「あ。ダメ」
金曜日の夜。
いつものように先生のお家にお邪魔して、宿題と勉強。
今日の宿題は英語だけだったから、割とすぐ終わって、今は復習なんだけれど。
これが、全然ピンと来ない。
入試の時に必要かも…って、話とはいえ、参考書見ても、授業のノート見ても、本当、よく判らない。参考書もノートも関係無しにテーブルに突っ伏して、隣でお仕事中の先生を見上げる。
カッコいい。
教科書持ってるから、月曜日の授業の準備かな。それともテスト問題作ってるとか。
少し下を向いた、真剣な顔が凄くカッコいい。
「何見てるの。宿題終わった?」
じ、と見てたのは気付かれてて。
呆れ気味の声が降ってくる。それは良いけれど、こっち向いてくれないの、ちょっとだけ淋しいです。
「終わりました」
「じゃ、何がダメ?」
あれ、聞こえてたんだ。集中してたから、聞こえてないかと思ってたのに。
「小論文」
「小論?」
「入試に出るかもしれないから、て。でも、起承転結とか判んないの」
そう、全然判らない。授業で教えて貰った書き方は。
「小論に起承転結なんて要らなーいよ」
「え?だって…」
さらりと言われた言葉にびっくり。だって、一番重要って言われたのに。
「何それ、現国?」
「そーです」
無造作に伸ばされた手に、国語のノートを乗せると、ざっと目を通す。真面目だった目が、ほんの少しだけバカにしたような目付きに変わる。
あの目、結構好き。
ちょっと、意地悪そうな表情も。
「入試の制限時間内に、そんなの出来る訳ないよ」
「え?そうなんですか?」
返してくれたノートを横に置いて聞き返す。今、言い切った、よね。
「論文の基本はね、序論・本論・結論なのは聞いた?」
「はい」
「起承転結なら、起が序論。承・転で本論。結が結論。でも、それを高が二時間程度で纏められる?」
「…無理です」
作文苦手だし、絶対無理。
今日だって、授業、混乱しただけで終わっちゃったし。自分で自分の事、バカだなぁ…、て、思ったし。
「だから、今は覚える必要なし」
えぇ?断言?
「え?でもでも、入試に出たらどうすれば良いの?」
「志望校決めてから覚えなさいよ」
…そりゃ、入試科目に小論文ない場合もあるとは思うけど。
でも、推薦(指定校でも一般でも)狙ったら、必須だったような気がするんだけど。
「間に合うんですか?」
他の科目と一緒で、練習題とかしなくて良いの?
その時になって混乱する、なんて嫌なのに。要領よくないし、それなりに気になる。
「…仕方ない子だねぇ」
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