π/6代入の場合を調べました。非明示の場合が現代数学で不明である理由を与えました。
予想L-2Bを提示しました。実2次体ゼータはcos世界の住人、虚2次体ゼータはsin世界の住人であることがわかり
ました。保型形式との関連を示唆。
ここでは、まず@の重回積分-重回微分の結果に、π/6を代入した場合を調べます。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
まず@を重回積分-重回微分した結果を書き下していきます。微分側は二つのみとしました。
[重回積分、重回微分した一連の式]
・
・
2回微分
0=-(cosx + 2^2cos2x + 3^2cos3x + 4^2cos4x + ・・・・)
1回微分
0=- (sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・・)
0回積分
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・
1回積分
π/2 - 1/2・x=sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・
2回積分
π/2・x - 1/2・x^2/2!=- (cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + ・・・) + ζ(2)
3回積分
π/2・x^2/2! - 1/2・x^3/3!=- (sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + ・・・) + ζ(2)・x
4回積分
π/2・x^3/3!- 1/2・x^4/4!= (cosx/1^4 + cos2x/2^4 + cos3x/3^4 + ・・・) - ζ(4) + ζ(2)・x^2/2!
5回積分
π/2・x^4/4!- 1/2・x^5/5!= (sinx/1^5 + sin2x/2^5 + sin3x/3^5 + ・・・) - ζ(4)・x + ζ(2)・x^3/3!
6回積分
π/2・x^5/5!- 1/2・x^6/6!
= - (cosx/1^5 + cos2x/2^5 + cos3x/3^5 + ・・・) + ζ(6) -ζ(4)・x^2/2!+ ζ(2)・x^4/4!
と、このように上下に延々と続いていきます。
上の式の x にπ/6を代入すると、次のようになります。
[π/6代入の式]
・
・
2回微分
-√3/2・LB(-2) - 2・(1-2^3)(1-3^3)ζ(-2)=0
ζ(-2) =0 より、LB(-2)=0。
1回微分
-√3/2・2(1+2^2)・LA(-1) - 1/2・(1+3^2)・L(-1) =0
L(-1) =0 より、LA(-1)=0。
0回積分
√3/2・LB(0) + 1/2・(1- 2)(1 - 3)ζ(0)=-1/2
1回積分
√3/2・(1+1/2^0)LA(1)/2 + 1/2・(1+1/3^0)L(1) =π/2 - 1/2・(π/6)
2回積分
-√3/2・LB(2) - (1-1/2)(1-1/3)ζ(2)/2^3 + ζ(2)
=π/2・(π/6) - 1/2・(π/6)^2/2!
3回積分
-√3/2・(1+1/2^2)LA(3)/2^3 - 1/2・(1+1/3^2)L(3) + ζ(2)・(π/6)
=π/2・(π/6)^2/2! - 1/2・(π/6)^3/3!
4回積分
√3/2・LB(4) + (1-1/2^3)(1-1/3^3)ζ(4)/2^5 - ζ(4) + ζ(2)・(π/6)^2/2!
=π/2・(π/6)^3/3! - 1/2・(π/6)^4/4!
5回積分
√3/2・(1+1/2^4)LA(5)/2^5 + 1/2・(1+1/3^4)L(5) - ζ(4)・(π/6) + ζ(2)・(π/6)^3/3!
=π/2・(π/6)^4/4! - 1/2・(π/6)^5/5!
6回積分
-√3/2・LB(6) - (1-1/2^5)(1-1/3^5)ζ(6)/2^7 + ζ(6) - ζ(4)・(π/6)^2/2!+ ζ(2)・(π/6)^4/4!
=π/2・(π/6)^5/5! - 1/2・(π/6)^6/6!
