ここでは、黒川信重教授が発見された多重三角関数と、私のζ(3)の結果を組み合わせることにより、興味深い等式
を導くことができましたので、報告します。
ゼータ研究の第一人者 黒川信重教授(東京工業大学)は多重三角関数という特別な関数を発見されました。
それは三角関数の多重版ともいうべき面白い関数ですが、黒川教授は多重三角関数を用いて奇数ゼータが表示でき
ることを示されています。
私自身まだ深くは理解していないのですが、とにかくゼータ研究において非常に重要な関数のようです。
詳しくは次を参照してください。
さて、その多重三角関数のうちの一つ、三重サイン関数が、私の愛読書である「数学の夢 素数からのひろがり」
(黒川信重著、岩波書店)に載っています。
三重サイン関数S3(x)は次のようなものです。
S3(x)=e^(x^2/2)Π{e^(x^2)・(1 −x^2/n^2)^(n^2)}
(無限積Πは、n=1〜∞)
そして、これを用いた奇数ゼータζ(3)の表示は次のようになると本に記されています。
ζ(3)=8π^2/7log[2^(1/4)・{S3(1/2)}^(-1)] ------@
(AとBは似ているようでも全く違う式ですので注意してください。)
ζ(3)=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}] ------A
(n=1〜∞)
ζ(3)=(2π^2/7)[-logπ + 3/2 + 4Σζ(2n)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・2^(2n)}] -----B
(n=1〜∞)
@の三重サイン関数を用いたζ(3)表示を眺めていてAやBと組み合わせれば、面白い式が導けるのではないか?
と思いました。そうしたら、ほんとうに出たのです。
まず、@とAの組合わせから見ていきましょう。
両式からζ(3)を消去して変形します。変形自体は全く簡単ですので略しますが、最終的に次のような式が出ました。
logS3(1/2)=1/4[1/2 - log(π/2) + Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}] ------C
(n=1〜∞)
これを変形すると、次のようにもできます。
log[(π/2){S3(1/2)}^4]=1/2 + Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}] ------D
(n=1〜∞)
恐ろしく美しい式ではありませんか!
さて、次は、@とBを組みあわせれば、次のような式が出ます。
logS3(1/2)=(log2π)/4 - 3/8 - Σζ(2n)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・2^(2n)} ------E
(n=1〜∞)
これを変形すると、次のようにも表現できます。
log[2π{S3(1/2)}^(-4)]=3/2 + 4Σζ(2n)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・2^(2n)} ------F
(n=1〜∞)
これらもやはり美しく、そして不思議です。
(私のHPは「美しい」、「不思議だ」とそればっかり出てきますがほんとうですから仕方ありません。)
C〜Fの式を解釈すると、三重サイン関数の特殊値S3(1/2)は、logのトンネルをくぐり抜ければ
全ての偶数ゼータの無限和の世界に出る、ということなのです。
私はまだ多重三角関数についてほとんどなにもわかっていないので、はっきりしたことはいえませんが、
これはたいへん重要なことなのではないかと思います。
まとめておきます。
註:上から1番目と3番目、また2番目と4番目は同等の式です。
2003/10/18追加
上の@(or A)はじつはもっと簡明にできることに気付きました。
<ζ(3)の3番目の表式>でも使った次式を用いて、そこで行ったのと同様に@を1/n(n+1)=1/n - 1/(n+1)の
変形を用いて、まとめ直しました。
log(π/2)= Σ2ζ(2n)/{2n・2^(2n)}
(n=1〜∞)
すると、@(or A)は、次のように全く簡明な形で表現されるのです!!
log S3(1/2)= (-1/2)Σζ(2n)/{(2n + 2)・2^(2n)}]
(n=0〜∞)
あるいは
log S3(1/2)= ζ(0)Σζ(2n)/{(2n + 2)・2^(2n)}]
(n=0〜∞)
これ以上ないと思われるシンプルさで表せました。
三重サイン関数は、logを通じて偶数ゼータの無限和と密接に関連している、ということでしょう。
まとめておきます。
これまで奇数ゼータの特例の一シリーズを全部導けることを示してきましたが、驚いたことに、あと一シリーズ別種の
一連の式を導けることがわかりましたので、報告します。
私は、その5で、全奇数ゼータの具体例を求める方法を提示し、その方法で、ζ(3)、ζ(5)、ζ(7)までの
姿を実際に示しました(< ζ(3)、ζ(5)、ζ(7)をまとめておきます >参照)。
その4で一番最初に導いた次式(@)は、単発的発見と説明していましたが、じつは、@を求めたその手法も
一般化できることに気付きました。そして、その方法を使えば、奇数ゼータの別種の具体例を次々に出せることが
わかったのです。
ζ(3)=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}] ------@
(n=1〜∞)
まず、その方法を示します。
が得られるところが面白いのです。
結局、”その4”においては、この方法でのn=3の場合を求めていたことになります。
(n=3の場合は、「数学の夢 素数からのひろがり」(黒川信重著、岩波書店)に載っているオイラーの式を利用
したのです。)
さて、上記手法を使って、ζ(5)を見出すことができました。2個目のζ(5)が見つかったわけです!
