06. 魔術師の過去、傭兵の野望、少女の理由



 キマナの傷を治癒魔法で塞ぐ。
 サールもと、治そうとしたら止められた。
「僕は死なない。傷も勝手に癒える」
 魔術師は何処か痛むような顔をした。
「”魔王”に会う為に。永遠に生きる。そういう魔法を掛けた」
 またあの昏い笑み。
「先代の”魔王”はね、僕の師匠なんだ」
 告げられたそれに、あたしは瞠目した。
「止められなかった。だから千年後に賭けた。駄目だったら更に千年後」
「お前が”千年の隠者”か」
「いんじゃ?」
「世界の何処かに永らく生きてる魔術師が居るってな。薄ら寒い話だ」
「他人事みたいに言うのね?」
「俺は名を馳せたいだけだからな。こいつの素性なんぞ知らん」
 酷いね、とサールは薄く笑った。
「”魔王”の元まで辿り着いた魔術師の護衛ってのは良い宣伝になる。サールを選んだのは当たりだったわけだ」
 自嘲気味にキマナは言った。
 そうだ、魔術師の本来の仕事は、魔王復活の阻止だっけ。
「強いって示したいの?」
「そうだ」
「どうして?」
「俺が生まれた国はもう無い。俺が生き続ける事でしか存在し得ない。だったら細々と生きるんじゃなく暴れまくってくたばってやる、そう思った」
 手元の剣を弄るのが何だか寂しそうだった。
「リオは? 何で魔王を追う?」

 村の誰もが噂した。
 次代の”魔王”――次の”魔力の器”に選ばれたのだと。

 ”魔王”は禍の源、忌まれる存在。
 村は”ユノイ”の痕跡を全て消した。

 あたしは信じたくなくて、真実を確かめたかったのかもしれない。解らない。
 ただ、ユノイに会いたかった。







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