ハリマオの設立話 第6話

【ポジション:マネージャー】

平成7年1月2日、新年会で新たな目標を掲げた。例によってまた夢物語を語っていた。

ハリマオの選手を30人体制にし、ひとり2ポジションをこなす。

一勝する。

女子マネージャーを入れる。

 高校時代、女子マネージャーは他の部にはあまりいなかったがラグビー部にはいた。

同期には、(怖かった)大野さん、(ほのぼのとした)日比野さん、(やさしい)八巻さんの3人が所属していた。三者三様で中々いいトリオだった。他校に試合に出かけた時は、何となく鼻が高かった。気持ちの中ではハリマオは高校時代の再現を目指していたので、当然、女子マネージャーが欲しかった。

 同窓会の折に大至急、彼女たちに声をかけた。名西ラグビー部のことはとっても懐かしがってくれたが、『今更、マネージャーもないでしょう』とのことだった。当然の反応かもしれない。彼女たちの中では、ラグビーは『いい思い出』になっていた。

 これで諦めないのが当時のぼくであった。自分の中では、ラグビーを思い出に出来なくて、狂ったように燃えていた時期であった。

 色々と人選に思いを巡らせた。こちらからお願いするにだから変な人に声をかけたくなかった。変な人に声をかけて断られたらムチャクチャ腹が立ちそうだからである。

 そしてたどり着いたのが、中嶋桂子(桂ちゃん)であった。

 彼女のことは幼いころから知っているがとても『いい奴』である。『いい奴』と言うと本人は怒るがもっとも適した表現だと思っている。人柄、性格、協調性、スポーツ好きと我々にとってはもってこいの人材であった。彼女に決めた。

 当直の夜、誰もいない事務所でひとりで考えていた。

我々にとってはもってこいであるが、肝心なことの答えが見つけられないでいた。彼女にとってマネージャーをする『意義』がないのである。ず〜と考えたが見つからない。

 平成7年1月23日当直の夜、答えを見つけられないまま、彼女に電話をした。

これから訳の分からない話しをするかと思うとドキドキした。電話のコールしている時間が長く感じられ、もう少し考えをまとめてからにしようかと思い、切ろうとしたら出てしまった。

「あの〜、林ですけど…」

突然の電話にびっくりしているようだ。

唐突に切り出していた。

「いっしょにラグビーやらない?」

我ながら、もう少し言い方がないのか思った。血が逆流した。次ぎに何と言えばいいのだ?
『え〜〜』

突然の電話の唐突な話しに彼女はことばを失っている。状況がつかめないようだ。

もっともだ、ムチャを言っているのは分かっている。返事がない。

何かしゃべってくれ〜。沈黙が重い。我々とは違い、名西への思い入れもないだろうし、スポーツが好きでもラグビーが好きかどうか分からないし、メンバーも小島しか知らないし、おじさんばっかりで女性はいないし…

しかし、この沈黙の間に、あれほど考えても見つからなかった答えが見つかった。

(彼女もハリマオになればいいんだ。

 ハリマオのマネージャーじゃなくって、彼女自身がハリマオになればいいのだ。

 ポジションが、マネージャーなのだ。)

そう思った瞬間から、雄弁になった。ラグビーのすばらしさ、ハリマオの生い立ち、メンバーのエピソード、桂ちゃんが向いていること等々、語りまくった。

そして彼女が言った。

『他にどなたかいらっしゃらないんですか?』

「いない」

『わたしなんかでいいんですか?』

「いい。いいから電話しているの」

『わたし、みなさんを知らないし〜』

「メンバーはぼくが保証する。武骨ではあるけれどいい奴ばっかりだよ。変な奴はチームに入れないもん。肩身の狭い思いはさせないよ」

電話の向こうでは断る理由を探しているようだった。

『わたしが入って何かあるんですか?』

「ぼくたちは楽しくなる」

『わたしは?』

「15人のすばらしい仲間が出来る」

まだ何か断る理由を探している。釈然としないのだろう。

『わたしマネージャーやったことないですよ』
「ぼくもない」

『何か変だと思いませんか?』

「ぜんぜん。」

『だって〜だって〜』

「だってじゃないの」

意味不明の会話が続いた。

『ん〜、行く時はどうやって行くんですか?』

「迎えに行きます」

『どうして、わたしなの?』

「きみだから誘ってるの」

しばし禅問答のような会話が続き、ようやく

『じゃ〜、やるやらないは別にして、今度の練習見に行こうかな』

「やった〜」

こうして、初の女性ハリマオが誕生した

  ハリマオの設立話 第5話へ         ハリマオの設立話 第7話へ