これまで不明とされてきた奇数ゼータζ(3)の具体的な姿を見つけました。
リーマン・ゼータ関数のζ(3)の具体例を見つけました。
数学の世界で250年間、「その姿は全く不明」とされてきたものです。(ζ(3)が無理数であることは、1978年にフランス
のアペリーが証明しています)
その姿は次のようなものとなりました。
ζ(3)=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}]
(n=1〜∞) 偶数ゼータの値はすべて分かっていますので、ζ(3)を最も具体的な形で表せたということです。
ちなみにζ(2)=π^2/6、ζ(4)=π^4/90、ζ(6)=π^6/945、ζ(8)=π^8/9450、ζ(10)=π^10/93555、・・です。
これら偶数ゼータの値を代入して具体的に書けば、次のようになります。
ζ(3)=2π^2/7logπ - π^2/7
- π^4/168 - π^6/30240 - π^8/2540160 - π^10/169344000 - ・・・
ζ(3)が偶数ゼータで(πベキの級数展開で)表せるとは、私自身驚きました。
M先生によれば、奇数ゼータは、 「 有理数体上代数的に独立になると信じられており、無限和や積分などで表すことは色々可能でも、
有理数から始め有限個の四則で表すことは出来ないというのが、現在の専門家の予想である。」
ということですので、これ以上簡明にすることはできないと思われます。 さて、どうやって導いたかですが・・・・、じつはオイラー(1707-1783)の式を利用しました! 驚くべきことにオイラーは、つぎの形まで求めていました。 ζ(3)=(π^2/7)log2 + 16/7∫x・log(sinx)dx (積分範囲は0〜π/2) ---A これはゼータ研究の第一人者である黒川信重さん(東京工業大学教授)の著書「数学の夢 素数からのひろがり」
(岩波書店)に載っているものですが、あまり知られていない式だそうです。
ただ、オイラーの表記ではまだまだ不満足です。積分で具体的な形が隠れており、よくわからないからです。 Aの積分計算も、私には手がつけられません。 ところが、その3のlog(πx/sinπx)の式の発見で私が導いた摩訶不思議な等式 log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ } ----B を利用すれば、全く簡単に@を導くことができるのです! 左辺を logπx - log(sinπx) として、πx=t などと変数変換してから、オイラーの式に放りこみ延々と計算すれば、
冒頭の式に辿りつきます。高校レベルの初等的な計算です。
Bというこのあまりにも不可思議な式はやはり重要なものだったのですね。ζ(3)解明の鍵を握っていた・・ 検算もしましたが、@は全く正しい結果となりました。 ζ(3)の数値的な値は、ζ(3)=1.2020569031・・ となります。
すなわち、ζ(3)=1 + 1/2^3 + 1/3^3 + 1/4^3 + ・・・・ = 1.2020569031・・ です。
(この値は、下記Sugimoto氏のHPからとらせてもらいました。)
この値に漸近的に収束していくかをたしかめましたが、急速に上記値に近づいていきます。収束がとても速いので
確めるのも容易なのです。みんさんも、ぜひたしかめてみてください。
それにしても、信じられません。数学者が250年間捜し求めていたものが見つかったのですから! もう一度書いておきましょう。 ζ(3)=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}] (n=1〜∞)
あるいは、ζ(0)=-1/2ですから、次のように神秘的な形でも表現できます。
ζ(3)=(2π^2/7)[log π + ζ(0) - Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}]
(n=1〜∞)
ζ(3)はこんなにも美しい姿を見せてくれました。
ゼータはどこまでもきれいなんですね。こんなにも調和に満ちた姿をみることができてうれしいです。
報告
n=5以上の具体例も見つけました。---> <ゼータ関数のいくつかの点について その5>
追記 2003/9/22
Sugimoto氏の数学研究ノート
上記Sugimoto氏のHPに、ゼータ関数その他に関して興味深い研究がなされています。奇数ゼータも本サイトとは
また違った観点からの研究されていて参考になります。
また、Sugimoto氏は、私の導いたlog(πx/sinπx)の式は、マグロウヒル公式集(*) 20.48に載っている次式と
ベルヌイ数Bnの一般公式(これもマグロウヒル公式集21.8に記載)を組み合わせれば出てくることも指摘してください
ました。
ln| sinx |=ln| x | - x^2/6 - x^4/180 - x^6/2835 - ・・・・・- 2^(2n-1)・(2^2n - 1)Bnx^2/(n(2n) ! ) - ・・・
私は、log(πx/sinπx)式を非常に複雑な方法で導き、もっと別の簡明な導き方もできるはずと思っていましたが、
既存の式の組合せでも導けるとわかりました。勉強になりました。ご指摘に深く感謝致します。
*「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R.Spiegel 著、氏家勝巳訳、オーム社) <---素晴らしくまとまってい
る公式集です!
