さしのべられた腕 〜儚き夢〜 第二部ヌートの血祭り 2

 朧月に照らされたヴロンズ城は大地から突き出た銀細工のようである。
城郭の正門には戦の勝利を祝う貴族が詰め掛け、通行証を手に長蛇の列を作っていた。
 祝いの品を馬車に積んだ貴族を窓から眺めながら、皇太子カイゼフは最上階へ至る階段を上りきった。
城の最上階右側にある後宮は左側にある皇太子のそれよりも広く、十数人の妾が住んでいる。
用事を済ませる為に、カイゼフは己の寝室がある本館から右翼への渡り廊下を進んだ。
 沐浴場の石鹸の香りが漂う回廊には上等の絨毯が引かれ、壁にはヴレード建国の物語を綴ったタペストリーと妾妃の肖像画がかかっている。
扉代わりの御簾を跳ね除けると、二人の女近衛兵が跪いて挨拶した。
 塔の天井は高く、天窓から差し込む月光が風を具現化したような布の揺れを幻想的に見せていた。
今は亡きカイゼフの実母が住んでいた正面の部屋から、荒い息と寝台のきしむ音が聞こえてくる。
カイゼフは父と共にいる女を誰か悟って、躊躇せずに扉を二度叩いた。
「父上、ヴェルデン地区の貴族が祝いに参じております」
「もうそんな時間か」
呼吸を整えようとする父の息使いをかき消すようにカイゼフは扉を開けた。
 カラジャル皇帝は夜着を羽織って寝台から降り、腰紐を結んでいた。
「お前と共にいると時を忘れるわ」
汗で濡れた髪を掻き揚げながら天蓋を出る父に、カイゼフは一礼をする。
公務で逸楽を妨害されたというのに、カラジャルの機嫌は悪くない。
戦の結果はおよそ満足のいくものであったのだろうとカイゼフは思った。
 部屋を出る皇帝の後を追おうとした時、中から風が吹いてカイゼフは思わず振り向いた。
天蓋から垂れ下がるレースが風で跳ね上がり、開かれた真ん中から寝そべる者が彼を見ていた。
(オメガ)
反射的に、喉が嚥下して動く。
彼の足は黄金の視線で呪をかけられて止まった。
「父上の機嫌をとる邪魔をしたようだな。お前が何故後宮にいる? 妾に降格か」
そうなる事を望んで、カイゼフは言った。
女体を武器として父に付きまとうこの宮廷魔術師に会うと、悪態をつかずにいられない。
突き放さなければ身を守れないような危うさを感じとったのは、カイゼフに備わっている本能だった。
 オメガは喉の奥で笑い、足を折り曲げてなだらかな山を作った。
夜具からはみだしている下半身にカイゼフの目が自然と動き、そして逸らす。
幼いと、彼は思った。
思わず手にしたくなる十代前半の幼女のような肢体である。
「お前がアストラルを手に入れなかったおかげでガランディウム神殿が煩い。しかもアヴァンの神官の拷問を兵士に任せたそうだな」
カイゼフは渡り廊下を通って謁見の間に向かう父に目を移して言った。
 御簾が揺れる度にオメガの甘く痺れる香りが流れる。
寒気とも怖気とも判別できないものがカイゼフの背中を走った。
「ガランディウムの神官なぞに拷問を任せたら殺すであろう。奴らはアストラルが欲しいが為に見境が無い」
オメガは寝具から出て、壁に掛かっている蝋燭に息を吹きかけた。
魔力の息によって炎が灯り、小さな赤い舌がオメガの裸体を照らす。
「手ぬるいぞ、オメガ。アストラル捜索はガランディウム神官の手に委ねるが妥当」
振り向いたカイゼフの前に、銀の髪が体を覆ったオメガが立っていた。
いつ移動したのかも解らない。上掛けで体を隠す事もせず、全てが露だ。
皇帝は汗をかいていたというのに、彼女の体は磁器の置物のようだった。
「カラジャル皇帝にはアラードを手に入れる事がアストラル以上の収穫であったようじゃぞ」
