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展覧会の紹介
'04NORD「2人展」 ] | 2004年3月22−27日 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) |
「NORD」は北の意味。 新道展のベテラン会員4人で結成されたこのグループは、その名の通り、北の風土性を、濃淡はあれど反映した絵画を発表してきた。 途中からメンバーは、丸山恵敬さんと佐藤萬寿夫さんのふたりになったが、グループの性質は変わらないような気がする。 北の風土といっても、たんに北国らしい動物を描くとか、道内の雄大な風景をモティーフにするとかいった、上っ面のことではない。 もっと、道内の清新な空気の底にあるような、なにか。いわば、精神的なものを、描き出しているような気がする。 もちろん、ふたりの絵柄は異なる。 丸山さんが、トウモロコシを題材にし始めたのは、そう古いことではない。 それも、ただの黄色いトウモロコシではなく、青いトウモロコシ。ふしぎなことに、それがいっこうに不自然ではない。なぜか、とおい少年時代の感情を、すっと自然によみがえらせる効果がある。 左の絵は「連帯」(写真がまがってしまって、すいません)。 澄んだ紺色から水色への諧調がうつくしい。 そのとなりに展示されていたのが「心の凍結」。 つるされた5本のトウモロコシを大きく描いている。 丸山さんによると 「これはオレ自身なんだ」 とのこと。 人間をモティーフとせずに人間を描く。ベテラン画家の真骨頂である。 もっとも、オレ自身なんて言われるとせつないので、筆者の個人的な好みとしては「連帯」のほうがすきだが。 ほかに目を引いたのが「ぼくのトウモロコシ日記」。 コンテの黒い線が自在に画面に躍る。なんだか、ふっと緊張がゆるんで、見ているだけで心がはずむ。 この絵も、即興的にひいた線の良さだけでなく、地の部分を地道に塗り重ねているので、画面がかるく見えないんだろうと思う。 もっとも、小品には、「怒」「不安」と題した作品もある。70歳を越してまだまだ枯れていない画家の精神のありようをうかがわせる。 佐藤さんの絵は、絵の具を重ねては削る−その入念な繰り返しの結果できる、微細なマティエールが特徴だ。 写真は、S60号キャンバス4枚からなる「風の旋律」。 左から「立夏」「白露」「小雪」「雨水」で、四季がテーマだ。 具体的なものがほとんど描かれていないのに、季節感が出ている。 この写真ではとうてい表現できない、微妙な色調は、見ていてためいきが出る。斜めに交錯する模様はマスキングテープでつくったもの。さらに、絵の具の層に毛糸を貼りこんで、一部を剥がして、画面を横断する風を表現している。 佐藤さんは 「アトリエがせまいから、2点ならべて見られないんだよなあ。乾くまでつぎの作業に入れないし、けっこうたいへんでした」 と苦笑する。 小品では、「風の景」など、佐藤さんが得意とする縦構図の、奥行きある風景画が少なくない。 風景画といっても、手前に白い木が1本小さく描かれているだけなので、それ以外の、白やピンクの飛沫がうめつくした半ば抽象的な部分は、広大かつ茫漠として見える。 いちばん上の、遠景にあたる位置にひかれた、彩度の高すぎない紫の帯は、凍てついた海だろうか。 「心象風景」ということばが、これほどすとんと来る絵もあまりないだろう。 以前も書いたかもしれないけれど、佐藤さんの絵には、あの、吹雪のさなかに自己の生を確認する北国の人の心が、あるような気がするのだ。 これまで、展覧会のほかにも、東欧との交流活動などボランティアにもとりくんできた「NORD」は、10回を区切りとして解散する。 2年後、あらたなメンバーをくわえて3人展として発足する予定だという。 この水準の展覧会をほぼ毎年つづけるのは、苦労も多かったにちがいない。 また、じっくり見られる、ベテランらしい絵を発表してほしいと切に願う。 出品作はつぎのとおり。 丸山「トウモロコシの詩」「心の凍結」「落ちこぼれ」「二重唱」「阻む」「二つの追憶」「怒」「晩夏」「シャボン玉凍った」「ぼくのトウモロコシ日記」「終わりなき喪失」「トウモロコシの思い出」「不安」「不安なイス」 佐藤「春の風」「春が来る日」「風の詩」(同題2点) 「風の旋律」(4部作) 「冬の森」「そよ風の詩」「夜想」「風の景」「北の岬」「春を待つ」「木立をすぎる時間」 |
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