計算過程は略しますが、結果は次のようになります。
ζ(5)=2/93{-(π^4/3)(logπ - 13/12) + 4π^2ζ(3)
+ 16Σ[ζ(2n)・π^4/{2n・(2n+2)・(2n+3)・(2n+4)・2^(2n)}] } ----C
(n=1〜∞)
その5で、先に求めていたζ(5)と比べてみてください。
ζ(5)=2/31{(π^4/3)(logπ - 25/12) + 4π^2ζ(3)
- 16・Σ[ζ(2n)・π^4/{2n・(2n+1)・(2n+2)・(2n+3)・(2n+4)・2^(2n)}] }----D
(n=1〜∞)
似ているようでも、全然別種の式であることがわかるでしょう。
Dの方が、Σの中身の分母の次元が一つ高くなっており、DはCより収束が速い式となっています(とはいえCも
相当速いのですが)。
ζ(7)も同様にして求めていくことができますが、略します。
総括的に述べれば、奇数ゼータを求める2種類の手法を本サイトで提示できた、ということです。
結果をまとめる意味でも、その2種類の手法と、実際に求めた奇数ゼータを表示しておきます。参考にしてください。
追記2003/10/18
Sugimoto氏が「似たような式がある」と次の論文を送ってくださいました(2000年ですからついこの間!)。
これは奇数ゼータに関する重大な論文と考えられます。
この中で私の上の式は既に導かれていることが判明しました。よって上記三式は初めてのものではありません。
@、A、Bはp.573(2.4)のn=1、2、3のそれぞれの場合に対応しています。
ただし、方法論は全く異なっており、私の非常に初等的な方法とは違って、論文ではガンマ関数を用いるなど
高度な方法が使われているようです。
じつは、私は、log(sinx)=-Σ1/n・cos(2nx) - log2 の両辺にx^2をかけて重回積分してもまた別種のシリーズが求
まり、さらにx^3をかけてもまた別種が・・と次々と別種のシリーズが無限に生み出されていくはずと予想していますが、
この予想が正しいのかどうか、読者のさらなる研究を期待したいところです。
まだまだ多くの新しいことが隠れていると思います。読者でなにか発見がありましら、ぜひご報告ください!
藤原正彦氏(お茶の水女子大学教授、数学者)の意見には、いつも感心させられる。
次は産経新聞の「正論」に「祖国愛なくして危機は乗り切れず」と題して寄せられた氏の論説の一部である。
「 ゆとり教育という愚民化政策
不況が十年ほど続いている。ここ数年は政官財のみならず国民までがパニックに陥ったがごとく改革を
連呼する。不況克服のためなら何でもするという体質になっている。改革イコール改善と勘違いしたまま、
改革フィーバーは政治、経済、社会から、国の礎ともいうべき教育にまで及んでいる。無論、経済は一向
に回復せず、恐るべき市場経済の跋扈(ばっこ)により、わが国の文化、伝統、自然は痛めつけられた。
教育では、小学生に英語やパソコンを教え、創造性や起業家精神を育み、生きる力ということで、ゆとり
教育を実施する。小学生のころから、英語やパソコンにうつつをぬかし、本を読まず、ゆとり教育で力を低下
させた人間に、日本の将来を託せるのか。漢字が読めず九九もできない人間に、どんな独創性を期待でき
るのか。
愚民化政策である。初等教育は「読み書き算盤(計算)」と、わが国は寺子屋時代に喝破している。民族
の知恵であり、明治に見事な近代化を成し遂げ、小さな島国を世界第二位の経済大国にした原動力を、あっ
さり捨てたのである。・・・・・・・・・・・ 」
この意見には、唸ってしまった。
この短い文章の中に、いかに本質的なものが詰まっていることか。まさに直球勝負の意見である。
私も、ひそかに、「小学生に、英語やパソコンなど必要ないのではないか」と思っていたので、なおさら、
共感してしまう。
M.S
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