何の羞恥も表すこと無く、オメガはカイゼフに歩み寄った。
「皇帝が寝しなに英雄の亡霊に眠りを妨げられる事はもはや無い」
柔らかい胸がカイゼフの腕に触れ、艶かしい体温が伝わってくる。
カイゼフは腕を組んで彼女の体から離し、視界に入らないよう顔を上げた。
「……言い訳にすぎぬな」
開け放たれた扉の向こうから連絡通路の前に立つ女兵が二人を見ている。
オメガと二人きりでは無かった事に、カイゼフは安堵の嘆息を漏らした。
「アマルから話を聞いたぞ、裏切り者の首すら手土産にしておらぬと。お前が殺したというローハイムの子孫の死体はどうした」
「森と共に吹き飛んだわ」
オメガは鼻を鳴らして答えた。
「英雄の子孫といいアストラルといい、お前らしくも無い結果だな。せいぜい父に媚を売るがいい」
沸き起こる怒りはオメガの戦果によるものではない。
女魔術師の人並みはずれた能力に対して何かしらの期待を抱いていた自分がいる事に、カイゼフは気付いたのだ。
(後宮の女の方がもっと実用的に使えるというものだ)
妾達はオメガほど頭が回らなくとも、彼の若さゆえにみなぎる精力の息抜きに役立つ。
ここを出て己の後宮にいる女を抱く為に、彼は御簾から離れて扉へ向かった。
「カラジャルはサマルドゥーンを陥落させアストラルを手にする最初のヴレード皇帝となるであろう。その息子、アストラルを抱いて王座を血で汚す」
耳を塞ぐより早く、カイゼフは扉を閉めた。
 用事は済んだというのに何故長居してしまったのかとカイゼフは自問して、腹の底に怒りを蓄積していた。
父の後について部屋を出ていれば聞かずに済んだのだ。
サマルドゥーンへ出陣する前にオメガが口にした予言と、父も知らないその続き。
『その息子、アストラルを抱いて王座を血で汚す』
彼の脳裏に予言の言葉が反復される。
(俺を誘惑する気か、オメガ……!)
胸を掻き毟りたくなる程の自嘲の念に捕らわれ、カイゼフは魔術師に耽溺し始めている事を感じた。
皇帝を手玉に取り、皇太子までも取り入れようとするオメガの毒牙。
それに侵されたかのように、しばらくカイゼフは支柱にもたれて動けなかった。

 何処からか紛れ込んだ羽虫が光源に集っている。窓一つ無い収容所の明かりは壁にかけられた松明だ。
 番兵が定時に交代する時間の間隔だけでは時を計る事も出来ず、今が昼なのか夜なのかも検討がつかない。
外界から遮断された地下牢には時間の流れを知らせるものが一切無いのだ。
カールは拷問部屋から解放されてどれだけ眠っていたのかは解らなかったが、自分の目覚めの良さを考えて、寝る時間は十分に与えられたとだけ判断した。
 肉が削がれた筈の脇腹と鞭の打ち傷は化膿する事無く、新しい皮で塞がれていた。
驚くべき治癒力である。
(俺の力ではない……。あまり治りが早いと疑われるな)
カールは笑みを漏らし、神に感謝を述べた。
 足元に転がっている傭兵の髪を踏まないよう気をつけながら、カールは上半身を起こした。
彼の動きに気付いたエドレルが傍に寄り、番兵の方を気にしながら声をひそめて言った。
「カール様……お体は」
「心配ない」
拷問兵が言った英雄の死が頭を離れず、カールは力の無い笑みを浮かべた。
 牢の外には禿げ頭の番兵がいかにも貪欲そうな丸い腹を抱えるようにして座っている。
カールが起き上がって老神官の様子を伺おうとした時、軍靴が耳に入った番兵が立ち上がった。
状況が変わった事を察知したのか二人の傭兵が飛び起きる。彼らの訓練された習慣は苦境においても瞬時に反応していた。
