにはいきません。そこで、PICでデジタルアンプを構成すれば、デジタルボリュームも同時に実現できるのでは、と考えて数週間。
やっとそれらしいものが出来上がりましたので紹介いたします。
●デジタルボリュームにすることのメリット
抵抗式のボリュームはその機能しか得られませんが、デジタルボリュームはプッシュスイッチで音量を制御でき、
プログラム次第ではこのスイッチを別の機能に柔軟に切り替えることが出来ます、ここがもっとも期待しているところなのです。
デジタルアンプとは
デジタルアンプとは「1ビットアンプ」又は「D級アンプ」とも呼ばれデジタル制御が可能な、電力VS出力効率の良いアンプです。
デジタルアンプは元となるアナログ信号をアナログ/デジタル変換することで、量子化し、この量子化されたデジタル値をPWM比率にすることで、
アナログ音声をデジタル的に出力することが出来るようになっております。PWMの出力にはL/CフィルターとLPFを接続すると音声が復元されます。
−−擬似D/A変換とでもいいましょうか = ※ΔΣ変調
この技術はすでに、さまざまなところで利用されており、例をあげると、MP3プレーヤーや携帯電話などがあります。
又、単体のオーディオアンプでは効率が良く、小型で発熱の少ない、大出力のアンプとして実用化されております。
PICで作るデジタルアンプ
デジタルアンプ。まずは小型化が条件の一つなので、8ピンPICを選択します。次にデジタルアンプですから、
PWMとADCを内蔵したタイプとして「PIC12F683」を採用しました。
今回はCPUを最高速でドライブする必要がありますので、クロックは20Mhzのセラロックを外付けします。
これで、I/Oは残り4ピンとなります。アナログ入力で1ポート、デジタル出力であるPWMで1ポート、残り2ポートはボリューム+/−の2ポートでぴったり全ポートを利用します。
●サンプリング周波数
デジタルアンプはサンプリング周期が音声品質を左右します。これはCDを例にとるとわかります。
ちなみにCDは44.1Khzでサンプリングしております。これは1秒間を44100分割して、44100回、数値化していることを意味します。
サンプリング周期としてPICのポートを2ポートも使ってセラロックを接続し最高速でCPUをドライブする理由はここにあり、
いかに、A/D変換回数を稼ぐかがポイントになります。今回、アクイジョンタイム、
要するにサンプリング&ホールド用のキャパシタへの被測定電圧の蓄電時間についてはPICのデータシートの推奨値19.7μSを無視して10μSで、AD変換しております。
音声なので精度は気にせず、聞こえればOKです。実際、10μSでもぜんぜん気になりません。
最終的にボリューム処理などを盛り込むと、サンプリング周期は15Khzになってしまいました。
音声品質はそれなりですが、なんとか使えそうなレベルです。
今回、添付しているソフトはボリューム処理を入れていないので、サンプリング周期は約34Khzです。
●PWM周期
次にPWM周期は可聴周波数上限(20Khz)より、極力高くする必要があります。なぜならば可聴周波数に近いと、ザーとかサーなど、
FMノイズが出力に残り、L/Cフィルター、LPFでも減衰させることが困難になります。又、無理に減衰させると目的の音声も減衰してしまうからです。
ここでは、TMR2のプリスケーラ値を1:1、PR2を7FHとしてPWM周期39.06KHZでドライブします。
この設定での最大分解能は9ビットですが、高速処理が目的のため下位1ビットを捨てて、8ビットを使用します。
当初は19.53KhzでFMノイズが気になりましたが、39.06Khzにして、だいぶよくなりました。
●アナログ入力
その次は、アナログ入力ですが、回路全体は5Vで動作させますので、アナログ音声入力のセンターは2.5Vです。
デジタル的には8ビットである256の2分の1、128が仮想0ボルトとなります。この128を中心として、ボリューム制御します。
●出力段
スピーカードライバーとしてPICのPWM出力をフルスイングさせるスイッチング部とL/Cフィルターからなります。
L/Cの定数は音質を第一にカット&トライで決めました。ここも音質を決定する重要な部分なので、まだ改良の余地があります。
●回路図とソフト
デジタルアンプとはいいながら、プリアンプにはアナログアンプを使用しております。
これはしかたがありません。
「PICでつくるデジタルアンプ回路図」 PDFファイル
※説明ではLPFを取り上げましたが、現状LPFはつけておりません。
「PICでつくるデジタルアンプ、ソフト」 HEXファイル
※このソフトはボリューム機能がありません。
●応用と今後
今回紹介した簡易デジタルアンプは抵抗式のメカニカルボリュームの置き換えから、赤外線音声送受信などにも、応用が出来ます。
又、簡単な音声加工や短時間の録音もたぶん可能になります。現状は音声品質とボリューム制御について、改善をおこなっております。
次回は動作の詳細説明と実際の音声をアップする予定です。
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