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展覧会の紹介
第3回サッポロ未来展 北海道新世代作家達の現在 |
2004年3月15−22日 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) |
業界の外の人間から見るとおんなじ美術界のなかでも、いわゆる「現代美術」と、日展などに代表される「絵画、彫刻」の世界とは、あまり交流がない。 「美術手帖」や全国紙など、たいがいのジャーナリズムがとりあげるのはほとんどが前者だ。 このふたつは、昔からけっして「水と油」だったわけではない。1980年代の「美術手帖」などには、いわゆる画家の記事がよく出ていたし、新聞にも上野公園の東京都美術館でおこなわれる公募展の記事が載っていた。いま主要な新聞で公募展について記事を載せているのは、日本経済新聞(ただし掲載はおもに夕刊なので、道内では読めない)と北海道新聞くらいのものだろう。 80年代の「ニューエクスプレッショニズム」(当時はニューペインティングとよんでいた)の流行が去り、現代美術の主戦場から絵画が退場したあたりから、このふたつのジャンルがはなればなれになっていったような印象がある。正確には当時の出版物を精査してみないとわからないだろうけど。 前置きが長くなってしまったが、ことしで3回目となる「サッポロ未来展」は、絵画のみならず、彫刻、工芸、版画などさまざまな分野の作品が寄せられている。道内在住者と、首都圏在住の道内出身者で、40歳になると「卒業」するというシステムをとっている。道内で定期的にひらかれるグループ展では、屈指の規模だ。 それぞれの作品の水準が低いとは思わない。むしろ逆だ。すごくおもしろい展覧会だと思う。 けれど、筆者がいちばんもどかしく思うのは、それぞれの出品者が21世紀になってなぜ絵画や彫刻をあえて選択したかという志というか、理由が、よくわからないことだ。 美術系学部に在学中、あるいは卒業して、絵画や彫刻にとりくむのに理由なんて必要なのか−という人もいるだろう。筆者は、あるにこしたことはないと思っているから、こんなことを書いている。 公募展型というか、従来型の絵画が、美術館で今後評価される可能性は低いし、海外での評価につながる展望はほとんどない。そういう道を断念して、画商などの世界に活路を見出すにせよ、具象の小品ならいざ知らず、100号の絵は実際問題としてほとんど売れないだろう。100号の絵が受容される世界は、それほど広いものではない。 はっきり言ってしまえば、ピンからキリまである公募展のうちキリのほうの審査会員の肩書なぞ、カルチャーセンターでそれぞれの分野で出されている「講師」「師範」の資格と原理的に変わるところはないだろう。 筆者は、個人的には、従来型の絵画や彫刻は今後もかならずいきのこっていくだろうと確信している。人間は、コンセプトや表象だけでは満足せず、かならずその裏にある「物語」を欲するからだ。 言いかえれば、純粋に形態や色彩の美をもとめるモダニスム的な作品に、どれだけ人々の需要があるかは、心もとない。筆者ごときが判断するような問題でもないかもしれないが、絵画の延命は、モダニスムが「文学的」として排除してきた要素を生かしていく方向にあるような予感はする。 などとくどくど書いてきたけれど、やっぱり絵画や彫刻をやるのにりくつはいらないんだろうな。きっと。 みなさん、わき目も振らずにがんばってください。 この調子ではいつまでたっても各論に入れそうもないのだが、気になった作品について述べる。 杉山之都(しつ)「母、娘母母母娘、母」。さまざまな裸婦や妊婦や女性の顔などが、大きさもばらばらに画面いっぱいに配置されたにぎやかな絵。単為生殖のパラダイスってわけじゃないでしょう。男は不在だけど、男の視線を受けているってことは絵から感じる。もう1点、「ペイパー・トレイル」は、グリザイユ技法で、道行くミニスカートの制服の女子高生たちを描いた、これまた訳ありっぽい作品。 斉藤麗「ハイビスカス」。シルクオーガンジーにろうけつ染めをほどこした大作。丸い模様が増殖していくようでおもしろい。 鈴木奈津子。大半が白いままぬりのこされてしまったかのような、ふしぎなヘタウマ抽象画。すくなくとも見たことのないタイプの絵だ。 ほかに気になったのは「広義の風景画」とでもいうべき、なかば抽象的な風景をとらえた絵画が多かったこと。 矢口佳那「高い空を見上げる」は、曇天と針葉樹林のようでも、抽象のようにも見える。山本陽子「緑の波」も、具体的な風景というよりは、茫漠とした緑色や白の帯である。田中怜文「プロフィール」は、雁の渡りを描いているが、地上の風景はかなり簡略化されている。加藤広貴の絵も、風景に見えなくもないし、波田浩司の描く白い都市が、一見札幌のようでありながらどこでもない場所であることは、言うまでもない。 日本画の谷地元麗子は、近年とりくんでいる猫の絵を3点一気に展示した。 このシリーズについては、先日の川井坦展・北海道教育大学札幌校日本画展■で述べた。 渡邊慶子の版画と、渡辺和弘の漆芸については、抜群の安定感がある。 最後に、間笑美(はざま・えみ)の絵画2点(「無題」「麹塵」)が盗難にあったというのは、びっくりした(新聞にも匿名で出ていた)。 間は、写実的な筆致で人物画を描いたかと思えば、極端に細長いキャンバスに抽象画を描くなど、振幅の大きな活動を見せていた。今回は、図版で見るかぎり、具象画傾向の作品の転機になりそうな2点だっただけに、犯人ははやく返してほしいと思う。 出品作はつぎのとおり。
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第1回展 第2回展 |
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