皆でお茶を




「…あ。いの!ヒナタ!」
「サクラ!」
「お待たせ」
 無駄な嵐が立ち去って。久し振りの休日に待ち合わせ。
 修行や任務で、なかなか時間は取れないものの、結局は仲が良いのだ。今日も甘栗甘で、お茶でもしようと誘い合って出て来たのだから。
「いーよ。それより、この前はありがとね」
「え?…あぁ。イルカ先生?」
「つうかナルト?」
「ナルトナルト。捕獲手伝ってくれて助かったもん」
「噂聞いた途端、受付所行こうとしてたからね」
「で、でも、イルカ先生が心配だったんだから仕方ないよ」
 ヒナタのナルト擁護に肩を竦め、サクラといので顔を見合わせてくすくす笑いながら、通されたテーブルに着き、手早く注文をしてしまう。今日は、甘栗甘特製の抹茶パフェ。
 先日の、大事件の時。『イルカ先生が困っている』と聞いた途端に飛んで行きそうだったナルトを、ルーキー全員で取り押さえたのだ。仲間達の力技と、後はシカマルの説得、最終的にはサクラとサスケの脅しで。
「そうなんだけど。でもほら、あの時、私ら出入り禁止だったじゃない」
「下忍禁止だったっけ」
「ううん。忍者登録五年未満禁止」
「あれってさ。今考えるとナルト禁止でしょ?」
「あ。多分ね」
 ナルトだけを出入り禁止にする訳にはいかない為、大人達が下した苦肉の策。
 イルカが、確実に担任として受け持った生徒のいる年代の出入り禁止。それが、イルカのピンチが子供達の耳に入るのを遅らせたのだ。
「ナルトくん、イルカ先生大好きだから」
「それは否定しない。私もイルカ先生大好きだし」
「あんなイルカ先生見たくないよね」
「まぁね。でも、大人共役立たずよね」
「いの。言い過ぎ」
「サクラもそう思ってるクセに」
「まぁね」
「最後は助けてくれたんだから…」
「ヒナタは優しいね〜。あれは、サスケくんとナルトに便乗しただけよ」
「確かに、外交問題絡むと大人の方が手出ししにくいけどね。最終的にはナル禁が功を奏した訳だけど」
「それもそうか」
「顔知らないから、変化なんて思わなかっただろうね。あの人」
「それにしても、上手だったね。変化」
「前に潜入訓練したからね。その時と同じ姿なのよ」
「そうなの?」
「設定、まるっきり一緒にしたもん」
 一度経験した家族ごっこ。あの後、サスケもナルトも設定を引き摺って大変だった。もっとも、今回はそれが役に立った訳で。(『銀真珠三・「家族旅行」参照』)
 カカシが、経験は何にも勝ると言ってはいたが、確かに、どんな訓練でも、『経験侮り難し』である。
「あ。だからあんなにイルカ先生に似てたのね」
「うん。でもさ。あんなにタイミングよくカカシ先生が帰って来るなんて思わなかったよね」
「うん。凄かったよね」
「しかも、何にも言わずに話合わせてくれたし」
「イレギュラーだったから心配したんだけどね」
「何にも変な事言わなかったね」
 他に泣きつき所もなかった所為か、姿を見た瞬間に抱き着いたイルカにも、何故か変化していた弟子二人にも、特別何も言わずに、フォローしてくれた。
 任務帰りで訳も解らなかっただろうに。
「…で、さぁ。アレ、なんか良かったよね」
「いのちゃん?」
「何か、本当に家族っぽかったじゃない」
「あ、うん。仲良しでね」
「…訓練の時もあんな感じだったよ。強いて言えば、今回の方がサスケくんもナルトも甘えたに見えたけど」
 照れが勝っていた訓練の時とは違って、実戦に近かった所為か、照れもなくベッタリに見えたのは事実。
「そうなの?まぁ、そっちはさぁ、ナルトが繋ぎになってるからそれっぽいかな、とか思うんだけど」
「アカデミーの時から、親子みたいだったもんね」
「今はカカシ先生と親子っぽいよ。あの二人」
「セット?」
「セット。サスケくんも結構、カカシ先生好きだし」
「だから違和感なかったんだ」
「多分」
 大人それぞれと親子みたいなのだから、揃えば家族に見えるのは当たり前かもしれない。思わず、納得してしまう。
「…でも、さ」
「ん?」
「イルカ先生、絶対カカシ先生好きだよね?」
「思った?」
「思った思った。だって、お姫様抱っこされても暴れなかったし。演技にしては…ねぇ?」
「カカシ先生の方も、結構満更じゃない感じだったよね…?」
「ぎゅっ、て、してたし」
「…くっつかないかな」
「何か、お膳立てしてみる?」
「デートとか?」






「…余計な事、しなくて良いと思うぞ」


目次← →2