「カカシ。栄養剤でも飲むかい?」
「…ん〜。それより寝たい…」
「…いつから寝てないんだい、お前は」
「忘れた〜」
呆れ半分の綱手に欠伸しながら返す。
もう、一カ月はまともに寝てない。
死なない程度に仮眠を取ってるって感じ。よく、任務失敗してないよなぁ…。
でも、最低限の段取りだけでもやっとかないと、後が大変だしなぁ…。
オレ、明後日から、里外任務だし。里外に出れば少しは眠れるかな…。
「…そういや、シメはどうしたんだい?」
「先生なら、婚礼用の繭、見に行ってる」
「…繭からかい」
呆れた声に肩を竦める。
そりゃそうか。繭を選んで糸を紡ぐところから…なんて、国主ですら滅多にしない贅沢だし。
「…どこからそんな予算を…」
「知りたい?」
「…いや」
「ちっ」
戦後の金なし状態で、金の工面は本当に大変だったのに。
オレの指名料とか、暗部での依頼料の全額(勿論、オレの分だけだけどね)とか、上忍での依頼料の九割は里に寄付って形で婚礼費用に回したし。(それでも、充分生活出来るだけは稼いでいるから良いのだ)
暗い世相の中での慶事だからって、生活が苦しい中、他の忍や里人もかなり寄付してくれたけど。
「あ。そうだ。事後承諾になっちゃったけど、綱手達の報酬も六割カットしてるからね」
ちなみに、先生の給料は九割カット中。
自分の事なんだから、当たり前。ただでさえ、ギリギリ赤字状態の財政なのに、今回の予算外の支出で更に逼迫させてくれちゃったし。
「…どうも、任務量の割に実入りが少ないと思ってたよ」
しみじみと言われるけど、返せとか言わない辺り、綱手も気前が良いのか、諦めてるのか。
…気前が良いって事にしよう。同じ事伝えた、自来也も大蛇丸も苦笑しただけだったし。
「予算、全然足らないんだ。でも、養蚕農家以下、各職人さん達が実費だけで技術料要らないって言ってくれたから、助かったんだけど」
そうじゃなかったら、一体どれだけ稼げば良いのか、はっきり言って判らない。普通に考えて、天文学的な金額になりそうな感じだよね。
木の葉の里って、忍の里としては歴史がないけど、木の葉神社が古いから、職人さん達は超一流が揃ってるし。
「アイツの人望だけは評価してやれるね」
深い深い溜息。
そこは同意出来るなぁ。何だかんだ言っても、先生、人気あるから。
…外面良いって、得だ。
先生の事、火影としてしか知らない人には人格者で通ってるんだから、凄いと思うよ。
「あ。綱手さぁ」
「ん?」
「先生の親族代表だからね。忘れないで」
「げ」
「…本当に一番近い親族なんだから我慢してよ」
「…忘れたかったんだけどねぇ…」
…そんな事言ったって。
歴史も浅ければ、人口も知れてる里(別に、物凄く人数が少ないって訳じゃない。忍の里として、という意味)で、個人で忍者になった人ならともかく、代々続く家業で忍稼業やってるのなんて、大半が親戚関係にあると思うんだけど。
必然的に職場結婚が多くなるし。
何せ、うちの遠戚に自来也が居るくらいなんだから。(そう言えば、イルカん家の遠縁に大蛇丸が居るって噂、聞いたなぁ。未だ本人に確かめてないけど)
それは、日向家やうちは家みたいに、本家分家があって、血継限界って目印を持って、目立って数が多くなってる、なんてのも、それはそれで珍しいとは思うけどね。
とにかく、近いか遠いかはさておき、黒髪黒瞳以外で、同じ色の髪と目なら、血縁関係を疑って間違いない。
まぁ、六親等以内なら普通に把握してるモンだから、今更と言えば今更な話。
あえて言う必要もないくらいのね。
…でも網手、本気で忘れたがってたみたいだ。
「面倒だねぇ」
「…あのさ。一応、火影サマの結婚式なんだから、仕方ないって諦めて」
「だから一層、面倒なんだろ」
「…泣くよ」
「…ちっ」
なんでこんな事、大の大人相手に諭さなきゃいけないんだろう…?
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