「…あれっ。アンタ達も居たの?」
「こんにちは。アンコさん」
「す、凄いですね」
「ん?あぁ。こないだの『受付所かーちゃん事件』が楽しかったからさぁ。奢ってあげようと思って」
丁度、道端で会ったしね。
余程、先日の見世物がお気に召したのだろう。綺麗に片目を閉じ、楽しげに笑う。
「そうなんですかぁ」
「うん。アンタ達はホント面白いよねえ。これも良い勝負だったし」
「…見てる方が胸焼けするけどな」
「あらそぉ?アタマには甘いのが良いんじゃなかった?」
「糖分が必要でも、限度があるっしょ」
「そうかなぁ」
判っていない反応に、目下である事を忘れて、深い溜息。
いくら何でも、物には限度と言うものがある。それを遥かに超えるのは、見ているだけでぞっとする。
「それより、変な名前付いたんですね。この前のヤツ」
「アタシ命名」
「…さいで」
「…そ、そう言えば、あの後大丈夫だったんですか?」
「何が?」
「あの、何ていうか…」
例え真実がバレても、子供の悪戯で済む範囲内の事ではあったとは思うが、一歩間違えれば外交問題。何のお咎めもないのに、実はドキドキしていた子供達である。
「里的には何にもなってないわよ。国主様との仲も良好だし」
「あ。良かった」
「良かったかは微妙ね。大人は見たくないモノは見ないから。まぁ、アンタ達の評価は上がったかな」
意味ありげな笑みに、首を傾げるものの、自分達に問題がなければそれで良い。顔を見合わせてほっとする。
「そらどうも」
「さて。アタシは待機所行くから、あっちはよろしくね」
「あ、はい」
「おばちゃ〜ん。お会計〜。これも混ぜちゃって〜」
まだ動かないナルト達を指差し、後ろ手に手を振って出て行く。
レジには物凄い量の伝票。あれをさらりと支払える辺り、有能な特別上忍なのが判る。
…逆説的に言えば、あの、甘味摂取量が、彼女を特別上忍止まりにしているとも言えるのだが。
「…あ。私らの伝票」
「…ご好意に甘えたら。ってか、何あれ」
「…見なかった事にしていいか?」
「…う、うん」
さり気なく、自分達の伝票まで持って行ってくれて、尚且つ支払ってくれた事に感謝の気持ちはあるのだが、それ以上に金額は耳にしたくないので、アンコが立ち去るまで、耳を塞いでやり過ごす。
世の中、目を逸らした方が、精神的に良い事もあると知った彼らである。
「…か、帰ろっか」
「…皆の腹ごなしにどっか、行く?」
「…そうね。どうせ休日だし」
「…火影岩辺りでどうだ」
「…決まりだな。おーい。ナルト〜。チョウジ〜、キバ〜、サスケぇ。帰んぞぉ」
…結局、今回明かされた真実は、今暫く、闇の中に葬り去られるのかも、しれない。
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