杞憂


「すっごぉい。凄い凄い、カカシ先生!」
「何が?」
 嬉しそうに跳ねるサクラに首を傾げる。
「タイミングばっちし!全然打ち合わせしてないのに!」
「あー。うん。俺も、先生が変化してんの、バラしちゃったらどーしよって思ってたってばよ」
「…状況読めなきゃ忍者やってる意味ないでしょ。受付所の皆だって、合わせてくれてたみたいじゃないの」
「いや。あそこに居た奴らは、イルカ先生が困ってるの、知ってたし」
 元に戻ったナルトが楽しそうに告げる。それに苦笑すると、同じく元の姿になったサスケも微妙に嬉しそうに言葉を重ねる。
「んー。『とーちゃん』って呼ばれたしねぇ」
「だからって」
「イルカ先生も、よく咄嗟に抱き着きましたね。アレ、凄い効果的でしたもん」
「うん。ドキドキしちゃいました」
 自分達の作戦成功が嬉しいのだろう。いのもヒナタも頬を紅潮させながらイルカに抱き着く。
「あー…うん。そうだね」
 漸く泣き止み、理性を取り戻したイルカが、複雑な表情を浮かべる。
「…先生、アレ素だったろ」
 ぼそり。
 シカマルが、他の子供達に聞こえない程度の声でイルカに囁く。言葉を詰まらせ、ちらっと睨むと、次世代の参謀は涼しげに流してしまう。実際、カカシの姿を見て緊張の糸が切れたのは、否定出来ないイルカである。
「それより、本当に家でご飯食べるの?それとも食べに行く?詳しい事も聞きたいし、奢るよ?」
「え、マジ?」
「焼肉!」
「…あの二人は?」
「…場所決めてから呼べば良いよ。何?アスマと紅もグルなの?」
「カカシ先生が帰って来るか解らなかったから、フォローお願いしてたの!」
「なあ、いつものトコにしよーぜ。俺、先生達呼んで来る!」
「ねぇ、先生、先行っていい?」
「はいはい。席、確保しておいで」
 二手に分かれて走り出す子供達に苦笑し、残された二人は、ゆっくりとその後を追う。
「…大変だったみたいだね?」
「あーいうのは、苦手です。どうして良いか、解らなくて」
「そう」
「カカシさんが良いです」
「それはどうも。…次からは、我慢しなくて良いからね。昔と違って、別に、隠す必要もないから」
「…そうですね。そうします」
「うん。そうして」


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