09. 戦いの終わり



 男はカケラであるが故に魔法の発動待ちの時間は皆無。詠唱中を狙っての攻撃はできない。
 なら唱える事そのものを邪魔するしかない。
 只管に戦う。
 防御しきれずに負った傷は、数えるのも面倒臭い。血で滑る柄を何度も握り直す。
 この中で1番体力が無いのはあたしだ。
 足手纏いにはなりたくない。そんなのあたし自身が許せない。
 鉈を持って走り回れないのなら。
 戦い方を切り替える。背中の猟銃。弾に魔法を篭める。
 撃つ。

 炎の魔法は男の左腕を炭化させた。零れたカケラが床に転がる。素早くルオが咥えた。
 気が付いたのは3人ほぼ同時。
 キマナの大剣が唸る。
 持てる魔力の限りを尽くすかのようなサールの連続魔法。
 あたしも銃を構え、ルオが牙を剥く。


 人形を取ったのが間違いだったんだ。
 徐々に身を減らされ削られ、男はカケラに戻った。


 カケラが1つの形を作る。


 あたし達はすべてのカケラを手に入れた。
 残る目的はただ1つ。
 それは旅の本当の終わりも、意味する。


 城内には、他に魔物は居なかった。
 勿論カケラを持つ魔物も。
 魔王側にあったカケラは全部、多分あの男の形成に使われてたんだと思う。あの男の存在が最終砦だった。
 ――誰の意思?
 勝てばすべてのカケラが集まる。
 負けたら?
 どうしてそんな、危険を冒すような真似をしたの。


 何かを願ってるみたいじゃない?







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