2004/2/7
その1〜その14のまとめ


 「ゼータ関数のいくつかの点について」シリーズも「その14」まで来たわけですが、「その1」あたりをやっている
ときは半年後こんな状況になっているとは想像すらできませんでした。
 統一的法則性(重回積分-重回微分の規則)という美しい法則の発見で、ゼータ関数の全容がかなり見えてきた
のではないかと思います。
 そこで、本シリーズはこの辺で一区切りつけて、新しいシリーズをはじめたいと思うのですが、その前に1〜14ま
での流れを簡潔にまとめておきます。この「まとめ」を先に見てもらってから、「その1」〜「その14」を読んでもらえば、
私がどういう意図でゼータ、L関数を考察したかが、手にとるようにわかってもらえると思います。

 ごく簡単にいえば、「その1」〜「その7」までは奇数ゼータ値の具体例を見出しました。その手法は数学者のそ
れとはまるで違った初等的な方法でした。
後半の「その8」〜「その14」ではゼータ関数とL関数の様々な組合せに統一的法則性を徹底的に適用してゼー
タの奥底に潜む巨大な秩序を明らかにしました。その結果ゼータ水脈の水源は三角関数という全く初等的な関数
であるという驚くべき事実がわかりました。
全ての内容においてガンマ関数が現れていないことに数学を専門になさっている方はびっくりされることでしょう。

 ゼータという世にも美しいものが、数学の多くの地下水脈と繋がりあっているその様に数学の神秘、宇宙の
不思議を感じられることと思います。



        「ゼータ関数のいくつかの点について」の「その1」〜「その14」までの流れ

 その1
 私は奇数ゼータが未解明であることが不思議でなりませんでした。自分で解明できなくともなんらかの貢献ができ
ないものか?と模索していました。「ある関数」に注目しました。そのテイラー展開の面白さのとりこになりました。それ
Hurwitz (フルヴィッツ)のゼータ関数というものとよく似た関数だったのですが、わずかに違っていました。
その違いが後々大きな影響を及ぼすことになるのです。
   ↓

 その2
 「その1」での関数をさらに考察し、一般化しました。
   ↓

 その3
 公式集にあった三角関数の部分分数展開式と、「その2」での式が結びつくことに気付きました。
 その結果、三角関数とゼータ関数が結びついた式がいくつも出ました。それは、三角関数の逆数型関数の
 偶数ゼータや奇数L関数を係数にもつテイラー展開式であるともいえます。
  これらはじつは数学者がほとんど先に見つけていた式であるとわかりましたが、その時はなにも気付いて
 いませんでした。
   ↓

 その4その5その6
  不明とされてきた奇数ゼータの具体的な姿を重回積分という非常に初等的な方法で求めていきました。
 じつは、これらも近年数学者によって同じような結果が得られていることがあとでわかったのですが、方法論が
 まるで違っていました。数学者の方法はガンマ関数等を用いる高度なものですが、私のは非常に初等的な方法
 です。全く違う登山道が見つかったわけです。
 この「重回積分」という登山道のおかげで、少しのち、美しく強力な武器「統一的法則性」を発見することになる
 のです。
   ↓

 その7
  ここでは、黒川信重教授が発見された多重三角関数と、奇数ゼータの結果を組み合わせることができることに
 気付きました。これにより、多重三角関数の根源的な姿が明らかになりました。
   ↓

 その8
 美しい統一的法則性を発見しました。
 (統一的法則性とは私の勝手な呼称で、「三角関数のある等式に対する重回積分-重回微分の規則」のことです。)
 こんなにも簡明で美しい法則性がリーマン・ゼータの地下に眠っていたのです。
 この後、この統一的法則性が縦横無尽に活躍してくれます。「杉岡の逆問題」を提示。
   ↓

 その9
 ここでは、統一的法則性を元に、対称性の考察を広げました。
具体的には、奇数L関数の対称性成立、奇数ゼータの対称性成立?の調査、「逆問題」の拡張、自発的対称性破れ、
そして超対称性の成立を研究。
   ↓

