飲み会-上忍篇-




「…今日?」
「今日。何か都合悪いか?」
 久し振りに上忍の任務も暗部の任務もなく、アクシデント多発の上忍師の職務も無事に夕方に終わった、カカシにはかなり珍しくも平和な日。
 真っ直ぐ帰宅しても構わなかったのだが、いつものクセで人生色々へ顔を出すと、上忍師仲間の悪友にいきなり声をかけられた。
 どうやら、今日は里自体が平和らしい。
「…んー。そうねぇ」
 相槌を打ちながら素早く思考を巡らす。
 本日、カカシの愛妻は用があって帰宅が遅くなるそうだが、カカシ自身に特別な用事はない。
 いつ任務が入るか判らない為、あえて夕食の支度はしないで欲しいと常から告げてあり、家には食材があるのみ。
 料理は不自由なく出来るものの、自分一人だと食事にかける手間を惜しむカカシは、『出来るなら子供達と外で食べて来い』と厳命されている。
 だが生憎、任務が早く終了した関係で子供達は帰してしまった。
 と、なると、カカシに断る理由はない。
「カミさんに叱られるとか」
「うちの嫁はそんな事で拗ねたりしなーいよ。…場所は?」
 付き合いも職務のうち。
 そんな考えを持つ人間が、こんな些細な事で拗ねたりする筈はない。
 どちらかと言えば、酒を摂取して帰る方が、機嫌が良いという複雑な家庭事情があったりする。
「『しゃんと』か『チャクラ』」
「『しゃんと』」
 揶揄い気味に潜められる声に苦笑しつつ応じると、軽い溜め息が返って来る。それに首を傾げつつ、二択の内の希望を告げる。どちらも規模は大きくないが、酒も食事もそこそこだった記憶がある。選択に多少の他意はあるものの、どちらでも良いならカカシの都合を通して貰っても問題はないだろう。
「判った。…じゃ、十八時な」
「ん。…あ、ねぇ、誰来るの」
「ガイと紅」
「…あぁ、そう」
 いつも通り過ぎるメンツに、少し頭痛を覚えたが、その分、気の置けない相手と肩を竦めた。


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