言論の自由に関する一考 蛇足編 |
その日、朝から上忍待機所『人生色々』の話題を浚っている出来事があった。
「…あの、ここのどこが…?」 文章自体におかしい所はない。二人は訳も判らず顔を見合わせると、カカシの顔を窺う。 「オカシイでしょ。…確かに俺は風魔手裏剣の軌道は逸らしたし、威力も削った。だけどね?」 微妙に不機嫌な声を出すカカシにますます頭の中に疑問符が湧く。事実には違いない筈の記事。それのどこが気に入らないのか。 「ミズキをボコったの、ナルトなのに。俺がやったみたいに書かれてるじゃない。…もー、勘弁して欲しいよね、そんな適当な取材されちゃあね。イルカの応急処置しながら見てたんだけど、本当に頑張ってたんだよ。多重影分身なんて、印も複雑だったからね。いつか教えるつもりでかなり簡略化させて書いといたんだけど、ちゃんとマスターしてたしね。あんなに頑張ったのにこんな扱いじゃ、俺もイルカも納得いく訳ないでしょ」 そんな重要な事、何故見逃していたのか…と続けるカカシに二人が脱力してしまう。 「…お兄ちゃん、それ、絶対違う…」 「…カカシさん、それ、かなり親馬鹿な発言なんですね…」 ちょっと、かなり頑張っちゃった自分達の行動が、どこまでも報われない虚しさに涙が誘われる。しかし、それもまたカカシらし過ぎて、脱力しながらも安心してしまう。 きっと、それは半分本音で半分ゴマカシ。 自分達が下手に落ち込まないように。 そういう、人。 アンコとハヤテは視線を合わせてくすりと笑う。 「ごめん、カカシ!何でも言う事聞くから許して?」 「わたしも、何でもしますから、そこを見落としていた事、許して貰えますか?」 「じゃあ、二人に一つずつ、良いかな?」 申し訳なさそうにカカシを見詰める二人にくつりと笑って。 楽しそうに口を開く。 「まずアンコ」 「うん」 「…いくら、油断してたからって、下忍程度の瞳術に掛かるなんて三忍の名折れ。…自来也捕まえて、イチャパラ外伝の原稿、二日以内に仕上げさせる事。原稿料と印税は、全額、里に入るように裏工作しとくから」 「オッケー」 悪戯っぽい笑顔でアンコに言いつけると、嬉しそうに頷く。 天下の三忍の一人を、大義名分の下、苛められるのだ。喜ばないアンコではない。 「わたしは?」 重要案件を任されたアンコを羨ましげに眺め、向き直る。刹那、カカシの笑みが深くなった。 「ゲンマ、半殺し。…ハヤテが居るのに、下忍の女に騙されるなんてねぇ。…地獄見せてあげなさい」 優しくハヤテの頭を撫でながら、穏やかに楽しげに剣呑な事を言い出すカカシに一瞬ポカン、としてしまうが、ゆっくりと笑み崩れていく。 「はい!」 実際、あの記事を読んでほんの少し不快な気分を味わったのだ。アンコが痛い目に遭わせるといっていたので黙ってはいたが。 それを理解してくれた事に心から嬉しくなる。 「…虫の息でも良いですか?」 「良〜いよ」 「パックン、さんきゅ。後でカカシに特上の骨貰ってね!…さ、自来也サマ、ゲ・ン・コ」 パックンの協力で自来也を発見したアンコは、幸せそうに自来也へ向けて蛇を放つ。 「うむ。書き上がるまで、いつでも探索してやろう」 パックンも仲間の忍犬たちと共に自来也の逃げ道を塞ぐ。更にその周囲を、自来也のイチャイチャシリーズを発行している木の葉隠れ里最大の出版社、木の葉書店の編集者にボランティアで貸し出された暗部(イチャパラ愛読者多数)が取り囲む。 「…ち、ちょっと待たんか!」 逃げ道が見つからず、自来也の顔色が変わっていく。 「だぁ〜め。カカシが読みたいって言ってるんだも〜ん」 「へ、蛇を這わすな!」 ウキウキと及び腰の自来也の背中に蛇を這わせ、ついでに口寄せ用の巻物も取り上げてしまう。 「ほらほら、は〜や〜く〜」 「っぎゃあああああ!」 雑巾を引き裂くような悲鳴が、某花街の一角に響き渡った。 「…ま、待て、ハヤテ。話せば解る!」 何の説明もなく、ハヤテに刃を向けられたゲンマがギリギリで避ける。それでも微かに掠めたのか、銜えていた千本が真っ二つに叩き切られる。 …斬鉄… その切れ味に冷やりと背筋が凍る。…下手をしたら重傷では済まないかもしれない。 「逃げちゃダメなんですね。まだ、切れ味を試す日本刀は二十振りは残ってるんですね」 「俺で切れ味を試さなくてもだなぁ…」 「依頼された方の厳命なんですね」 「…誰だ、その鬼は…」 ぴくり。 ゲンマの放った一言で、穏やかな笑みを浮かべていたハヤテの表情が変わった。 口角を引き上げ、妖艶、と言える程の微笑を見せる。 「あの方への悪口は、いくらゲンマさんでも許さないんですね…」 その一言で。ゲンマにはこの極悪な依頼をした人物が判ってしまう。 そして、この空間を断ち切った結界を張ったのが暗部であるという、その理由も…。 「さ。覚悟して欲しいんですね」 にっこり。 「…っ…!!」 声にならない、断末魔の悲鳴は、結界に阻まれて誰の耳にも届かなかった…。 「こ〜ら。安静にしてなきゃダメでしょ」 台所に立とうとするイルカをカカシが止める。そのまま、背中の傷に触れないように、ひょいと腕の上に縦に乗せてしまう。 「…もう、大丈夫ですよ。痛みもなくなったし。そろそろアカデミーにも行きたいし」 「だから、家では安静でしょ?まだ、入院中って事になってるんだよ?」 「でも、カカシさんが綱手様連れて来てくださったから、殆ど完治してるし」 応急手当も適確で、その上、行方不明の筈の木の葉随一の医療忍、綱手まで探し出して一時的に連れ帰ってくれたのだ。流石に傷は残ってしまうようだが、殆ど完治してしまったと言って良い。もう、そんなに気を使われなくても良い筈なのだ。あんまり大事にされても困ってしまう。 「だぁめ。ナルトがちゃんと下忍に合格するまでに完全に治して貰わないといけないんだからね」 ナルトが下忍になれるかは、カカシの出す試験に合格するか否かに掛かってはいるのだが。合格した時にはイルカに飛びつくのが目に見えている。その時に怪我が完治していない状態では困るのだ。 「心配性過ぎ〜」 「当たり前でしょーが!」 「…もう。…ところで、ハヤテとアンコちゃんは?今日辺り遊びに来ると思ってたんですけど」 「ちょっと、頼み事。…明日には戻ってくるよ」 「…?なら良いですけど。…ナルト、合格してくれるかなぁ?」 「…さぁねぇ」 |
そういう訳で、ナナシ〜様の作品に蛇足をつけさせて戴きました(笑)。 ナッシが喜んでくれればそれで良い!! 目次← →ナナシ〜様作品へ |