・
・
と、LA(2n+1)とLB(2n)とL(2n+1)とζ(2n)が現れる式が並びます。
これらは非明示の場合でも出てきましたが、全てディリクレのL関数L(χ,s)です。
ζ(s)はもちろんリーマン・ゼータですが、L(s)、LA(s)、LB(s)はそれぞれ次のゼータ関数です。
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + 1/9^s - 1/11^s + 1/13^s - 1/15^s + ・・・
LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + 1/7^s - 1/8^s + 1/10^s - 1/11^s + ・・・
LB(s)=1 - 1/5^s - 1/7^s + 1/11^s + 1/13^s - 1/17^s - 1/19^s + 1/23^s + ・・・
簡単にいえば、ζ(s)は、全てのaに対しディリクレ指標χ(a)をχ(a)=1としたときのL(χ,s)です。
L(s)は、a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対し、それぞれχ(a)=0, 1, 0, -1としたときのL(χ,s)に一致します。
LA(s)は、a≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(a)=0, 1, -1としたときのL(χ,s)に一致。
また、LB(s)は、mod 12に対応したディリクレ指標χ(a)をもち、
「a≡1 or 11 mod 12-->χ(a)=1、 a≡5 or 7 mod 12 -->χ(a)=-1、 それ以外のaではχ(a)=0」という
χ(a)に対応したL(χ,s)となります。
(なお、LBとかLAとかいう呼称は、私が勝手につけたものにすぎませんのでご注意ください。)
LA(2n+1)もLB(2n)もL(2n+1)もζ(2n)もすべて値が明示的に求まるものであり、現代数学ではっきりわかっている
ものです。
上の結果は、「火星 その6」の<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )にπ/6を代入>の非明示の場合と
比べてください。非常に美しい対称性をなしていますね。
ここでは、π/6を代入したらLA(s),LB(s),L(s),ζ(s)の値が明示的に求まる場合の特殊値がどんどんと出てくる、
ことがわかりました。
ここまで、π,π/2,3π/4,π/6代入の各場合を見てきました。
そして、この「土星」での明示的な場合の結果が、「火星」や「木星」の非明示の場合と完全な対称性をもっていること
に気付かれたことと思います。
例えば、一つ上のπ/6代入の明示的な場合の結果と、<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )にπ/6を代入>
の非明示の場合の結果を見比べてください。
一つ上の明示的な場合では現代数学で値が分かっている特殊値ばかりが現れていますが、一方、非明示の場合の
<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )にπ/6を代入>では現代数学で値が全く分からないとされる特殊値ばかり
が現れているのです。
しかも、同じ種類のL(χ,s)がきれいに一つ違い(積分・微分の行)に出現するというきわめて美しい秩序が現れている。
その原因というのも、結局、明示的な場合はAを中心母等式とするのに対し、非明示の場合は@を中心母等式とする
ことにあります。
ゼータたちが生み出されるのは、Aは@の右辺の”三角関数の級数”にあります。
右辺が母体となって、そこから生命体ゼータが生み出されてくる。
重回積分-重回微分という作用を一回一回作用させていく毎に、次々とL(χ,s)の特殊値たちが生み落とされていくの
でした。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----A
ところが、@は出発がコサインであり、一方Aはサインとなっています。
この出発時点の相違が、後々のすべてを決定づけているのです。
@にいくら重回積分-重回微分を作用させても明示的な場合の特殊値しか出てこないのです。
また、Aにいくら重回積分-重回微分を作用させても、非明示の場合の特殊値しか出てこない。
リーマン・ゼータでいえば明示的な場合はもちろん・・ζ(2),ζ(4),ζ(6),・・・であり、非明示の場合のそれは、
・・ζ(3),ζ(5),ζ(7)、・・です。L(s)では、・・L(3),L(5),L(7)、・・が明示的な場合であり、・・L(2),L(4),L(6),・・・
が非明示の場合となります。他のどんなL(χ,s)でも、明示、非明示は偶数、奇数で分かれているわけです。
では、なぜ明示的な場合はよくわかり(具体的値が求まる)、非明示の場合はさっぱりわからないのか、@とA
を見れば、その理由がわかるのです。
それは@とAの左辺が鍵をにぎっている。
@の左辺は、いくらでも簡単に重回積分-重回微分でき、xにqπ/kを代入すれば直ちに、具体的な値として求まり
ます。右辺ではゼータがでるわけですから、結局@を中心母等式した場合は、ゼータの特殊値は全部きれいに求まっ
ていくわけです。
ところが、Aの左辺は、2回積分以降は解析的にきれいに計算できないという事態に陥るのです。