 番兵は分厚い鉄の扉を開いて二名の兵士を中へ入れると、腰に下げていた鍵で柵を開けた。
「出ろ」
兵は槍を片手に威圧し、傭兵が首を回しながら気だるそうにして先に牢から出る。
カールとエドレルは老神官の体を支え、牢を出た。
 地下牢と神殿を繋ぐ扉は腰を屈めなければ通れない低さだった。地下水が染み出すせまい階段を上ると、まっすぐ伸びた細い回廊に出た。
天井付近でアーチ状になっている正面の扉は開かれており、外の明かりが暗い廊下に差し込んで光の道筋を作っている。
カールは手をかざし、昼間の明るさに目を慣れさせながらその場所に足を踏み入れた。
「ここが囚人の運動場だ。いや、稽古場とも言うべきか」
兵士の一人が笑った。
 床は砂利一つ無く、土を幾重にも重ねて平にしてあるようだ。
四方を囲む焼き煉瓦の壁は神殿の建物の一部で、この場所は中庭のようなものだった。
広場の隅に藁人形が設置され、東側の壁沿いには等間隔に三体並んでいる。
「ようこそ、第一収容所へ。私の顔は覚えていよう、第八部隊の隊長アマルだ」
上方から声が聞こえ、六人の囚人は見上げた。
 バルコニーから見下ろすアマルは戦の時とは違って軽装である。整った身なりは武将ではなく貴族のものだった。
「他の皆はどうした? 市民も拘束したのか? 一体何人の…」
カールはアマルに向かって言った。見下ろされているというのはあまり良い気分ではない。
「神殿以外で拘束した神官と市民は他の収容所にいる。心配するな、仲間は多いぞ」
笑えもしない冗談を言いながら、アマルは塀に手を着いて身を乗り出す。
太陽はアマルが立っている建物の上空にあり、囚人達は刺すような陽光を眼球に感じながら顎を傾けていた。
「来月の上旬、皇帝の誕生際が開かれる。お前達はその祭りの生贄だ」
「けっ! 奴隷が祭りの肴かよ」
上半身が裸の傭兵が唾を吐き、小さい歩幅で壁際に寄った。彼らは両足首を重い鎖で繋がれたままなのだ。
「お前達はヌートという祭に出場し、生き残った強い者を売買する市民の賭けの対象となる。奴隷同士の戦闘に勝ち続ければ貴族お抱えの剣闘士と戦う事が許され、それに勝てばここから出られるのだ」
カールの目元がけわしくなったのは、眩しいからだけではない。
 頭上から楔を打ち込まれたように、カールは身動き出来なかった。
(何……だと)
傍に立つエドレルの喉が震え、押し殺した息が不規則に漏れている。
外に出た開放感は瞬時に失われ、上空を飛ぶ鳥の囀りさえ彼らを哀れむ歌のようであった。
囚人の反応など目にも留まらなかったかのように、アマルは続けた。
「貴族の誰かに買われれば次の試合に出る必要は無い。貴族達に気に入られるよう腕を磨け。自由になりたくば仲間だという意識を捨てろ」
「仲間同士で殺し合いをさせるのか!」
叫んだカールの肩に老神官が干乾びた手を置いた。振返ったカールは老人の肩を両手で包み、支える。
合わせた目は木の洞のように暗く、古木は精を使い果たして枯れ、立っている事もままならないようだった。
「戦いたくないものは戦わなければいい。いつまでその善人面をしていられるものか」
囚人が入ってきた扉の隣に、神殿上部へ通じる扉がある。そこから腕に何本も木刀を抱えた戦士が入ってきた。
 彼の筋肉に合わせて形作られた胸当てはもり上がり、鎧からはみ出た皮膚は浅黒い。
色あせた金の髪と陽気な目は、彼が南国の男であると指し示していた。
彼は神官達の方へ木刀を放り投げる。カールは自分の足元に転がってきた木刀に目をおとした。
「試合中でも魔力封じの枷は外さぬ。そこにいるギルバから剣を学べ」
