白骨温泉


泡の湯旅館本館 本館玄関ロビー
本館2階客室「竹501号」 新館1階の五月人形 新館1階の食事処
野天風呂 白骨温泉の碑 中里介山の碑

 400年以上の歴史があると言われる白骨温泉は、多くの文人が滞在した自然豊かな山間の温泉です。地形が舟の形をしているから、あるいは湯舟に湯の成分が付いて白い舟に見えるから、シラフネ/シラホネと呼ばれたと言われているそうです。大正2年に中里介山が書いた小説「大菩薩峠」でこの地が紹介され、広く知られるようになったようです。効能豊かなお湯は、「3日入れば3年風邪をひかない」と伝えられています。湧き出した時には透明なお湯が、時間が経つと空気に触れて白くなるため、透明なお湯と白濁したお湯の2種類のお湯があります。
 白骨温泉へ入るルートは、国道158号線の沢渡から県道を入るルート(松本方面から最短だが冬季通行止め)、上高地乗鞍スーパー林道を南(乗鞍高原)から入るルート(通年通行可能)、北(中の湯)から入るルートの3つがありますが、沢渡からの県道の一部を除き、狭い山岳道路のため、注意が必要です。この温泉を秋と春に2回訪れました。

【媒香庵】
 初めて訪れたのは、長野市在住中の1998年秋の紅葉見ごろの時期でした。中の湯から大自然そのままの上高地乗鞍スーパー林道を走り、白骨温泉にたどり着くと、そこは山峡の秘境のムードが一杯で,山ははとても美しく色づいていました。また、週末とあって、狭い山間の街は観光客で大混雑していました。当初は美しい紅葉を見ながら公共野天風呂に入るつもりでしたが、満員で入場制限され、いつ入れるかわからない状況だったので断念し、温泉街の一角にある日帰り入浴施設の煤香庵へ入ることにしました。建物は民芸調の和風建築であり、独特の風情がありました。しかし、ここも混雑していて順番待ちだったので、結局しばらく待つことにしました。お風呂は露天風呂のみであり、こじんまりしていますが、色づいた山々を目前に入るのは、とても気持ちよいものです。お湯は乳白色の濃厚なものであり、体がポカポカに温まる感じです。この煤香庵は、白骨温泉を代表する老舗旅館の湯元斎藤旅館が経営する日帰り温泉施設です。同旅館を始めとして、歴史と情緒ある風呂自慢の魅力的な温泉旅館が多数あるので、白骨はできれば泊りがけで訪れたいものです。上高地や乗鞍岳も近いので、北アルプスの自然と温泉を満喫するには格好の拠点となります。
 日帰りで入浴できる温泉は、公共野天風呂、煤香庵のほかに広い露天風呂が有名な泡の湯旅館、少し足を伸ばして乗鞍高原の乗鞍湯けむり館等がありますが、温泉をゆっくり楽しむのであれば紅葉の時期の週末は避けた方が賢明かもしれません。

【泡の湯旅館】
 未だ山に残雪多い初夏に、7年ぶりに白骨温泉を訪れ、泡の湯旅館に宿泊しました。泡の湯旅館は、大正元年創業の歴史ある旅館です。白骨温泉の中心街から上高地乗鞍スーパー林道の細い山道を乗鞍高原方向へ車で上ること約3分、泡の湯旅館の本館、新館、泡の湯外湯(日帰り温泉)の3つの建物が現れます。宿泊した客室は、本館2階の2間続き(8畳+6畳)の
角部屋「竹501号室」です。本館は昭和初期の建物で、創業時の面影をそのまま残す木造3階建ての和風建築です。館内は昔ながらの玄関、黒光りの階段等、往年の雰囲気がそのまま残されています。客室は、ドアや壁、天井等改装されて真新しくなっていますが、窓枠や床の間等に昔の面影が残されています。客室の窓からは、本館の玄関、駐車場、混浴野天風呂、未だ雪の残る山々を望むことができます。
 お風呂は、混浴の大野天風呂、男女別内湯、男女別野天風呂の3つがあります。(他に外来入浴専用の露天風呂と内湯もあり) まず、泡の湯の代名詞にもなっている混浴
野天風呂は、敷地内の庭園にあり、広さ70畳という大きなお風呂です。3本の源泉が打たせ湯になって注ぎ込んでいます。お風呂は開放感と野趣満点であり、庭園や山々だけでなく、旅館の本館や新館、駐車場も望むことができます。ということは逆に客室や駐車場からもお風呂が見えることになりますが、お湯が白濁しており、また男女別の更衣室から直接湯に入り込む構造であり、女性用のバスタオルが備え付けてあるため、女性も安心して入浴できます。実際にカップルや家族の入浴客が中心でした。次に、内湯と隣合わせの男女別野天風呂は、ややこじんまりしていますが、やはり庭園や山々の自然を楽しむことができます。最後に、内湯は建物も湯舟も床も全て総檜造りのとても風情あるお風呂です。檜造りの四角い湯舟が2つあり、1つは少し白濁の「あったか湯」(40度)、もう1つは透明な「ぬるめの湯」(37度)です。「ぬるめの湯」は入ると体に泡がつく感じになり、「泡の湯」の由来になっています。
 お湯は、野天風呂は、混浴・男女別とも白濁のぬる湯です。内湯は上記のとおり、白濁と透明の2種類です。いずれのお湯も硫黄の香りが大変心地よく、温めのため、ゆっくり浸かることができます。また、お風呂の入り口には飲泉場があり、効能豊かなお湯を飲めるようになっています。
 食事は夕朝食とも新館1階にある個室食事処で会席料理を楽しみました。夕食では信州牛の石焼や岩魚の塩焼、煮物や蕎麦、更に献立表にない女将さんの気まぐれ小鉢が数品あり、ヘルシーで大変満足するメニューでした。夕食後には客室に夜食の蕎麦おにぎりが届けられていました。朝食では(予約制の)温泉粥を楽しみ、食後に新館ラウンジで女将さん提供のモーニングコーヒーとケーキを味わいました。また、朝の入浴後には、飲用の冷たい自然水が廊下に用意されていました。細かいところまでサービスや心配りが行き届いており、歴史や温泉インフラだけでなく、サービスも含めて大変水準の高い、とても素晴らしい旅館と感じました。

 前日チェックインの前に、白骨温泉の中心街で、旅館組合により温泉粥が提供されており、立ち寄って味わいました。温泉の硫黄の香りがする温泉粥は、マイルドでヘルシーな味わいでした。また、
中里介山の大菩薩峠の碑等、温泉街を散策しました。


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