それは「火星」シリーズを見てもらうとすぐにわかるでしょう。∫log(2sin(x/2))や∫∫log(2sin(x/2))や・・が
たくさん出てきたのもそのためです。これらは、計算不可能なのです。
[偶数ゼータの無限和]としては表現することはできるのですが、しかし、先の理由から、どこまでいってもきっちり
と求まることはない、ということになります。
例えば、@(明示的な場合)で、Aという種類の特殊値たちが偶数行ばかりに現れる場合、面白いことにそのとき
AではAの非明示の場合の特殊値が必ず奇数行ばかりに現れることになる。よって、Aの奇数の値A(2n+1)は
「現代数学でさっぱり不明」となっていたのです。
あるいは、@(明示的な場合)でBという種類の特殊値たちが奇数行に出る場合は、そのときはAではBの非明示
の場合が必ず偶数行に現れる。よって、Bの偶数の値B(2n)は「現代数学でさっぱり不明」となっていたという
わけです。
以上より、なぜ非明示の場合が現代数学でさっぱりわからないとされるかの理由もあらかたわかったといえる
かもしれません。
こんなカラクリが隠されていたわけです。
ただ、「火星」や「木星」(あるいはこの「土星」)で見たのは、mが4n+2 または 4n+3の場合の2次体Q(√m)に
対応するディリクレのL関数L(χ,s)でした。
mが4n+1の場合の2次体に対応するL(χ,s)に関してはいまだ本サイトでもよくわかっていません。
よって、上で述べたことは、厳密には、「mが4n+2 または 4n+3」型の2次体Q(√m)に対応するL(χ,s)に関すること
である、という限定がつきます。
しかし、「mが4n+1」型の2次体Q(√m)に対応するL(χ,s)の場合でも、自然な類推として、ここで述べた理由と
同じようなことになっているのだろうと予想されます。
さて、ここまでくれば、予想L-2の類似を、この明示的な場合にも提示できることが自然にわかってきました。
それを次で述べます。
ここまでくると、明示的な場合にも自然に予想L-2の類似の予想が提示できることがわかります。
それを予想L-2Bと名付けましょう。
π,π/2,3π/4,π/6代入の各場合を観察してわかることは、「偶奇性の規則」がこの明示的な場合は
非明示の場合と比べて、虚と実が逆になっているということです。
冒頭のπ/6代入を見てください。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
@を中心母等式とした場合、次のようになっています。
π/6では、qπ/kのkが6であり、よって、「mが4n+2 または 4n+3」型の2次体Q(√m)ではQ(√3)に
対応します。実2次体Q(√3)に対応するL(χ,s)はLB(s)であることがわかっていますので、冒頭を見ると
たしかに、この「偶奇性の規則」通り、偶数回のところに出ています。めでたしです。
このように、明示的な場合の「偶奇性の規則」は、非明示の場合のそれと逆になって出てくるのです。
以上より、明示的な場合の予想L-2Bは次のようになります。
これまで土星でやったπ/2,3π/4,π/6代入の結果を表B-2として載せておきます。
L(χ,s)本体が露に出現する場合を◎で、分身を経由して出現する場合を○で表現しています。
◎、○どちらでも”予想が成り立っている”ことを意味します。(予想が破綻した場合は×を挿入するつもりです。)
まだこれだけしか調べていませんが、一つ上で言及した完全な対称性より、予想L−2と同様に他の場合も成立して
いるであろうということは容易にわかります。
表B−2
注意1:青字は、各々の2次体に対応するL(χ,s)を示す。
注意2:一番下の行の「偶,奇」は、Q(√m)に対応するL(χ,s)特殊値が偶数回の積分(微分)の所に現れた場合に「偶」、
奇数回の積分(微分)の所に現れた場合に「奇」と記しています。
ください。
「その3」以降で、この予想L-2Bを確めつつ、さらに多くのqπ/k代入を試みていきます。
二つ上の<非明示の場合が現代数学で不明である理由>では、次のように説明し、なぜL(χ,s)特殊値の
半分がいまだ現代数学で不明となっているのかの理由を与えました。
もう一度抜き出しますと、次のように説明しました。
******************************************************************************************
例えば、@(明示的な場合)で、Aという種類の特殊値たちが偶数行ばかりに現れる場合、面白いことにそのとき
AではAの非明示の場合の特殊値が必ず奇数行ばかりに現れることになる。よって、Aの奇数の値A(2n+1)は
「現代数学でさっぱり不明」となっていたのです。
あるいは、@(明示的な場合)でBという種類の特殊値たちが奇数行に出る場合は、そのときはAではBの非明示
の場合が必ず偶数行に現れる。よって、Bの偶数の値B(2n)は「現代数学でさっぱり不明」となっていたという
わけです。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----A
******************************************************************************************
さて、上のことから、私は、面白い事実に気付きました。
結論を先に書けば、「実2次体のゼータはcos世界の住人であり、虚2次体のゼータはsin世界の住人である」という
興味深い事実がわかったのです。