アマルがそう言って部屋へ引っ込むと、代わりに弓を構えた見張りの兵士が塀にならんだ。
 神官達の首に嵌められた鉄の環は脈動する熱を放っていた。
首輪はあらかじめ記憶されている信号をとらえると、そこで食い止める役割を果たしているのだ。
脳から送られた『回復』以外の信号が体内を巡る前に、喉元で呪を相殺させて断線する仕組みだ。
攻撃に関する呪術や魔法の類は一切使えないのだろうとカールは思った。
 一向に武器を取ろうとしない神官を見て、ギルバは逞しい筋肉を堅くして息を吸いこんだ。
「俺はギルバ。ヘレ・ディ・オール卿が所有する剣闘士だ」
ギルバは己が人間の所有物であり、奴隷であることを隠さなかった。
彼が話し始めると、兵が屈み込んで囚人の枷を外し始める。自由になった体を動かす囚人を眺めながらギルバは続けた。
「俺は数年前までお前達と同じ身の上だった。だがヌートの血祭りで勝ち抜き、卿に買われて生き残れた。ここの貴族は弱い奴には興味が無い。生き残りたいなら強くなれ」
「あんたに用は無い」
カールの即答にギルバが目を丸くし、白い歯を見せながら豪快に哄笑した。
「そうか? そっちの奴らは早く稽古したくてうずうずしているようだが」
二人の傭兵は木刀を拾い上げ、構えの姿勢をしていた。
 傭兵は軽快な足運びをしながら硬くなった体を慣らし、状況に順応出来ない二人の神官はカールの両側に立ったまま黙り込んでいた。
「神官さんよ、俺らには帰る場所もねぇ。だったら奴隷でも何でもなってここから出るさ」
羽音のような音を立てて木刀を振り回しながら、傭兵の一人が言った。
「お前達はもとより主を変え続ける傭兵。好きにすればいい」
一瞥してカールがそう言った時、うつむいていたエドレルが顔を上げた。
「我々の主は神のみだ。罪深き人間に…それもガランディウム信者の奴隷になるくらいならば死んだ方がましだ!」
「エドレル、自ら死ぬ事は許さん!」
カールは頬につたうものがある弟子の肩を掴み、力任せに自分の方を向かせた。
「生きとし生けるものは全て死ぬ運命にある。だが自ら死期を早める必要は無い。私たちはここから出るからだ」
「無理です……ここはヴレード。壁はこんなにも高い……」
体を竦ませてエドレルは言った。視線は泳ぎ、カールさえ見ていなかった。
 いつの間にか太陽は建物の向こう側へ消え、広場に大きな影を作っていた。
彼らの四方に立ちはだかり覆いかぶさる影は、神官には逃れようの無いものに見えた。
「エドレル、諦めるには早い。私達はまだ生きている」
カールが彼の腕を掴んで引き寄せると、弟子の涙がこぼれおちた。
「カールヴラット様、あなたはすでに神殿で私たちを見捨てた…もう貴方の話は聞かない!」
涙を振り払うようにして、エドレルはカールを突き飛ばした。
「私は私の力で生き抜いてやる!」
「エド……ッ!」
カールの体は壁から突き出た石に当たって腰を打つ。
エドレルは肩で息をしながら木刀を拾い上げ、壁を背後にして方膝を立てるカールの前に立った。
 泣き濡れた目は血走って大きく見開かれている。器から漏れ出た恐怖と怒りが激流となってカールに向かっていた。
エドレルの想いを受け取る為に、カールは倒れた姿勢のまま逃げなかった。
神殿の門にアストラルの力を使った封印を施さず、セリウスとレグスの村を守ろうとした事に悔いは無い。
彼はアストラルを守る為に、前を向いていなければならないのだ。
犠牲を求めず常に最良の選択をし、最善の努力をするカールには後悔の文字など無かった。
「こうなったのも全て貴方のせいなんだ……!」
