(株)調所電器

平面スピーカーの歴史

開発当初の製品

1970年代後半”朋”の名称で市販されました。振動板の材質は発砲スチロール製ですが特殊な条件のもとに発砲させて表面処理したもので2ヴォイスコイルでエッジは表面のみで、初期のものは糸ダンパーで支えられていました。マグネットは小型のフェライトでフレームは鉄板製、エッジはウレタン成形品を使用しておりました。磁束密度は6000ガウスほどしかありませんでしたが限られた条件の元では軽い振動板との関係で微小信号にも極めて反応の良いユニットでした。エンクロージャは後面開放型で和室でオーケストラの響きを目標に音作りがされていました。

朋に使用しているユニット

磁気回路の強化

フェライトマグネットが大きくなり、磁気回路がより強化されていきます。磁束密度は約8000ガウスほどになりました。エッジは両面から貼付けられ振動板はエッジのみで支えられるようになります。コイルのサイズや線径が改良の為、変更されました。フレームは鉄板製からアルミダイキャスト製になりました。

3ヴォイスコイルタイプの開発

大音量の低音再生にはどうしても大振幅が必要であったものの磁気回路の構造上これ以上の振幅を確保することが不可能だった為、振動板の面積を増やして低音の増強を目指しました。ヴォイスコイルを1つ増やし3ヴォイスコイルタイプを開発しました。低音の量感は圧倒的に増したものの、この頃の磁気回路では振動板重量との関係で中高域のバランスが崩れフルレンジの特性がとれないことから試作のみで量産はされませんでした。

     

磁気回路の更なる強化

スピーカーユニットは振動板の軽さと磁気回路の磁束密度の強さで特性がほぼ決定されてしまう傾向があり1980年代には磁気回路が更に強化されていきました。フライス加工で純鉄のヨークが製作されフェライトマグネットのヴォリュームも大きくなり磁束密度が約11000ガウスまでになり、ほぼ安定した特性になってきます。このタイプがFLAT-Aタイプと呼ばれ、最も多く生産されハイルドライバーと組み合わせたシステム等も販売されました。

小型ユニットの開発(FLAT-B)

この頃、価格やシステムの大きさから小型ユニットの需要が出てきた為振動板の面積が小さいタイプが開発されました。これまで2つあったヴォイスコイルをピッチを若干変更した1ヴォイスコイルとしフェライトの磁気回路が半分のものになっています。これがFLAT-Bタイプと呼ばれるものでAタイプの次に数多く生産されました。

更なる磁気回路の強化

1990年代の中頃、より強力な磁気回路を求めてネオジウムマグネットを採用したユニットも開発されました。まだネオジウムマグネットが極めて高価な時期でした。同時にヨーク材も更に磁束密度を上げる為、純鉄のインゴットからの削り出しによる強力な磁気回路が完成しました。また振動板も音楽性を重視し発砲スチロール製から木製の振動板にヴァイオリンと同様の天然シェラック処理を施したものが開発されました。磁気回路の磁束密度はギャップ間で15000ガウスを超えるものになりました。エッジは合成セーム皮の熱成形品が使われ振動板の裏側にダンパーが付けられました。

磁気回路が強力になればなるほど聴感上の低音が減少する傾向が顕著になりフルレンジユニットではこれ以上の磁束密度は不要となりました。振動板の違いによる音色の違いによりユーザーの好みが分かれるようになり発砲スチロール製振動板とネオジウム磁気回路の組み合わせのユニットを生産するケースも出てきました。

   

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