07. 断たれた崖の向こうに滲む青
世界の涯。人の住まない地。ナイフで切り取ったような崖。足元にはまだ草が生えてるけど、眼下に広がる深い谷は灰茶に枯れている。
「…ねぇ。器に選ばれるのもこんな感じかな」
「こんな?」
「魔力に酔わない、とか」
「似てるかもね。魔王の魔力は膨大だから、魔力に耐性があって、かつ充分な空き容量となると限られる。幼馴染クンは最適任だったんだと思うよ」
「そう、か…」
「魔術の世界は解らんな」
「僕にも解らないよ」
谷から吹き上がる風に髪を押さえる。旅の終着地点。
そして本当の戦いが始まる処。
ちょっと早い食事を摂った。次にいつ食べられるか解らない。切り分けたパン、チーズをひとかけ、カップ一杯の水。
「器に選ばれたら助ける方法は無いの?」
「ないね」
素っ気無い返事。他に答えようが無いんだろう。
「器は、満たされるか壊れるかの、どちらかでしかない」
「魔王になったら?」
「なる前に、二度と復活しないよう封印する」
低い声は怖かった。横で伏せてたルオが喉の奥で唸る。撫でて落ち着かせる。キマナが、もっと穏便に話せと小さく息を吐いた。
「カケラは?」
「全て回収し切らなければ、一片でも欠ければ器は”魔王”になれない」
「封印はどうやるの」
何でもないようにサールは続けた。
「我が身を贄に使う、魔術師最大最高の魔法だよ」
解ってしまった。彼の本当の目的を。
殺す気なんだ。
周囲には遮るものが何も無くて、空がとても近かった。
目が痛い程の蒼。
ねぇ、ユノイ。
此処まで来たよ――
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