「…楽しかった」
夜。子供達主催の誕生パーティーは、殊の外楽しく、終始笑顔で過ごせた。
料理の種類も量も目を瞠るばかりだったが、それも殆ど残っていない。
片付けはまた明日、という事にして、遊び疲れた子供達をアンコとハヤテが連れ帰ってしまい、ちょっと淋しくなったが、それでも、漸く息がつけてほっとする。
庭に出て伸びをすると、初夏の風が火照った身体に気持ち良かった。
「…無防備」
不意に、背後から声をかけられる。
子供達を招く為、いつもなら厳重に張ってあるトラップを殆ど外してあった所為で、一瞬、背筋に緊張が走る。慌てて振り向くと見慣れた長身がふわりと目の前に降り立つ。
「カカシさん!」
「トラップ、全然なかったね。ナルトでも来てた?」
「はい。ナルト達九人とアンコちゃんとハヤテが。一日遊んでしまいました」
必要最低限以下のトラップを片手に苦笑する相手に笑いかける。今日は、報告したい事が山程あるのだ。
「そりゃ、賑やかだったろうね」
「任務は?終わったんですか?」
「うん。ちょっとテンゾウに無理させたけど、負傷者なし」
「それは良かった」
心から安堵する。一人の負傷者もいないのは、何より嬉しい。
「…でね」
「はい」
「プレゼント」
ぱちん。
見えないスピードで切られた印に瞬きして、周囲を見回す。取りあえず、何も変化はない。
「…えっと…。…あ!」
ひらりと落ちてきた、何か。
「…薔薇?」
空から、途切れなく降り注ぐ薔薇の花。花の一本一本に、枯れないようにオアシスがついているという芸の細かさで。
気付くと、庭全体が薔薇に埋もれてしまっていた。
「…時空間忍術、配達仕様、ね」
「…チャクラの無駄遣いはどうかと」
「まぁ、たまにはいいデショ」
「…もう」
「ただーいま。誕生日おめでとう、お姫様」
「…お帰りなさい。ありがとうございます、王子様」
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