花をもってくれば、だれかが花瓶に活けてくれる。中でもK氏、活け花も習ったとか、
よく活けていた、花もよくもってきた、正月ともなれば、たくさんの花を持ち込み、
玄関に、所長室に、そして職場の中央のお客の机に、ひときわ見事な花を飾る、
これが通例になっていた。
あるとき、ふと気がついて、訊ねた、「この花はどこが正面になるのか」と
彼いわく、「これは360度と言って、どこから見ても、正面に見える活け方」とか
子供が活け花を習っていた時のこと、帰ると、ふたたび活け直して、
玄関に飾り、写真を撮るのが通例になっていた。
ある時、(活けた後)ふと見ると、かたわらに一輪の花が残っていた、
私も「もったいない」の世代、「せっかくの花を」とワキに挿すと
すんなり、収まった。後で、写真を撮っていたので、
「一本、残っていたのを挿したぞ」と言うと、えらい叱られた、
「習ったとおりに活けているのに」と、
職場のK氏にこのことを話すと、「他の人が活けた花を直すのは
『添えばな』いうて、先生がすること、素人がするなど、
とんでもないこと」、と言い、さらに、
「せぇにしても、すぐに気が付かぬようじゃあ、本気じゃあねぇ」と
・・・・・・いやいや、すまんこって。
その当時、「サツキ」がはやっていた。
職場だけでなく、町でも良く見かけた、地に植えてやればいいのに、
小さな鉢に植え、水やりをたよりに生き延びて、それでもきれいな
花を咲かす、
職場にも、同好の人が集まって、自慢の鉢を飾る。花が終わると、
直後に剪定した枝を分け合う、持ち帰って、カヌマ土に挿すと、
苗となり、数年後には花も咲くとか、
白や、淡い色の清楚なのもあれば、豪華な花もある、
ひね曲がった幹を強調して、少しの花をつけたものや、
「ガジュマル」のように根を空中に出したあわれなのもある、
そんな中、一本の木に、白い花と赤い花の両方を付けたのが
あった。
そこにいた一人が尋ねた、「どうやって白と赤を咲かした?」
尋ね方も悪かった、
花の持ち主は、おもむろに、「リトマス試験紙に酢を
付けると赤ぅなる、サツキも同じで、酢で赤ぅなる」
「うちのも、酢をつけてみよう」
それを聞いた持ち主、あわてて、「急にはおえん、
つぼみの内からつけんと、せぇからになぁ、濃いすぎてもおえん
花がいたむ、来年、教ぇたる」
この方、来年まで覚えとるか、どうか、
尋ねてきたら、困るでぇ、持ち主も、
むかし昔、Long Long Ago のはなし
でも実話です。