様々な要因が重なり、漸くと五代目火影も決まった木の葉の里。
長老達の期待以上に辣腕を振るう綱手姫の下、素晴らしい勢いで復興を果たす里に、静かな波紋が起きていた。
五代目火影・綱手姫と上忍はたけカカシ。
里の基盤となるべき両名の不仲、である。
否。
不仲、と言える程の事ではないかもしれない。少なくとも、カカシが火影の命令を拒否した事は、ただの一度たりともないのだから。
にもかかわらず、不仲説が囁かれるのは、相対した二人の雰囲気…これに尽きる。
「…ねぇ、イルカ」
「何?アンコちゃん」
「あの二人、どうなってるの?」
「…あの二人って?」
人目の少ないアカデミー中庭。
それでも小声で突くように訊いて来るアンコに知らぬ顔を返そうとしてみる。
「しらばっくれるんじゃないわよ。カカシと綱手様よ!」
「…あはははは」
…一蹴されてしまったが。
次いで、笑って誤魔化そうとしたところに、新たな声が振ってくる。
「…あ。それ、俺も聞きたい。あの二人って、昔からあんな感じか?」
「アスマ先生」
影を作るように現れた巨漢に静かに息を吐く。
アスマは、手にした缶飲料を二人に投げ与え、当人も二人の前に腰を下ろす。
「あら。アスマも気になるの?」
「里の忍なら誰でもな」
気風の良い五代目と、常なら誰にでも穏やか(に見える)カカシの、微妙な空気を感じない忍は皆無。
殊に、表面上…と言うより、会話上は不仲と言い切れない辺り、偶然居合わせてしまった者達の心的プレッシャーは想像に難くない。
それでも、噂程度に済んでいるのは、偏に、カカシの任務内容的に人の多い場所での接点が少ない為である。
「…本当は仲良いわよ。どちらかって言うとベッタリ」
「そうなのか?」
肩を竦めるアンコに、アスマが目を見開く。
就任からこっち、含みのある視線と会話は目にするものの、それ程仲が良いとは到底思えないのだ。
「カカシさん、綱手様大好きだから」
「そうそう。結構マザコンだよね」
「…母親思いと言ってあげてよ」
「…マザコン?つーか、母親?」
苦笑気味に交わされる言葉に更に瞠目する。
そんな関係、今まで一度も耳に挟んだ事はない。
「実母じゃないけどね。…あ、そっか」
「解った?」
「解った解った。あ〜。綱手様が悪いわ」
「どっちもどっちだと思うけど」
「何だ?」
唐突に納得して頷きだしたアンコに疑問をぶつける。
「見てれば解る!」
心底、楽しそうに笑い出す姿に頭を捻るが、付き合いの長さの差か、深さの差か、思い当たらず、助けを求めるようにイルカを見る。
「そろそろ、網手様の方が限界ですから。すぐ、決着はつくと思いますよ」
「…仕方ねぇ。それ待ちか…」
|