詳しく説明します。
[説明]
「偶奇性の規則」は@を中心母等式とした場合、次のようになっています。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
一方、Aを中心母等式とした場合、「偶奇性の規則」は次のようになっている。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----A
この二つは、ちょうど逆の関係になっているのは先に述べた通りです。
さて、まず@に注目しましょう。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
ここでは、
奇数回の微分・積分の所に----->右辺にはsinの級数が現れる。
偶数回の微分・積分の所に----->右辺にはcosの級数が現れる。
となっていることは容易にわかります。
(例えば、1回∫や3回微分すれば、右辺はsinの級数となるからです。)
次に、Aに注目しましょう。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----A
ここでは、
奇数回の微分・積分の所に----->右辺にはcosの級数が現れる。
偶数回の微分・積分の所に----->右辺にはsinの級数が現れる。
そこで、この規則を上の二つの「偶奇性の規則」に組み込んで表現してみると次のようになります。
この二つを見てください。実2次体はcosに、虚2次体はsinに対応していますね。
これは、
実2次体に関するL(χ,s)の特殊値は、cos級数から生み出される。
虚2次体に関するL(χ,s)の特殊値は、sin級数から生み出される。
ということを意味しています。
具体的に述べると、実2次体のL(χ,s)特殊値は、次の一連のcos級数から(qπ/k代入で)生み出されていきます。
・
・
1^3cosx + 2^3cos2x + 3^3cos3x + 4^3cos4x + ・・・・
1^2cosx + 2^2cos2x + 3^2cos3x + 4^2cos4x + ・・・・
1cosx + 2cos2x + 3cos3x + 4cos4x + ・・・・
cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・
cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + + cos4x/4・・・
cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + + cos4x/4^2・・・
cosx/1^3 + cos2x/2^3 + cos3x/3^3 + + cos4x/4^3・・・
・
・
一方、虚2次体のL(χ,s)特殊値は、次の一連のsin級数から(qπ/k代入で)生み出されてくる。
・
・
1^3sinx + 2^3sin2x + 3^3sin3x + 4^3sin4x + ・・・・
1^2sinx + 2^2sin2x + 3^2sin3x + 4^2sin4x + ・・・・
1sinx + 2sin2x + 3sin3x + 4sin4x + ・・・・
sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・・
sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + + sin4x/4・・・
sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + + sin4x/4^2・・・
sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + + sin4x/4^3・・・
・
・
こんなふうになっているのです。
実2次体ゼータはcos世界の住人であり、虚2次体ゼータはsin世界の住人であるという面白いことが
わかったわけです。
一つ上で、実2次体はcos,虚2次体はsinということがわかったわけですが、これを簡単に覚える方法を思いつき
ました。
e^ix=cosx + i・sinx
というオイラーの公式を思い出すと、cosは実部、sinは虚部をなしていますね。
これは、「実2次体はcos,虚2次体はsin」というのとうまく対応しています。
よって、どちらだったかなと忘れそうになったら、このオイラーの公式を思い出して、「ああ実はcos、虚はsinだったんだ」
と思い出せばよいのです。うまい覚え方だと思いますので、みなさんも利用してください。
さて、上の覚え方は、たんに形式的なものにすぎませんが、しかし、それにしても、うまくできすぎているので、
本質的なところでもなにかあるのではないか・・と思わせます。
二つの中心母等式を並べてみましょう。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----A
Aの両辺を2で割って、そして@と並べましょう。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
(0 < x < 2π)
1/2・cos(x/2)/sin(x/2)=sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・ -----A
(0 < x < 2π)
この二式を眺めているとなにかをしたくならないでしょうか?