じつはlog(πx/sinπx)式は自然に導くことができます。その証明ができましたので、お伝えします。
(上のマグロウヒル公式集の式とも関係するのかもしれませんがこれはこれで独立的に行います)
佐藤郁郎氏から、log(πx/sinπx)の式はsinπx/πx=Π(1-x^2/k^2)から導けないか?との質問を受け、私が行った
ものです。
[導出方法]
sinπx/πx=Π(1-x^2/k^2)の両辺のlogを取ります。すると、次のようになります。
log(sinπx/πx) =log(1- x^2/1^2) + log(1 - x^2/2^2) + log(1 - x^2/3^2) +・・・----@ さて、ここでlog(1+x)のマクローリン展開 log(1+x)=x - x^2/2 + x^3/3 - x^4/4+・・---A (-1< x <=1) を使います。 @の各項に、Aのマクローリン展開を利用するのです。すると、 log(1-x^2/1^2) =-x^2 - x^4/2 - x^6/3 - x^8/4 -・・・・ log(1-x^2/2^2) =-x^2/2^2 - (x^4/2^4)/2 - (x^6/2^6)/3 - (x^8/2^8)/4 -・・・・ log(1-x^2/3^2) =-x^2/3^2 - (x^4/3^4)/2 - (x^6/3^6)/3 - (x^8/3^8)/4 -・・・・ ・ ・ ですから、これらを両辺足し合わせて(縦に同じxの次数のものでまとめます) log(1-x^2/1^2) + log(1-x^2/2^2) + log(1-x^2/3^2) +・・・ =- (1/1^2 + 1/2^2 + 1/3^2 +・・・)x^2 - (1/1^4 + 1/2^4 + 1/3^4 +・・・)x^4/2 - (1/1^6 + 1/2^6 + 1/3^6 +・・・)x^6/3
・
・
となります。つまり、 log(1-x^2/1^2)+log(1-x^2/2^2)+log(1-x^2/3^2)+・・・ =-ζ(2)x^2 - ζ(4)x^4/2 - ζ(6)x^6/3 -・・・ =-2{ζ(2)x^2/2 + ζ(4)x^4/4 + ζ(6)x^6/6 +・・・} となります。これと@とから、
log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ }
が出てきます。
終わり。 このように非常に自然に導けるのです。まさかこんな証明があるとは思いもよりませんでした。 佐藤さんの”勧め”に感謝です!
ふとした疑問が起こりました。ζ(3)は超越数なのだろうか?という疑問です。
上でも示しましたが、ζ(3)の最も具体的な形を書けば、次のようになります。
ζ(3)=2π^2/7logπ - π^2/7
- π^4/168 - π^6/30240 - π^8/2540160 - π^10/169344000 - ・・・
ζ(3)は、はたして超越数なのでしょうか?
その正体が具体的に求まってしまった今、この問いも意味があるのではと思い問うています。
超越数とは、
「有理数a1, a2, a3, ・・・を係数とする方程式
x^m + a1x^(m-1) + a2x^(m-2) +・・・・+ am = 0
の解となるような数を代数的数とよび、そうでない数を超越数とよぶ。」
と、このように定義される数です(小林昭七先生の「円の数学」より引用)。
意味するところはわかりますが、なかなか難しいですね。
ですから、x^2 - 2x - 4 =0などの解の数 x=1±√5は代数的数ですし、また x^2 - 3x + 5 =0 の解の数
x=(3 ± i √11)/2 も複素数ですが代数的数となります。
歴史的に見れば、エルミート(1822-1901)が1873年に 自然対数の底 e が超越数であることを証明し、続いて
リンデマン(1852-1939)が1882年に懸案であったπの超越性を証明しています。
これらは当時の数学界の超難問でした。この二つは超越数であることがわかったのです。
その後も、超越数に関してはいくらかの進歩が見られるようですが、詳しくは、小林昭七先生の著書「円の数学」
(裳華房)等を参照してください。
この本には、リンデマンの「πが超越数であること」を示した証明がのっていますが、あまりの難しさに頭がくらくら
しそうです。
ちなみに、eが無理数であることをオイラーが示したのは1744年。πが無理数であることはランベルトにより1770年
に示されました。
話が脱線しました。
ζ(3)が超越数かどうかということです。
その前にじつは偶数ゼータζ(2)、ζ(4)、ζ(6)、ζ(8)・・・が超越数か?ということもじつは私にはわかりません。
ζ(2)=π^2/6、ζ(4)=π^4/90、ζ(6)=π^6/945、ζ(8)=π^8/9450、・・・などという形を見ると、たぶん超越数
なのでしょうがよくわかりませんので、ご存知であればどなたか教えてください。
追記2003/10/3
偶数ゼータζ(2n)がすべて超越数であることは、佐藤郁郎氏が次サイト「ゼータとポリログ関数」でなんと「オイラー
が既に示している」と載っていました。
偶数ゼータの単純な形よりも、ζ(3)のような無限級数で表されている数での問いの方が、より数学の問題
らしいので、ζ(3)を中心的に扱いたいということです。
問題として提示しておきます。
短い問題ですが、「解決できたよ!」というお便りを待っています。
私は、その3で、[πx/三角関数](あるいはπx/三角関数類似物)という形の興味深い等式をいくつも見出しました。
そして、それらは私が定義した完全形式の形にすべて表現できることも示しました。
いくつも式を出しましたが、すべて三角関数が分母に来ているものばかりでしたので、てっきり、πx/三角関数の形の
ものしか完全形式に表現できないのだろうと思い込んでいました。
ところが、ひょんなことから πx・tanπx も完全形式で表現できることがわかったのです。まずそれを書きます。
次です。
πx・tanπx=2{ (2^2-1)ζ(2) x^2 + (2^4-1)ζ(4)x^4 + (2^6-1)ζ(6)x^6 + ・・・ }
このように、分母に来ない形でも完全形式に表現できたのです。
式自体もきれいなものですが、それよりもなによりも、次式と比べください。
πx/tanπx=- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }
なんという対比の妙でしょうか!
tanxを分子から分母へ移すという大転換を行っても右辺はこのように似た秩序を依然保っている。
際立った対称性、保型性があるといえるでしょう。
この2式より、次式を導出するのは容易です。
(πx)^2/2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }
=2{ (1-2^2)ζ(2) x^2 + (1-2^4)ζ(4)x^4 + (1-2^6)ζ(6)x^6 + ・・・ }
それにしても美しい式です。神秘的ですらあります。
実数の範囲で考えれば収束の問題がありますから、上式は-1/2 < x < 1/2 で成り立ちます。
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