杞憂




「イルカ先生〜。あのおじさんたち何?」
「ん〜?」
 グラウンドでの授業を終え、グラウンド中に散らばった子供達を集合させている最中。一足早く戻って来た生徒に裾を引かれ、隠れてそっと指差す先を追う。
「あの、火影様と一緒のおじさん達?」
「うん」
 質問内容を確認し、子供達に視線を配ると好奇心に満ちたモノを返される。
 確かに、アカデミーに忍以外で見知らぬ人間が立ち寄るのは珍しい。
 ましてや、一緒にいるのは三代目火影。…となれば、興味が惹かれるのも解らないでもない。
「ねぇ、だれ?」
「あれは、都の偉い人。アカデミーがどんな授業をしてるか、見に来たんだよ」
 昨日から三代目がぼやいていたのを思い出す。
 視察が不要、とまでは思わないが、こちらの都合を無視した急の通達は困るのだ。木の葉の里長と言えば、立場はほぼ、一国の国主と同等。その多忙さは国主以上を極めている。
 通達と同時に来訪しなかっただけマシだが、それでも昨夜、遅くまで三代目自身のスケジュール調整と、万が一に備えての暗部の配置に頭を抱えていた。
 更に言えば、イルカ自身、万全を期す為、里境のトラップを張り直すのに徹夜している。
「みやこ?」
「それって、どこ?」
「…教えたよ」
「え〜」
「忘れた!」
「…次の時間は地理にしようか」
 せっかくの授業が無駄になっていたのに苦笑する。
 もっとも、興味のない場所を覚えろと言っても難しいのは否定出来ない。
 ちょうど目に映った視察団は、子供達の興味をひくのに格好の材料になった。
 内心で感謝しつつ、子供達を校舎内へ促した。


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