 その10
 ここは少し道草をしてみつけた可憐な花々(等式)を並べました。
1,2、3、・・・という整数の世界はなんと、不思議と調和に満ちていることでしょう。
   ↓

 その11
 ここでは、cosx/sinxから奇数ゼータも偶数ゼータ数も全部が統一的法則性から導かれるというびっくりする
事実を見つけました。cosx/sinxをリーマン・ゼータの中心母関数と命名。また「奇数ゼータ=偶数ゼータの無限和」
となる根本的な理由を与えました。
さらに正の奇数ゼータのみならず、負の奇数ゼータでも「偶数ゼータの無限和」で表現できるという面白い事実を
発見。この事実からある着想を得て、私の予想を提示し、懸賞金をかけました。
佐藤郁郎氏のπ/4手法を利用することで、奇数ゼータにおける統一的法則性をL関数に拡張しました。
   ↓

 その12
  ここではL関数に目標を変えて、統一的法則性を果敢に適用していきました。すなわち、「その11」との類似
 L関数で行ったわけです。ここでも、統一的法則性の絶大な威力を見ることになります。
 ある場合の統一的法則性から、ディリクレのL関数の一種のL1関数、L2関数が出ました。
   ↓

 その13
 奇数ゼータと偶数L関数の間の関係性を考察しました。
すなわち、「その11」と「その12」の結果を組み合わせて研究したわけですが、奇数ゼータ関数と偶数L関数は、
地下深くで関係しあっていることがわかりました。
 また偶数ゼータと奇数L関数の関連性の追及から、「問題U」と「逆問題Tその2を解き、また奇妙な事実を見
つけました。無限次元行列という別表現を与えました。
 中心母等式に初等的証明を与えました。この証明には驚かれるでしょう。現代数学でよくわかっていない奇数ゼータ
と偶数L関数の母等式が誰でも証明できる初等的な式であったなんて、ちょっと信じられません。-->証明はこちら
   ↓

 その14
引き続き、奇数ゼータと偶数L関数の密接な関連性をさらに考察しました。
「その13」の方法を拡張することで奇数ゼータ、偶数L関数、L1関数、L2関数の関連性がわかりました。
L関数の無理数性の考察。またζ(3)のオイラー式に対応するL(2)式を出しました。またlogが作用するゼータ関数の
世にも不思議な式を示しました。またある問題を提示しました。

以上。



このシリーズをふり返って思うこと・・・

  加藤和也さんの著書「解決!フェルマーの最終定理」(日本評論社)に数学者・志村五郎氏の
     「整数論いたる所、ゼータ関数あり」
 という言葉が載っています。

 本シリーズでゼータを計算してきて、私がつくづく想うことは、
 「三角関数のある所、ゼータ関数あり!」
ということです。
 これは、このシリーズを読まれた方なら誰もが思ってしまうことでしょう。
 「ああ、ゼータの母なる星は、じつは三角関数(sin,cos)だったんだな」と。

 数学者は、「数学のあらゆるところにゼータ関数が関係しておりそれがとても不思議だ」というようなことをよく
語りますが、三角関数とゼータがここまで緊密な関係をもっていれば、それも当然と思えてきます。

 サイン、コサインというのは、数学すべての基本であり、数学の全分野にわたって用いられています。
よって、ゼータが数学のいたる所に顔をだし、一見関係のないような分野の橋渡しするという不思議な作用を
及ぼすのも、当然ではないかと思います。
加藤和也さんの”化身”という言葉を借りると、

 「三角関数とはゼータ関数の化身であり、また逆も真なり!」

といえるのではないでしょうか。

注意:厳密に表現すれば、ζ(s)もL(s)も、ディリクレのL関数L(χ , s)の一種であることを思えば、今回見つけた統一的法則性は
L(χ , s)の中心を流れる大河であるともいえるでしょう。L(χ , s)は保型形式のゼータ関数です。χはディリクレ指標。

 現代数学最大の難問の一つ「リーマン予想」もこんな方向から見ることで、意外な解決の糸口が見えてこな
いとも限りません。
 若い数学者の卵に期待したいと思います。
                                                    杉岡 幹生








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