悲痛な叫びとともに振り下ろされた木刀は鈍い音を立てた。
「打ち込みの練習ならあっちだぜ」
表情を変えることなく言ったギルバの腕で、木刀が静止していた。
息を短く吸い込んで、エドレルは我に返った。
 理性が砕け散った青年は慟哭しながらぎこちなく後ずさり、隅に設置された藁人形を殴りつけた。
一心不乱に、人形を何度も何度も叩く。紐で纏められていた藁が虚しく床に散った。
老神官はその場に座り込んで肩を項垂れ、言葉も出ない。弓を下ろした兵士達の薄笑いが稽古場に広がった。
 エドレルは己の想いを暴力で訴えるような者ではなかった。
兄として慕われ十代の神官達の良い模範を示してきた彼は、青年神官らの代表として束ねる役割を授かっていたのだ。
ならば他の収容所にいる若い神官は一体どんな心情でいるのか。カールには計り知れない。
(お前達はどうしている? 俺は今、この腕に抱きしめたい。だがお前達に何もしてやれない…!)
カールは拳を握った。
 絶望とはかくも人を変えるものなのか?
カールは弟子への信頼を失い、エドレルの心は完全に神から離れていた。
弟子の中から神は消えたのだ。
異教の地は白き神官の結束を揺るがし、他者の命を廃する事で更に罪を負わせようとしていた。
ヌートの祭りで仲間を殺し、生きる道を作る。
現実を見つめて生きようとすればするほど、神の教えに反する事になるのだ。
(仲間に殺される、そんな最期は認めない)
カールは首を振った。
「仲間を犠牲にして生き残りたい者はそうするがいい。だが俺は生きているかぎりお前達をここから逃がす努力を惜しまない。お前達を決して見捨てたりはしない。殺すこともしない」
誓いと同等の強い意志が、言葉に乗せられていた。
 言霊の力は打ち合いに意気込む傭兵のかけ声をしのぎ、広場の隅々まで行き渡る。
誰もカールの話しに耳を傾けない中で、エドレルの手がしびれて木刀が落ちた。
エドレルは肩で荒い息をして藁の敷物の上に崩れていた。
木刀で模範試合を始める傭兵達、そして監視する兵士は神官達を気にも留めていない。
打ち身をかばいながら壁に手をつき、カールは立ち上がった。
 脇腹の皮が破けているようだったが、痛みなど無きに等しい。
彼の心に血を流させ苦痛をもたらしているのは己の所為による結果、遠ざかっていく弟子だった。
「約束だ…必ずお前達をここから出してやる」
弟子を失った高邁な指導者の転落。
孤立したカールを、ギルバは静かに見ていた。

 祭りの準備に活気付くヴレード本土は人の往来が激しく、ヴェルデン地区の橋には馬車が並んでいる。
皇帝の招集によって、郊外に住む上流階級やテュニジア島の隣にあるレガ島の貴族らが別邸に向かっているのだ。
 ヴェルデン地区リブローダー川近くの別荘に着いたばかりの彼女は、荷を解かずに敷地内の丘に登っていた。
「あれが帝都、石造りの町ね。近くで見ると灰色で……さみしい色だわ」
船酔いがまだ抜けず、セティーヴェは木に手を付きながらダルフォードの町並みを眺めている。
憧れの都という期待はもとより無い。
大地に突き刺さる王城の下に並ぶ町並みは量産型の家で個性が無く、温かみが感じられなかった。
 母の代わりに、そして次代の領主としてテュニジア島から勇躍して旅立ったセティーヴェは帝都に思いを馳せて思い切り息を吸い込んだ。
そう、少女は来月に残忍な祭りを観戦せねばならないという重荷をまだ知らなかったのである……。

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