Aの両辺に虚数 i をかけて@と足してみましょう。
-1/2 + i/2・cos(x/2)/sin(x/2)
=(cosx+i・sinx) + (cos2x+i・sin2x) + (cos3x+i・sin3x) + (cos4x+i・sin4x) +・・・
=e^ix + e^2ix + e^3ix + e^4ix +・・・
=Σe^(inx) -------B
(n=1〜∞)
というように、どうしてもこうしたくなります。
これは、現代数学における保型形式というものに似ている気がします。
私は、まるで保型形式には詳しくはないのですが、「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)を
見ていると、上は保型形式の特殊な場合になっているようなのです。
加藤和也さんの受け売りになりますが、少し説明します。保型形式は複素平面の上半平面(Hと書く)
H={x + iy ; x,yは実数で,y > 0}
の上で定義される関数f(z)に関するものです。
一般に、上半平面上の保型形式f(z)は、
f(z)=ΣAn・e^(2πinx) -------C
(n=0〜∞)
と定義されます。そして、このf(z)に対応するゼータ関数をDのL(f,s)とおいて、これをその保型形式fのゼータ関数
と呼びます。
L(f,s)=ΣAn・n^(-s) ------D
(n=1〜∞)
面白いことに、このL(f,s)もオイラー積表示をもち、しかもその中身が2次になっているので、結局上半平面上の
保型形式から2次のゼータが現れるということになるのです。
もし、CのAnで、ラマヌジャンのτ(n)を採用すれば、そのときは、Cに対応するゼータは2次のラマヌジャンの
ゼータという有名なものになります。
私は保型形式にはうといので、これからは、私の推測も混じりますが、このBとCはどう見ても似ており、なにか
あると感じます。
加藤和也さんの「解決!・・」には、2次の保型形式のことばかり書いてあり、あまり1次の保型形式と複素平面の
ことにはふられていません。しかし「ディリクレのL関数L(χ,s)は1次の保型形式である」という意味のことが書かれ
ているので(P.30)、L(χ,s)も複素平面と繋がっていると考えられます。
Bより、ここで、x/2=πtとおくと、次のようになる。
-1/2 + i/2・cos(πt)/sin(πt) =Σe^(2πint) -------E
(n=1〜∞)
このように保型形式と同じような形になってしまうのです。
”CとDの関係の類似”をこの場合に当てはめてもよいのかどうか知りませんが、ちょっと大胆にやってみますと、
EよりAnはすべて1となりますから(上のC参照)、よってDより、このEに対応する保型形式のゼータ関数は
L(f,s)=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + ・・・
となって、なんとこれはリーマン・ゼータζ(s)に一致してしまうのです。
リーマン・ゼータを保型形式的に解釈するとこういうふうになるのでしょうか。ただしここでの議論は厳密さを欠いた
粗い議論と思いますので、また読者のご教示をいただければ幸いです。
最後に、Eの左辺は、もう少しきれいに変形できることに気付きましたので付け加えます。
Eの左辺=-1/2 + i/2・cos(πt)/sin(πt)
= i/2[{cos(πt) + i・sin(πt) }/sin(πt)]
=i/2{e^(iπt)/sin(πt)}
以上。
---------------------------------------------------------------------------------------------
追記2004/7/13
数学愛好家のSugimoto氏から面白い指摘を頂いたので紹介します。
すぐ上の数式に関してですが、メールで次のように述べられていました。
************************************
先程のメールにある式(*)を計算で確認しました。
(cos x+cos 2x+…) -i ( sin x+sin 2x +…) =(cos x-i sin x)+(cos 2x-i sin 2x)+… =e^(-ix)+e^(-2ix)+… =e^(-ix)/(1-e^(-ix)) =1/(e^ix -1) =-1/2 + 1/(2i tan (x/2) ) =-1/2 - i/2*cos (x/2)/sin (x/2) 従って -1/2 = cos x+cos 2x+… 1/2*cos (x/2)/sin (x/2) = sin x+sin 2x +… なるほど、こういう事ですか。 x/(e^x -1) はベルヌーイ数の母関数ですがそれを虚数へ拡張したようなものを
考えていることになるわけですね。
ただしe^(-ix)+e^(-2ix)+… = e^(-ix)/(1-e^(-ix)) = 1/(e^ix -1) 等は収束条件を無視
した形式的なものです。
* 「-1/2 +1/(2i)・cos(x/2)/sin(x/2) は 1/(e^ix -1) になる」というSugimoto氏ご指摘の式のこと。
************************************
なるほどと感心しました。上は結局、
-1/2 = cos x+cos 2x+…
1/2・cos (x/2)/sin (x/2) = sin x+sin 2x +…
という、二つの中心母等式の成立の別証明にもなっているわけです。
さて、このSugimoto氏の考察をヒントにすると、上の保型形式のところで見た式はさらに優雅な形に変形できる
ことに気付きます。
-1/2 + i/2・cos(x/2)/sin(x/2)
=(cosx+i・sinx) + (cos2x+i・sin2x) + (cos3x+i・sin3x) + (cos4x+i・sin4x) +・・・
=e^ix + e^2ix + e^3ix + e^4ix +・・・
=e^ix/(1-e^ix)
と、なんと -1/2 + i/2・cos(x/2)/sin(x/2) は、美しいe^ix/(1-e^ix) になってしまいました。
(これは直接的に cosx=(e^ix +e^-ix)/2 と sinx=(e^ix - e^-ix)/2i を用いても示せますが。)
すなわち、上で見たE式は結局、次のようになります。
e^(2πix)/(1-e^(2πix)) =Σe^(2πinx) -------F
(n=1〜∞)
このHPで中心的な役割を演じている次の二つの母等式の背後には、Fという優雅な式が隠れているということです。
-1/2 = cos x + cos 2x + cos 3x + ・・・
1/2・cos (x/2)/sin (x/2) = sin x + sin2x + sin3x + ・・・
以上。
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