「…チャクラ刀?」
咄嗟に手を翳し、発光するカカシの右手を窺いながらアスマが呟く。
パリパリと音を立て、刀身自体が静電気を帯びたかのように煌いている。カカシの…持ち手のチャクラに反応して輝きを増すそれは、チャクラ刀と呼ばれる、特殊武器。
チャクラに反応する武器は、それだけでも使用者の消耗を呼ぶ。それ故チャクラ刀は脇差以下の比較的短い刃長のモノが多いが、今、カカシの持っているチャクラ刀は打刀である。それも、極一級の。
並の忍の扱える代物ではない。
つまり、写輪眼の所為でチャクラ切れを起こしやすいと言われているカカシでは、持っているだけで過負荷を起こしていても不思議ではないのだ。片手に『雷切』片手にチャクラ刀などという、あり得ない組み合わせに軽く目を見開く。
「…そう。神代の昔より、木の葉は護筋に継がれていると伝わるチャクラ刀『雷切』」
言いながらの軽く一閃。
それだけで。
間近の大木が真横にズレ落ちた。
「千鳥…『雷切』は、ね。本来、コレの威力を挙げる為の補助忍術なんだ」
単独でも攻撃系の大技だから、便利だけどね。
そう言いながら、手が見えなくなる程の白光を纏ったチャクラの爆ぜる左手を刀身に滑らすと、圧縮されたそれが見る間に刀身に吸い上げられていく。
結果、神々しいまでに輝きを増した刀が姿を現す。
正に神刀と呼ぶに相応しい。
「すげーな」
素直に感想が口を吐く。木の葉に生まれ育ったものの、神刀を間近で見る機会などそうはない。それが純粋な感動を齎してくれる。
「滅多に抜かない、伝家の宝刀。その身で篤と味わうが良い」
チャクラ刀に魅入られ、逃げる事も叶わず、硬直する敵に向けて、全て薙ぎ払う様な豪快な一太刀。
雷が走り、次いで轟音が鳴り響く。眩いばかりの光に目が眩み、爆発に伴う土煙が舞い上がる。
数瞬の間を置き。
音が止み、周囲が静かになった所で漸くと目を開ける。
そこには。
「…何も、ない?」
茫然と呟くアスマの言葉通り。
見渡す限り、敵も、平地で数えるばかりだった大木も全て、消え失せていた。
「…ちょっと、やり過ぎちゃった」
「…お前のちょっとは天変地異レベルかよ…」
頭を掻くカカシに、どっと疲れた声が、辛うじて応じた。
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