08. 心に抱える痛みを、覚悟で押し潰す
崖下に降りた。日が遮られて肌寒い。道らしい道はない。
サールの標す方へ進む。真ん中にあたし、後ろにキマナ。ルオは身軽に行ったり来たり。
魔物の襲撃は急速に激しさを増した。カケラの数も大きさも増えた。機械的に戦っては進む。
全員が座れる場所を見つけて小休止。
もう、嫌だ。
正面からサールに縋る。
「あたしにやらせて」
「リオ?」
「役目を取っちゃって悪いけど」
あたし以外がユノイをどうするか考えて無かった。
誰かがユノイを殺すなら。
殺されるなら。
殺す為に捜してたんじゃないのに。
「あたしが殺す。あたしが封印やる!」
「リオ。落ち着け」
キマナに引き剥がされる。大きな手があたしの両肩を掴んで、しっかりと支えてくれる。
「解って言ってるんだろうな」
「うん」
真っ直ぐにサールを見据える。目を逸らすな。
だってユノイだから。譲れない。誰にも。サールにだって。
「魔法はサールにしか効かないの? あたしは贄になれない?」
「……いや。君でも構わない。リオは僕の役目を横取りするつもり?」
魔術師は苦笑した。
目の前に聳える、魔王の居所。
そして。
男が1人立ちはだかった。ああ。旅する間に身についた感覚。この人はカケラだ。凝って人形を模した。
「残りのカケラはお前達の持つ分」
感情の抜けた声音。
息を吐く。
「迷うなよ」
叱咤するキマナに行動で示し返す。
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